fbpx
メディアグランプリ

本屋は「危険な沼」だった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:深谷百合子(ライティング・ゼミNEO)
 
 
久しぶりに本屋へ行った。が、これがいけなかった。
 
欲しい本を買うのに本屋で探す時間が惜しくて、最近はネットや電子書籍での購入ですませていた。欲しい本だけピンポイントで買って画面を閉じる。それで終わりだ。余計な時間もお金もかからない。しかし、本屋はマズイ。目当ての本だけ買うつもりだったのに、ついうっかり店内をウロウロ回遊してしまった。その結果、1冊だけ買うつもりが10冊になり、散財する羽目になった。
 
散財も痛いけれど、本が増えるのは更に痛い。物を減らそうと頑張っているというのに、こんなに本を買ってしまってどうするんだ……。タイトルだけメモして、電子書籍で購入したらよかったんじゃないか。本屋からの帰り道、そんな自責の念が湧いてくる。
 
でも、「これはやっぱり紙の本で読みたい」という本に出会ってしまったのだ。その本は、一度電子書籍で読んだ本だった。本を読んで、「ここは自分に必要だ」と思うところが何か所もあった。電子書籍も、紙の本でいう「折り目」にあたる「ブックマーク」という機能がある。マーカーで印をつけることもできる。でも、「気になったあの部分をもう一度読み返したい」と思う時、ブックマークの数が多いとなかなか探し出せない。それがとてもじれったい。
 
紙の本だったら、何度も繰り返し開いたところは「クセ」がつく。それに、自分の体が覚えてくれるようになる。「大体このあたりに書いてあった」と、まるで地図のように「位置情報」として体が覚えていくのだ。
 
読書ノートに気になったところを書き出しておけば、電子書籍でもいいじゃないかと思ったこともある。でも、やっぱり違うのだ。気になっていたページを開いた時の、「あぁ、ここ、ここ。この一文にガーンってなったんだ」という感動は、読書ノートだけでは味わえない。
 
そんなことに気づいてしまって、やっぱり紙の本を買おうと近所の本屋に出かけたのだ。
 
目当ての本を手にとった後、同じ棚を見渡すと、気になるタイトルの本がいくつかあった。パラパラとページをめくってみる。「これは手元に置いておきたい本だ」と心が動く。何冊か見比べてみて、「何度も見返すだろうな」と思う本を選ぶ。どの本も、今の自分の仕事に必要な本だった。
 
ビジネス書の棚の横は実用書が並び、そこから更に先に進むと専門書のコーナーがある。自然科学、電気・電子、環境、建築などの理工書が並んでいる。
「以前はよくここで電気や空調に関する本を買ったな」と懐かしく思いながら本棚を眺めてみた。
 
30年ほど前、全く知識も経験もない仕事に変わったとき、不安を口にする私に上司はこう言ってくれた。
「原理原則は本が教えてくれる」
 
だから分からないことに出会うたび、私は本を買って勉強をした。でも仕事も変わった今はもう、この本棚に並ぶ本を読むことはない。そう思いながら本棚を眺めていたら、ものすごく気になるタイトルの本が数冊、目に飛び込んできた。どれも動物の謎に迫る本だ。「なぜ動物は迷わずに道をみつけられるのか?」とか、「カラスはなぜ遊ぶのか?」とか、別に知らなくてもいいことなのに気になる。知らなくてもいいことだけど、知っていたら楽しそうだ。
 
さらに横の棚に目をやると、これまた思わず手にとりたくなるような表紙の本がある。中を開くと「リトマス試験紙の製造工程」や「ピンセットの製造工程」などがマンガで描かれている。思わず、「へぇ」の連発である。萌える。立ち読みだけでは物足りない。
 
「あぁ、もうこれも、これも買ってしまえ!」
そうして気づくと購入した本は10冊になっていた。
 
本屋に行かなければ出会わなかった本。それは、私が自分で気づいていなかった「私の好奇心」に気づかせてくれた。昔、インターネットなどなかった頃、私にとっての情報源は本屋だった。その後、インターネットが使えるようになってからも、何かに悩んでいたり、解決したいことがあると本屋に行った。だから、自分の本棚は、私のこれまでの人生の「悩みと不安の歴史」そのものだった。マネジメントに悩んだ時に買った本、自分の進む道に迷った時に買った本、中国語を上達させたくて買い漁った本……。それらは全て、目的があって買った本だった。
 
でも、本屋でふと気になって手に取った本の中には、自分の悩みや不安とは関係のない本もある。「なぜ、この本を?」と思う。何だかわからないけれど面白そうだと感じたり、知りたいと思ったから手にとったというだけだ。でも、そこから見えてきたのは、自分の気づいていない自分の一面を、本を通して知ることができるということだ。これは色々なジャンルの本が一堂に集まっていて、なおかつ、ザッと見渡せる本屋だからできることだ。
 
そういうわけで、私は本屋の楽しみ方を見つけてしまった。お金のかかりそうな「危険な沼」だ。でも、自分がどんな本に心が動くのかを観察していけば、まだまだ知らない自分を発見できる。自分の本棚も「悩みと不安」だけでなく、「好奇心や嗜好」で満たされていったなら、今よりもっと人生を楽しんでいる自分になっているに違いない。
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2022-07-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事