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ミセスコンテストで準優勝した友人が背中で教えてくれたこと

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:赤羽かなえ(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
推しができた。
 
周りは遅れてやってきたBTSブームで盛り上がっているさなかだ。
「おばちゃんの流行りは鈍行でやって来る」なんて友達が言っていてみんなで大笑いしていたけど、私の推しはBTSですらない。
 
私は、この夏、ミセスコンテストに出た友人に夢中になった。
まさか、40代の女性にドハマりして応援するとは思わなかった。
 
最初は、ただただ面白いなと思っていただけだった。
 
数か月前だったか、友人が、ミセスコンテストのファイナリストになりました、というSNSの投稿と共にプロに撮ってもらった写真を上げ始めた。元々きれいな人ではあったけど、濃い目のメイクになり、ドレスを着たり、時にはウォーキングしている様子を上げていて何を急に始めたんだろう、とちょっと変わったものを見るような目で眺めていた。
 
ミセスコンテストは、ミスコンの既婚者版で応募資格の年齢も幅広く、女性の地位向上のために行われているものだ、と主催のサイトには書かれていた。「ミセスコンテストは自分を好きになるきっかけです」という文言に少し惹かれた。
 
独身の頃にミスコンと言えば、一部の容姿に恵まれた芸能人予備軍の人が挑戦するようなもの、と決めつけ、ハナから自分が出られるものだとは思っていなかった。だから、ミスコンには共感も興味も全くなかった。
 
でも、友人が参加するとなると興味が沸くものだ。しかも、同じ子育てをしているという境遇が似ていると共感ももつし、ミセスコンテストの方が身近に感じられた。
 
ただ、ミセスコンテストとはいえ、準備は日々大変そうに見えた。小さな子供がいて仕事もこなす状況で挑戦する彼女を無謀だな、とも思った。
 
家事も育児も仕事もこなしながら、ウォーキングにダンス、話し方、身のこなし、ありとあらゆるレッスンを精力的にこなしている姿を見ているうちに、友人がどんどん美しく、スタイルもよく、かっこよくなっていくのを目の当たりにした。
 
そんなに頑張ったって、たかが知れているでしょ、と思っていた私も、次第に本気になって友人を応援するようになっていた。
 
本番の審査の1か月前に決勝に出る候補者たちがYoutubeで3分間のアピール動画を流し、それを視聴者が審査する。それを応援すべくSNSで応援グループが立ち上がった。あっという間に友人を応援する人達が150人を超え応援の輪が広がっていった。
 
友人は、アレルギーを持つ子供の母として、アレルギーフリーに理解のある社会を作りたい、という想いと自分が持つ吃音というコンプレックスを乗り越え輝きたいという想いを動画で話していた。
 
キレイでスタイルがいい友人が吃音を気にしているということを初めて知った。自分のコンプレックスをさらけ出したのは、ミセスコンテストが初めてだったのだそうだ。それまでは吃音であるコンプレックスを隠してずっと自分に自信が持てなかったという。
 
そんな自分を変えて、世の中にアレルギーフリーを訴えたい、という想いが1か月間でどんどん広がっていった。
 
いよいよコンテストの本番。
オンライン中継のチケットを買っていたものの、審査は、子供達が学校から帰ってくる時間でなかなか見ることができない。
 
でも、SNSで目まぐるしく実況が入る。
 
出場したファイナリスト50人のうち、TOP20に入ったらしい、TOP10に入ったらしい……。すごいすごい、グループのコメントもどんどん盛り上がっていく。
 
慌てて中継を見ると、友人はなんとTOP5にも残った。
 
ここからは、先に呼ばれた方が負けだ。5位の女性は舞台の中央で堂々とポーズを見せていた女性だった。呼ばれたときには少し顔を曇らせた。彼女のコンテストはここで終わりだから。でも、それも一瞬で、すぐに凛と前に出て表彰を受けている姿に友人のライバルながら感動する。
 
4位、3位と発表され、友人はまだ呼ばれなかった。
 
推しの2位以内が確定した!
 
すごいすごい。こちらまで緊張してきた。
 
最初は所在なさげに少しずつ前に出てきた友人が、もう、さえぎることのないステージの中央で堂々と立っていた。
 
プレゼンターを挟んでTOP2が左右に立つ。
 
緊張の一瞬。
 
司会から告げられ、プレゼンターが向いたのは、友人の方ではなかった。
 
今まで友人が進んできた道が一気に崩れ落ちたような感覚。
 
あんなに今までがんばってきたのに。子供もいて、仕事も頑張って、レッスンも一生懸命取り組んでいたのに!
 
確かに準優勝だってほんとにすごい、ホントにすごいけど……悔しい。
悔しすぎる。
 
でも、友人はすぐに満面の笑みで拍手を送っていた。
そんなに笑顔にならないで。友人の笑顔があまりに美しすぎて、気がついたら号泣していた。
 
まさか、こんなに彼女に肩入れしていたなんて。
SNSの応援グループでは、喜びのコメントが上がり始めた。
でも、私は、彼女が一位になれなかったのが悔しすぎて、その輪に入ることもできず、その晩は早々にふて寝した。
 
翌朝、鏡を見たら、目が腫れぼったくて苦笑いした。
最初は、ちょっと見世物くらいの感じで見ていたのに、いつの間に肩入れしまくっていたんだな。自分ができなかったことを代わりにしてくれるような、そんな気持ちになっていたのかもしれない。
 
でも、準優勝だってすごいことだ。
 
改めて、彼女の応援グループにお祝いコメントを書こうとしたら、彼女からの投稿が上がっていた。
 
準優勝だけど、もう一つの大きなグランプリをもらえたこと。そのグランプリで、世界大会に出場することが綴られていた。添えられていた写真には、ステージ中央でティアラを着けて微笑む友人が写っていた。
 
昨晩とは全く違う嬉し涙が出てきた。
彼女の努力はちゃんと報われたのだ。
 
最初は、そんなことをして何の意味があるんだろう、そう思っていた。着飾ることも、歩くことも踊ることも必死に練習することで、今更、何が得られるんだろう。そう思いながら見ていた。
 
でも、そうじゃないんだ。
人は、努力しただけ美しくなれるし、努力しただけ進化できる。
自分が頑張ろうとする分野が何であれ、無心に努力する姿は、必ずや人の心を打つ。
 
だから、迷わなくていい。自分が進もうと思う道を、進めばいい。
 
数か月前とはあきらかに別人のようになった彼女の後姿が、そう語っていた。
 
いつからだって自分が努力をする姿は、どこかで誰かの心を打つ。
どんな結果が来るかを心配していないで、とにかく進め。
 
彼女は、また大きな目標に向かって地道に歩み始めた。
その背中は、私に問う。
 
あなたは、自分がすべきことを、やっている?
 
 
 
 
***

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2021-07-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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