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考えるな! 感じるんだ! と言われたので考えてみました


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:モトタケ(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
【2019年7月、日本武道館】
少年柔道の試合を観戦していた私の目の前で、監督が児童に檄を飛ばした。
 
『考えるな! 感じろ!』
 
なるほど! と思った。しかし同時に違和感も覚えた。頭で考えるのではなく、相手の動きを感じ取り行動せよ。一見、理にかなっているように思えるが、この言葉の本質は全く違う所にあると、私は長らく思っていたからだ。
 
これはブルース・リーの映画『燃えよドラゴン』(1973年)で語られた有名なセリフである。弟子にカンフー(ブルース・リーはgung fu と綴っていた)の教えを説くシーンだ。
教えには続きがあり、『それはいわば月を指さす指の様なものである』、『指にこだわってはいけない。その先にある栄光を見失ってしまう』と語られている。
 
(リーさん、何を言ってんだ?)初めてこの場面を見た当時、私には理解できなかった。(いや、今でも解かっているとは言い難い)
 
初の東洋人主演のハリウッド映画ということもあり、劇中の東洋思想についての描写の全権はブルース・リーが担った。禅や兵法が盛り込まれることにより、話に深みが増し、劇中の随所に名言が散りばめられている。
 
彼の人間性、精神面の形而上学的原点となる、『己を表現する事』をストーリーとは別に、スクリーンの裏側で描くことに成功しているこの作品は、注意深く見ていないと全く(それらに)気付く事がないまま終わってしまう、という恐ろしい映画とも言えるだろう。ここにも『考えるな! 感じるんだ!』の本質の一面があると私は思うのだ。人間離れしたアクションシーンに目を奪われていると、その奥に描かれている栄光を見失ってしまうだろう。
 
『月を指さす指』の話は、鎌倉仏教の禅師、道元の話の引用であり、他にも宮本武蔵の影響がみられるシーンを見ると、日本人として嬉しく思えたりもする。
 
多くの人々を熱狂させた1973年公開当時、残念ながらブルース・リーは他界しており、そのミステリアスな死さえもが作品に至上のカリスマ性をもたらす結果となった。未だにフォロワーを生み、人々に考える場を与え続けてくれている。
 
『燃えよドラゴン』はハリウッド作品(香港合作)である。青春時代をアメリカで過ごしたブルース・リーにとって念願のアメリカ進出作品であった。
 
そのため、自ら監督し、制作していた『死亡遊戯』の撮影は中断され、撮影済みのクライマックスシーンとシナリオだけが残された。
 
その後、本人不在のまま5年がかりで追加撮影され、仕上った『死亡遊戯』(1978年)は全くのオリジナルストーリーで作り直された作品となっていた。
 
内容についての賛否云々よりも、この結論(クライマックス)だけが存在する話にどのように後から問題定義するか、生前からブルース・リーとゆかりのあったスタッフ、キャスト達の『彼だったらどう演じる? どう動くか?』といった考察が全編から感じ取れる映画に仕上がっている。
 
劇中、『ロッカールームでの決戦』と呼ばれるシーンがある。本人なしで、CGも撮影技術も今ほど高くなかった時代に、ダブルキャスト(そっくりさん)とスタントマンだけで本物同等の迫力あるアクションシーンを作り出してしまった。対戦相手役のボブウォールは流石、生前のブルース・リーに映画の中で何度も殺された経験があるだけに、ブルース・リー独自の≪武術に哲学を吹き込む精神≫を見事に受け継いでおり、それをスクリーンに反映したのだった。
 
幾つかの矛盾点も目につくが、全ての映画に同じことがいえるのではないか、
『考えるな! 感覚で観ろ!』と。
 
【2022年7月、日本武道館】
3年ぶりに少年柔道の大会が開催されることになった! まだ制約も多そうだが、ようやく長い自粛期間が開けた事を嬉しく思う。
 
そういえば『燃えよドラゴン』で描かれていた格闘技のトーナメント試合も3年に1度の開催という設定だった。なんだか因縁を感じてしまった。
 
3年前に『考えるな! 感じろ!』と怒鳴られた少年たちも参加者リストに名前を確認できた。参加者みんなが同様に特別な3年間の時を過ごし、乗り越えてきた。彼らの成長ぶりに期待したい。
 
同じく今月、7月20日はブルース・リーの49回目の命日である。この先、何十年経とうが、彼は人々の記憶の中で生き続け、言葉や教えは生活の中に溶け込んでゆくだろう。
 
彼の残した言葉の中に『水になれ』というものがある。
 
心を空にして
形のない、形式のない水の様になれ
水はどんな形の容器にも収まることができる
カップに入れればカップに、ティーポットに入れればそこに収まる
浮かぶことも
固まることも
割ることもできる
水のように柔軟になれ
 
ブルース・リーにとって映画とは一つの表現の場であったに過ぎないと思う。自身の形を、限界を持たず、常に柔軟に対応している事だろう。今もどこかで。
 
 
 
 
***

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2022-07-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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