気球になるまでふくらませてみたい
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:永松 昭徳(ライティングゼミ・平日コース)
「テスト、どうやった?」と、隣の席のクラスメイトに聞いた。
「いや~、だめやったな~」と彼は答えた。
「きみはどうやった?」と聞かれたわたしは、
「うん、まあまあ解けた気がする……」と答えた。
「おー!すごいね~」とクラスメイトから言ってもらった
試験結果が配られたとき、わたしは60点、彼は75点だった。
恥ずかしかった。
たしかに、クラスの平均点は80点くらいあるようなテストだったので、彼からすれば、自分が想定していたものよりも手応えがなかったんだろう。
「だめだったな~」という感想は本音だったはずだ。
わたしは当時、高校の授業についていけない時期で、60点もとれたら上出来だったのである。
そもそも、2人の基準値がぜんぜん違っていたのである。
このように、あまりその分野のことを勉強していないときの方が、自分が「できた気」、「できる気」になっていることが多くないだろうか。
たとえば、落書きみたいなイラストを描いて、意外にみんなに褒められて、
「あれ?おれってもしかしてイラストで食っていけたりして……」
と思うあの感じ。
イラストの学校に行ったり、憧れの漫画家の絵を模写して日々イラストの勉強をしている人の方が、むしろ、
「わたしなんか下手です。無理です。上には上がいます」
と言って、自信を持っていない人の方が多い。
人は、自分が知っている世界が広がれば広がれるほど、逆に知らない世界が大きくなるのである。
自分が知っている世界が、たとえば、ピンポン球くらいの大きさだったとしよう。
このとき自分は、ピンポン球の中にいる。
ピンポン球の外側が、自分の知らない世界だ。
勉強をしたり経験をしたりすると、自分が知っている世界が大きくなる。
ピンポン球が野球ボールくらいになる。
わたしはこのとき、野球ボールの中にいる。
知っている世界が広がっている。
と、同時に、知らない世界との境界線も大きくなっているので、知らない世界がまだまだこんなにあるんだということに気が付く。
さらに勉強をし、野球ボールがバレーボールくらいに大きくなった。
すると、ボールの周りの円周の長さは大きくなり、知らない世界と触れている部分が大きくなる。
知れば知るほど、知らない世界が大きくなる。
さっきの例で例えるならば、
高校時代のときのわたしはピンポン球の中にいて、隣の75点をとったクラスメイトは野球ボールの中にいたのである。
落書きを描いて、たまたま味のある感じで描けたわたしはピンポン球の中にいて、昔から絵を学んで毎日勉強していた人はバレーボールの中にいたのである。
「実るほど頭を下げる稲穂かな」というように、上に立つ人になればなるほど、勉強すればするほど、人は自分はまだまだだな~と謙虚になっていけるのだ。
いや、謙虚でなければならない。
「おれ、なんかこの世界のこと、分かっちゃったような気がするんだよね」
という感覚があるときは気を付けないといけない。
なぜなら、せっかく大空に浮かぶ気球くらいに育った自分の分かっている世界が、しぼみ始めている可能性が高いからである。
しぼみ始めた気球はゆるやかに下降していくだろう。
この世界のこと分かっちゃったような気がするという、しぼみ始めていた気球に乗っていると気が付いたときは、浮かび上がらせるためになんらかの衝撃が必要である。
レベルの高い人や作品と出会うの1番いい。
今までの自分が恥ずかしくなるくらいのレベルのやつ。
コンテストなんかに応募して、自信をくだかれるような結果を味わったりするのもいい。
おそらく、そのときはとても傷つくだろう。
自分は向いてなかったんだ、とその道をやめようと思うこともあるだろう。
それはそれでいいのだ。
一番やってはいけないのが、いつまでも可能性を持っていたいという願望だ。
本気を出せばおれだってやれるんだ、という思いを担保にしながら、なにも挑戦せずに生きていくのが、一番後悔が残ってしまうような気がする。
という思いを持ちながら、わたしは今、このライディングゼミに投稿をしている。
自信を持って投稿したものが、ダメだったときはやはり自信を失う。
が、しばらくするとまた、
「もっとうまくなりたい、上には上がいる、もっと勉強したい」
という思いがムクムクと湧いてくる。
しぼみ始めた野球ボールがまたふくらんでいっている感覚がある。
知れば知るほど、上には上がいることを知り恐れをなすかもしれない。
でも、せめて気球になるくらいまで、ふくらませていきたいと思っている。
***
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