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その答えが私を変えた


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:島田弘(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「もしよかったら教えてもらいたいのですが、全国1位だと相当お給料ってもらえちゃいますよね?」
 
営業マンとして殿堂入りしている社員に、私はそう声をかけた。
 
ある年の5月下旬、視察で訪れたある不動産仲介業の会社でのこと。
 
その会社から、毎年毎年、全国でトップテンに入る営業マンが生まれ続けているという噂を聞き、非常に興味を持っていた私。
 
その会社の視察をさせてもらえるチャンスを得たのだ。
 
全国に約4000人いると言われる営業マン。そのトップテンに入る営業マンが、この地方都市にある小さな店舗から毎年複数名出ているのだ。
 
全国トップテンに5回以上も入っている人がウジャウジャいる。
 
事前に得ていた情報から、おそらくこの営業マンたちは年収数千万円なんだろうなぁと予想していた。
 
どう考えてもこれだけ営業成績が優秀なのであれば、歩合制で、それ相応の報酬を得ているのは当然と考えたからだ。
 
店舗を訪れてすぐに、接客のロールプレイを見せてくれた。
 
登場人物は、営業マンとお客様。
 
視察に訪れている私たちから2名が夫婦役に決まった。
この夫婦に対して、社員がいつも通りの接客を披露。
 
それは、お客様の立場になり、お客様のことを第一に考えた、
非常に心地良い接客だった。
 
ただ1点を除いては。
 
その1点とは何かというと、登場する営業マンの数である。
 
夫婦役の2名と営業マン1名という設定だと思っていたのだが、
違う営業マン2名が加わった。
 
担当の営業マン以外の営業マンたちが、
よってたかって、「こんな物件もありますよ」とか
「新婚さんならこっちの物件も見たほうがいいです!」と
そのお客様にとって1番良い部屋選びを応援しているのだ。
 
「自分の契約を、他の社員に取られてしまうじゃん?」
視察に訪れた人はみんな、そう感じたと思う。
 
私が知っている営業マンの世界はこうだ。
 
社内で営業成績を競っている場合に、営業マン同士が自分の手の内を明かして、他の営業マンの売上アップを助けるというのは、ありえないこと。
仮にあるとすれば、「貸しを作る」というような場合だ。
 
ロールプレイが終わった後、質問タイムが始まった。
 
「いつもあんな感じで、協力しあっているのですか?」
と聞いてみると、
 
「いつもそうですよ」
 
という。
 
ありえない。
 
すくなくとも、私のそれまでの経験ではありえない。
仲間を騙してでも、自分の成績を上げたいという行動をしている
営業マンは何人でも思い出せるのだが。
 
いったいどうなっているんだろう、この会社の営業マンたちは。
 
「4000人の営業マンの中のトップテン入りを目指しているんでしょう?
営業成績を競っているのに、なぜ応援しあえるのだろう?」
 
そのことが私にはどうしても理解できなかった。
自分の営業成績が下がる、歩合給も下がる、
その下がった分は社内の誰かの手柄になるわけでしょ?
 
もう1つ質問をしてみた。
 
「お休みの日は何をしていますか?」
 
また信じられない答えが返ってきた。
 
「自転車で、新しい物件の中、周辺の情報を集めに行ってることが多いです。会社に来てた方が楽しいんですよね〜」
 
とにかく会社が、そして会社のみんなのことが大好きだということが伝わってきた。
 
入社10年のベテラン社員も、入社2ヶ月目の新入社員も、誰に聞いても、同じような答えが返ってきた。
 
ここで、また1つ気付いてしまったことがあった。
 
新入社員はじめ、ほとんどの社員がメモを取っているのだ。
 
私たちが視察に訪れたときから、ずっとメモを取っている。
 
新入社員の4人に「メモを取りなさいって言われているの?」と
質問したら、「誰にも言われていません。先輩方の話の1つ1つが
自分にどう活かせるのかを考えるためにメモをしています。
うちの会社にはマニュアルがないので、それが自分だけのマニュアルになるんです」
と一人の女の子が答えてくれた。
 
その女の子に続けてこんなことを聞いてみた。
 
「どうしてこの会社に入社したのですか?」
 
「ここで働いている皆さんが楽しそうだったからです。正直なことを言うと、不動産仲介業の仕事がしたいと思ったことはありません。でも、今はとっても楽しいです。同期入社の4人で宅建の資格を同時に取得して、もっともっと先輩たちのように活躍できるようになろうねって話をしているんです」
 
言わされている感ゼロ。
 
ぶっちゃけ、このような会社を初めて見た。
 
途切れることのない視察組からの質問1つ1つに、ときには写真を使いながら説明をしてくれた。
 
その写真を見て、さらに私の頭の中は「???」の状態に。
 
会社に子供が来ていて、普通に遊んでいる。
 
デスクの上で子供のオムツ替え。そのオムツを替えている人は社長で、その子供は社員の子どもたち。社内恋愛、社内結婚が多い。そして、それぞれの社員が家族計画を共有している。
 
この会社、どうかしてる。
 
そして、私の隣りにいた全国トップテン入りを繰り返している殿堂入り営業マンに聞いてみた。
 
「もしよかったら教えてもらいたいのですが、全国1位だと相当お給料ってもらえちゃいますよね?」
 
「毎月同じお給料だけですよ。歩合ないんで。日本一になってもお給料は変わりません」
 
2週間悩んだ私。だって、これまでの私の経験からは何一つ導き出されることのない答えばかりで。
 
この会社の契約率は約95%だそう。100人訪れたら、95人はこの不動産仲介業社で契約をしてしまう。
業界平均の倍の数字らしい。
 
人は誰のため、何のために働いているのか。
私の仕事観と人生観を大きく変えてくれた出会いに感謝。
 
 
 
 
***
 
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