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メディアグランプリ

ノンフィクションライター・将口泰浩流 取材と執筆の極意


*この記事は、「インタビュアー養成講座」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

「『取材』って一体何をしたら良いんですか!?」そんな悩みを一発で解決!取材の作法を学び、その日のうちにインタビューも実施!講師から、書き上げた記事のフィードバックもありの超実践編『インタビュアー養成特別講座』

記事:今村 寿子(インタビュアー養成特別講座)
 
 
取材歴35年以上のベテランライター、将口泰浩さんは、産経新聞社の記者からノンフィクションライターに転身。『未帰還兵 六十二年目の証言』など、多くの著書を執筆されている。
 
本日は、取材と執筆の心得について、さまざまなエピソードとともにお話を伺った。
 
ライター人生の中で、一番記憶に残るエピソードがあるという。それは、産経新聞社の記者時代にさかのぼる。白血病の高校野球部キャプテンを前面に出し、白血病のドナー提供を呼びかけるキャンペーン記事を書いた時のことだ。その頃は、ドナー提供に対する世間の認知度も低く、ドナーはすぐに見つからなかった。
ある日、海に軽自動車が突っ込んだとの事故情報が入った。いつもどおり現場に駆けつけたが、車を引き上げるのに時間がかかるため、一旦その場を離れた。数時間後、現場を訪れてわかったのは、車とともに引き揚げられた遺体が、記事にしたキャプテンとその母親だったことだ。その日は検査日だったらしく、母親は、大学病院を訪れ、「うちの子は、もう死んでいるからいいです」とだけ言い残し、病院を後にしたという。子どもの死因は、水死だった。もしかすると生きていたのでは……という憶測もはたらいた。人を助ける気持ちはあっても、記事の力には限界がある。無力感を感じずにはいられない出来事だったそうだ。
 
取材対象者がいる記事の場合、取材対象者と読者、双方に与える影響を考えなければならない。将口さんは、取材対象者の嫌がることや読者を不快にする記事を書かないことをポリシーにライターを続けてきた。だが、あえて逆のポリシーで書くライターもいるという。書き方は、ライター次第だが、面白ければ何でもよいというのは、将口さんの正義ではない。
これは、ライターを本業としない我々にも考えさせられる点ではないだろうか。誰もが発信者となれる時代。何をどのようなスタンスで書くかは、発信者のポリシーに委ねられている。炎上も誹謗中傷も、日頃は隠れて見えない部分が、SNSの気軽さによって炙り出される。ちょっとした気のゆるみや無知のせいで、誰かを傷つけてしまう。自分の思考や判断軸を客観的に観察し、発信していく必要性を強く感じずにはいられない。
将口さんのアドバイスとしては、とにかく「寝かせる(時間をおく)こと」が大切だという。書籍の執筆では、時間をおいて、もう一度読み直してみると、勢い任せに書いた部分に、違和感をもつものらしい。書籍の場合は、1日寝かせたりすることもあるようだが、SNSの場合でも、1分でもよいから冷静になる時間を設けるといいとのことだ。
 
取材の鉄則は、「相手に好かれて、いかに気持ちよく語らせるか」、だという。好かれないことには、話は進まず、いい内容を聞き出すこともできない。相手も人間。どんなにとっつきにくい相手でも、「何かを話したい欲求」は持っている。専門家であればなおさらで、知っていることを教えたくて、うずうずしている。ライターは、甘えて懐に入り、教えてもらうぐらいのスタンスがちょうどいいらしい。
 
全ての基本は、「いかに人間関係を保つか」だ。
取材にも執筆にも相手がいる。取材対象者と読者が「いかに気持ちよくいられるか」を考えることが、その記事の質をあげることにつながると言えるだろう。
 
ライターにとって一番大切なことは、「いい素材(テーマ・人・もの)」を見つけることだという。見つけ方はいたってシンプル。「これは!」と思ったものを熟成させることだ。自分のアンテナにひっかかったものを拙速に形にしようとせず、それについての資料を集めながら、その素材への思いを募らせて、いい頃合いで執筆にかかる。それを繰り返すことで、ネタ切れにもならずに済むようだ。
 
将口さんは、「辺境記者」の肩書に憧れていたらしく、海外取材の経験も多い。アフガニスタンの空爆の際には、タリバンの本拠地での取材予定があったらしい。他国の記者十数名とともに取材にいく予定だったが、会社命令により中止。その後、その記者たちは遺体で発見されたらしく、結果的には命拾いをした。そのような過酷な経験を背景に、現在は、あまり知られていない人物や出来事に光を当てる作品を手掛けている。
 
過去のノンフィクションを書く場合、史実を徹底的に洗い出す必要がある。そこでも必要になるのが、「相手に好かれること」だ。取材対象者に好かれることで、一緒に資料を探してくれるようになるからだ。
 
将口さんがこれから手掛けようとしている作品は、4年前に、「これは!」と思い、温めてきた素材(人物)らしい。偶然にも、その方の息子さんに接触することができたらしく、これからの展開を楽しみにしているようだ。
 
将口さんのインタビューを通してわかった取材と執筆の極意は、「聞くこと」、「書くこと」にあるのではなく、そこにかかわる「人に与える影響を考え抜くこと」にあった。
 
どうしても、聞く内容、書く内容、聞く方法、書く方法に気を取られがちだが、聞く相手も書いたものを読む相手も「人」。
 
その「人」をどう扱うかが、将口さんのような長いライター人生を歩めるどうかを左右することになりそうだ。
 
 
 
 
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この記事は、天狼院書店の「インタビュアー養成講座」を受講した方が書いたものです。

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2021-09-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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