特急の運転見合わせが功を奏して、八方塞がりから脱出できた話(「ピンチはチャンス」は、本当だった!)
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:三武亮子(ライティング・ゼミ集中コース)
キーーーーーーーーーーーーーーーーーッ。
乗っていた特急が急停車した。
13:20 金沢発 大阪ゆきサンダーバード24号。
金沢駅から2駅通過して、3駅目に向かって列車が加速していた時のことだった。
……
……
緊急停止ボタンが押された模様。
ほどなくして車内アナウンスが流れた。
3駅目、芦原温泉に向かう途中の線路に問題があるとかで、特急の運転を一時見合わせると。
人身事故ではないから、復旧するのにそう時間はかからんだろう。
雪景色を眺めながら、そう呑気に悠然と構えていた。
しかし……
待てど暮らせど、出発のアナウンスは流れてこない。
車内に響く情報は、最初に聞いたものと同じ。
何一つ変わっていない。
通勤途中や旅の途中での出来事であれば、「いつか復旧する。急ぐ旅でもあるまいし」、と読書に勤しんでいたはずだ。
しかし、この日は、いつもとは事情が違う。
これから2時間半かけて新大阪まで行き、18:40の伊丹空港発、長崎空港ゆきの飛行機に乗らなければいけないのだ!
飛行機は、マイレージを使っているから変更は効かない。
というか、最終便だから、これを逃したら、その日のうちに長崎には帰れない。
明日から仕事なのに……。
それに、伊丹空港に着いたら飛行機が出発するまでの1時間を、ゼミの課題作成にあてるつもりでいた。その時間が削られる。
軽いパニック状態に陥った。
20分経過……
車掌が伝えるアナウンスは、最初に聞いたことから何一つ変わっていない。
真後ろの座席に座る幼児は、天真爛漫にはしゃぎ、楽しそうに笑っている。
ホームに出て、笑顔でかけっこし出した子どもたちもいる。
悩みがないってうらやましい……。
冷ややかな目で、その笑い声を聞き、笑顔を見ていた。
30分経過……
まだ動く様子はない。
さすがに落ち着かなくなってきた。
最悪な場合を想定して、この日中に長崎に到着する別ルートと、翌日まで待機する場合のシュミレーションをし始める。
Wifiもスマホの充電コンセントもない。
「ない」「ない」「ない」
「ない」ものにばかり、意識が行く。
スマホがすべての私にとって、電池の無駄遣いは許されない。
伊丹空港までは、なんとしてでももたせなければいけない。
マッチ売りの少女の一場面すら脳裏に浮かんでくるありさまだ。
いつも利用する羽田空港だったら、こんなにヤキモキすることなく落ち着いていたはずだ。しかし、今回はめったに使わない空港とまったく土地勘のない北陸と関西。これが、私を怖気づかせた大きな原因だ。
想定できることはすべて想定した。
あとは野となれ山となれ!
この日に帰れなくても、死ぬわけじゃない。
有給が一日ムダに減るくらいなもんだ。
と、ようやく荒立っていた神経が落ち着きだした。
すると、さっきまで、あーでもないこーでもないと決まらず、頭の中を旋回し続けていた課題のストーリーの”オチ”が、ぽっと浮かんだ!
このところ鳴かず飛ばずの結果だった課題。
あれこれ考えすぎて、方向を見失い、すっかり迷子の状態だった。
「そもそも、人が必要とする情報を器用に提供できるだけの文章が書けていたら、今頃、本業としてガッツリ仕事をしているはず。深く考えるのはやめよう。だって、考えたところで、毎回、うまくいかないんだから」
と、連鎖反応で、こっちも開き直り始めた。
停車中の列車の中で、雪景色を眺めながら、楽しかったお宿での朝食のことを思い返していた。
ただただ、その時感じたこと、イメージしたものをたどって、それを頭の中で言葉に置き換えていった。
なんとなく課題のストーリーが頭の中で纏まり始めた頃、列車が動き出した。
予定より50分遅れでの出発だった。
これで、飛行機出発の1時間前には、空港に到着できそうだ。
胸をなでおろす。
空港で作業することは諦め、帰宅してすぐに書き始められるよう、頭の中で、ひたすらストーリーを組み立て、最適な言葉を探した。
どうしても、あの時のあの感動を言葉に残したい。
ただその思いだけだった。
久しく忘れていた「どうしても、これを伝えたい」、という気持ちが復活した。
脱皮した瞬間だ。
予定していた飛行機は、予定どおり伊丹空港を離陸した。
CPSがすごい勢いで回っていた状態から、ようやく通常モードに戻ったような落ち着きが戻った。
提出締切時間の2時間前に、帰宅。
願掛けになっている「ぜったいうまくいく」音楽をかけ、開き直りモードのままパソコンに向かった。
慣れた環境は、やはり最適。
よい小ネタが浮かんでくる。
思考に、つっかかりがない。
趣味で野球をやっていた人が寝不足の状態で試合に臨み、バッターボックスに立ったら、ほどよい脱力感があって、見事ホームランを打てた、と言っていたことを思い出した。
まさに、その状態だ。
書いた課題文は、初日以来2度目となる天狼院書店Web掲載枠に返り咲いた。
禍を転じて福と為す。
不測の事態に遭遇したときは、慌てず可能な対策にとことん思いを巡らすことが最善策!最後まであきらめなければ、必ずヒカリがみえてくる!
***
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