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電トラよ再び

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記事:山岡達也(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
ひっそりと消えていった名車
最近は自動車の電動化について、記事や報道を目にしない日はない。
自動車メーカーも、これまでのハイブリッド車だけではなく、本格的な電気自動車の開発にも力を入れるようになった。近い将来には、電気自動車のラインアップも充実するだろう。その一方で、市場に出たのに消えていった電気自動車もある。それが軽自動車の分野だ。軽自動車の電動化は技術的には筋が良いと個人的には評価していたし、ユーザーの声を調べてもそれほど悪いものではなさそうだ。しかし、今となっては中古市場でしか電気軽自動車は手に入らない。
今回の記事では、電動化した軽自動車の中で電気軽トラック(電トラ)に注目してみた。
軽トラックというのは、地方で仕事するには本当に役に立つ。田舎のベンツと称していたラジオCMを聴いたことがあるくらいだ。公道だけでなく、荷物を積んで農道や山道にでも入っていける機動力は、他の車種には代えがたい魅力がある。軽トラックというカテゴリーが日本からなくなることはないだろう。筆者の体験からでも、ないと言い切って良い。
それでは、電トラには復活の芽がはたしてあるのだろうか。
 
電トラのメリットとデメリット
軽トラックが電動化するメリットとは何だろうか。その一つが、給油の手間と時間が省けることだ。
軽トラックが活躍している地方では、ガソリンスタンドが必ずしもそばにないことが問題となっている。忙しい時期に給油に時間と手間を割かないといけないのは、たとえ実質的に時間ロスが少ないとしても、心理的にはやっかいだ。
おまけに、ただでさえ少ない地方のガソリンスタンドは、今後は少なくなっていくことが予想される。自分がドライブしても、元ガソリンスタンドだった場所がかならず一つや二つは目にしてしまう。あと10年したら、給油する手間がどれだけ増えるのか不安になる。
一方、電気自動車であれば、家にある限り充電するチャンスがある。作業用の電トラなら、夜は自宅にあるはずだ。遠くのガソリンスタンドに出かける必要ななくなる。
 
一方、電トラのデメリットは何だろうか
自動車の電動化で問題になるのは、バッテリー切れだ。もしも、途中でバッテリー切れを起こしたら、とてもやっかいなことになる。ガソリン車なら、燃料を補給すれば即座に復活するところ、電気自動車なら、現状ではレッカーで最寄りの充電可能な場所まで牽引するしかない。電トラなら、狭い農道や山道に入り込む事もしばしばだ。もしも、レッカー車が入れないような場所でバッテリー切れしたら、どうやって救援するのだろうか。
だが、電トラでのバッテリー切れのリスクは、そんなに高いのだろうか。
電トラの使用場面を考えれば、1日の走行距離はそれほど長くないはずだ。目的地は周辺の市町村の範囲で、おそらく数10キロ程度だろう。県境を跨ぐような長距離ドライブはほぼ考えなくて良いはずだ。加えて、電トラの想定ユーザーは一戸建てに住んでいるはずだ。一戸建てなら、普通充電設備を入れることは、それほどハードルは高くない。だったら、毎晩充電すれば、1日の走行距離は十分にカバーできるはずだ。
 
それでは、どうして電トラは市場から姿を消したのか。
最大のデメリットは、価格の高さだ。補助金を活用したとしても、ベースとなった軽トラとくらべて50万以上の価格差があった。充電設備の導入でさらに10万程度の追加費用がかかる。合計すれば、電トラを導入するのに60万以上の追加コストが必要だ。目先のコストと手間を考えれば、どうしても二の足を踏んでしまう。
 
電トラ復活の条件
電トラが復活する条件とは何だろうか。筆者の考えを二つのポイントで説明したい。
一つの鍵が、環境問題への意識の高まりだ。
農業分野においても、農水省がみどりの農業システム戦略を発表した。それによれば、炭酸ガスのゼロエミッションが求められている。最終的に2050年までにゼロエミッションを達成する必要があるが、10年ごとに中間目標が設定されている。電動化への流れはもはや止めることはできない。
そういう状況の中で、しぶしぶながら電動化に追い込まれるよりも、先手を打って電動化を積極的に進めることで、社会にアピールすることは考えられないだろうか。例えば、JAのレベルで車両をさっさと電動化してしまい、おまけに電動車両を使っていることを世間にアピールするために何等かの塗装をほどこすのはどうだろう。最近、郵便局の軽バンに電動車であることがわかるイラストが車体に描かれてあったが、それをJAでもやってみるのだ。
二つ目の鍵は、価格の問題だ。
初期費用を考えると、個人のレベルで電トラを導入するのはハードルが高い。技術的な進歩で価格が下がっていくのを期待したいが、需要がないものに自動車メーカーが力をいれるだけの余力はない。需要を創り出すためには、技術開発以外の方法で、コストを下げる方法を模索する必要がある。リースという方法は、初期費用というハードルを下げるには有効な方法だと思われるが、これを実現するには、自動車メーカー、JA、リース会社という民間側の努力に加えて、政府や自治体といった公的部門の支援が必要である。
 
繰り返すが、2050年には軽トラックはいやでも電動化しないといけない。それを機に、軽トラックというカテゴリーがユーザーの手に届かなるのはとても惜しい。電トラとして21世紀を全うして欲しいと思うのは、筆者だけではないはずだ。
 
 
 
 
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2021-06-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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