メディアグランプリ

鳥肌が立つエスプレッソの濃度


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:吉良健一(スピード・ライティング特講)
 
 
密度というものを考えたことがあるだろうか?
私はこれほどまでに密度について考えさせられたことはなかった。
 
今、講座の真っ最中だ。
 
講師より手書きで文字を書く課題が出る。20分で2,500字を書くというものだ。コピー用紙を前にため息をついた。
 
しまった、ホットコーヒーを入れなければよかった。コーヒー飲む余裕なんてない。
 
ただコピー用紙を前にして頭に浮かんだことをひたすら文字に書き出してみる。ふと気づく。頭に浮かんだことを、文字に書くことにタイムラグが生じていることに。
頭の中では目まぐるしく考えや場面のイメージが連想ゲームのように切りかわっていく。それが文字を書くときには時間差がある。
「いま、考えたこと」と「いま、書いていること」は同じようで同じではない。「いま、考えたこと」は吉良Aの行為としよう。「いま、書いていること」は吉良Bの行為としよう。吉良Aはめちゃくちゃ速いのだ。次から次に自分の興味・関心のままに進んでいく。
「20分で2,500字書くぞ」
「コーヒー、いいにおいだな」
「20分後って何時何分だ」
「腕がだるいな」
と、次々に進んでいるのだ。
一方、吉良Bははっきり言って遅い。ひとつひとつを認識して、右手でボールペンを動かし、文字にしていっているのだ。漢字が出てこなかったりする。文末の丸がきれいに書けてなかったりもする。だだ、1歩1歩を少しずつ進めているのだ。
 
ここで仮説が浮かんだ。
「スピード・ライティング」とは、自分の頭で考えたことをできるだけ早く文字にすることなのだと。理想をいえば考えた瞬間に文字になっているようなことなのだと。重要なのは密度だ。ライティングに関係のないものはいっさい省く。
吉良Aの考えをできるだけ速く、吉良Bは文字にするのだ。吉良Aはどんどん新しいことを考え、吉良Bは必死に食らいついていくのだ。吉良Aと吉良Bの差が密度なのだ。吉良Aが生み出したアイデアを、吉良Bが吐き出す。
 
コーヒーにはエスプレッソという抽出方法がある。
粉に高い圧力をかけて短時間でコーヒーの成分を抽出させる。多くの場合深煎りの豆が使われる上に、ドリップコーヒーに比べると、豆に対して抽出される量がとても少ないので濃厚で、とても濃いコーヒーになる。
 
そう、「スピード・ライティング」はエスプレッソだ。
脳に高い圧力をかけて記事を抽出させるのだ。だから高い圧力、つまり時間の制限が必要なのだ。そうすることで濃厚で、とても中身の濃い記事を書くことができるのだ。
 
大切なことは時間の密度なのだ。
20分という時間の制限で、頭の中のアイデアを抽出するのだ。
最初から時間がないので、思ったことをとにかく吐き出す。理路整然としていなくとも、伝えたいことさえはっきりしていれば伝わるのだ。むしろ、伝えたいことを伝えることに特化できるのだ。
時間がないから、余談を書けない。書けなくていいのだ。伝えたいことをただひたすら伝えるのだ。時間の密度が大事。時間の密度が大事。時間の密度が大事なのだ。
 
あらためて、20分と決めて文字をタイピングしてみる。ふっと時間の経過する感覚が変わる。考えたことが文字に反映される感覚が変わるのだ。
「考えてから文字にする」ではなく、「考えながら文字になっていく」のだ。吉良Aが走っていて、吉良Bは吉良Aを後ろから追いかけていたのだが、気づけば吉良Aの真横で併走しているのだ。吉良Aと吉良Bが並んでいるのだ。二人とも全力疾走だ。ひょっとすれば、吉良Bが吉良Aを抜きそうになっているのを、吉良Aが必死で食らいついているのだ。
 
まさにこれが、いまの私の頭の中だ。
混乱してきた。「考える」より速く「文字」になるのだ。アイデアを脳が認識するより速く、タイピングする指に伝わっているのだ。
これが、時間の密度を体感するということなのだろうか。
「スピード・ライティング」の極意を実感して鳥肌が立った。
 
今度はコーヒーではなくエスプレッソを飲むことにしよう。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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