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魔法の健康法~易経が教える養生~


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記事:尹玉(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
「もしもし、追加で金額の大きい生命保険をお願いしたいのですが、打ち合わせできますか」
 
思い余った私はついに保険外交員に電話をかけた。
4400万円の借金を夫に残して、私に何かあったらと思ったら気が気ではない。
 
当時の私は薬膳レストランと学院を経営していた。6年間の積み重ねがあって、レストランも学院も売り上げは右肩上がりだった。更なる発展を目指し、大胆にも銀行から4400万円の借入をして、新しい学院をオープンさせたばかりの時だった。
 
「肌がきれいですね~」 とよく褒められ、元気もりもりだった薬膳の講師である私の身にこんな事が起きるなんて……。
 
ある日、天地がひっくり返る激しいめまいと吐き気に襲われた。何が何だかわからず、救急車を呼んだ。結局のところ、心臓と頭にも問題がなさそうだったので、翌日耳鼻科にいくようにと言われすぐ帰される。三日でめまいは収まったものの、その日を境目に体調がどんどん下降線をくだる。毎日のように立っていられないほどのふらふら感、朝から頭に熱があがって、目が開けられない。話すことも、食べることも全部が億劫……。
 
何だこれ? 得体のしれない恐怖。もはや何も手につかない。
 
病院行っても原因不明。
症状は長引き、不安ばかりが募る。もしかしたら私、重病? 従業員どうする? 借入どうする? など心配事が頭を駆け巡る。
 
 
それからというもの、漢方の先生、整体の先生、エネルギー調整の先生、霊能力の先生のなど、すごいと言われる先生の所に不調の身体を引きずって行っては、治療を受ける日々。
誰かが私を元通りにしてくれないかと、他力を求めてすがるばかり。
 
しかし症状は一進一退を繰り返し、大きい改善が見られず。
しばらくしたら、治療に通う力も尽きて来た。
 
こうなったら腹を括ろう。万が一私に何があっても、誰かに迷惑をかけることだけはあってはならない。
借金を上回る総額5,000万円の保険を契約した。
保険に加入したら、なるようになる。となんだか開きなおりの境地になってきた。
 
しかし、運命は不思議なものだ。何かの執着を捨てたら、真新しいプレゼントが用意されていたのだ。
 
家で横になっていることが多かったのだが、耳学で聞いていた易経の言葉が心に染みて来た。万年の亀、下顎を垂(た)らして、もの欲しそうに他を見る「凶」。(本文「爾の霊亀を舎て、我を観て頤を朶る。凶」)
 
これは易経の「山雷頤」(さんらいい)の卦で出てくる言葉。
 
その意味は本来万年も生きている霊亀はすごい能力を持っているのにも関わらず、自分の素晴らしさを捨てて、下顎を垂らして、他人がすごいと崇め、羨み、物欲しげにしているのは「凶」になるということ。
 
この言葉は当時の私の胸の奥に大きい振動を起こした。
 
病気になって、すぐ治療家に頼り、他人になんとかしてもらおうと思うばかりで、自分の中に本来備わっている素晴らしい生命力・治癒力を無視していたのではなかろうか。
 
 
易経は中国の最古の経典で、自然現象の摂理を人間世界に当てはめて、どうしたら道から外れない良い人生を送れるのかを示してくれている最高の人生ガイドブックなのだ。
易経64卦は64通りの人生場面を表しているが、「山雷頤」では養生、健康の考え方について説いている。
 
「万年の亀……」すごい気づきだった。
それからの私はすべての治療をやめて、ひたすら自分の身体と心に向き合った。
疲れたら休む。お腹空かなかったら食べない。眠気を感じたら寝る。心と身体を静める時間を多くもつ。太陽の光を浴びる……。
 
そんなある日、身体の声が聞こえてきた。
 
私元気!
 
間違いなくそう言ってくれた。
萎れた花がみずみずしさを取り戻し、再び輝きを放つ。
心の奥から湧いてきた喜び、今でも忘れない。
 
 
誰もが健康に過ごしたいと思うだろうが、一生の中でまったく病気にならない人はほとんどいないかも知れない。しかし、病気になった時の対応こそが運命を変えるのは間違いないようだ。
 
思えば、私たち人間の身体は一息4回の脈を規則正しく打ち、一刻も休むことなく呼吸を繰り返し、食べたものは全力で消化・吸収し、要らないものは排泄してくれる。怪我でもしたものなら、修復細胞が集まり、元通りに復元してくれるものすごい霊性をもった生き物なのだ。しかもこのような生理活動は人間が何も意識しなくても、全自動で、完璧にやってくれるのだ。この命の働きに「神」を感じずにはいらない。
 
何か問題が起きた時、人はつい外に答えを求めるが、本来は自分の中にすべての答えがあるのだ。もちろん他人の力が必要な時もあるが、他人は協力者であって、根本的に問題を解決していくのは間違いなく自身の内在の力によるものだと言える。名医も自分の中にいるのだ。
 
「神業」である命の働きに全幅の信頼を置き、それを妨げることさえしなければみんな健康なのかも知れない。
 
最も自然体な状態を「健康」と言えるだろう。反対に不自然な状態を「病気」と呼ぶのだ。経験してみてわかったことは、病気は人生の素晴らしい学びのチャンスになったことだ。
病気を通して、考え方や生き方のどの部分が自然とズレがあったのかを知ることができたのだから。
 
「山雷頤」卦では養生の意味をといているが、養生は自然の摂理や法則を理解し、それに準じた生き方をすることである。自然の生き方から乖離すればするほど、病気に近づくのである。
 
私たちが生きる上で、最も価値があるもの例えば、太陽の光、空気、水、食材などは自然から無償に提供されているものばかりだ。必要以上に薬や人為的な治療に頼るよりも、自然から与えられたものを正しくに活用することが自然の生き方なのかも知れない。
 
 
時には、心を静めて身体から力を抜き、ゆっくり深呼吸する。そして無から肉体を作り上げ、新陳代謝によって身体を修復してくれる命の働きを信じて身を委ねるだけで、本来あるべき姿に戻りやすくなるのではないだろうか。
 
あの体調不良からもう5年も過ぎた。治療をやめて完全に回復するまで約1年を要した。
再び健康になった幸せを噛みしめることも有難いが、私にとっては、自分の中に備わった素晴らしい力を見出した貴重な体験でもあった。
 
時にはじっとして、何もしない。静かな時の流れの中で、身体の内面では計り知れない力たちが総動員して、良い方向に向かって完璧に働いてくれるのだ。
 
どんな治療にもまさる魔法の健康法は「信頼と安心」なのかも知れない。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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