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「最高のコーチ」


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:油井貴代子(ライティング・ゼミ特講)
 
 
今、泳ぐのがとても楽しい。
元々運動は嫌いなタイプの私だが、泳ぐたびに新しい発見があったり、できることが増えていくのがとても楽しいのだ。
 
プールに行こう、そう思ったのはほんの一か月前のことだ。
更年期のせいか急に体重が増えた。
仕事が落ち着いたら少しずつウォーキングをしよう。ただ歩くだけではつまらないから、大好きな寺社巡りをしよう。なんなら西国三十三箇所巡りなどして御朱印を集めるのもいいな。
そんなことをもう何か月も考えていて、それでも仕事は次から次へとやってきて片付かないうちに、気が付いたら夏になっていた。
ああ、こんな暑い日に外を出歩いたら熱中症で倒れてしまう。
そう思うと一歩でも外に出るのが億劫になる。
ふと、それならプールでウォーキングをすればいいじゃん、とひらめいた。
 
歩こう歩こうと考えながらもう何か月も歩いていないのは、多分仕事のせいだけではない。やろうと思えばいくらでも時間を作ることができるはずなのに、それをやってこなかったから歩けないのだ。
私は早速、水着とゴーグルと水泳帽を購入した。
インターネットで水中ウォーキングの方法を検索し、あらかじめ運動効率の良い歩き方も調べておいた。地上のウォーキングに比べれば負荷が少ないため、一度の運動量はかなり少なくなるが、それだけ体の負担も軽くなる。増加した体重は足を痛めるもとにもなるので、水中ウォーキングは今の私にピッタリに思えた。
車で10分もかからないところに市民プールがある。1時間の入場料は200円とリーズナブルだ。娘に話すと一緒に行くというので、早速二人でプールに出かけた。
 
娘は子供の頃に喘息の持病があり、2歳から12歳までスイミングスクールに通わせていた。もちろん泳ぎは得意である。私は息継ぎが大の苦手で、クロールができない。かろうじて平泳ぎができる程度である。今回はウォーキングが目的であったが、少しずつは泳ぐ練習もしてみようと考えていた。なぜなら、歩くより泳ぐ方がカロリーの消費が大きいとインターネットの情報を得ていたからである。
 
少し水中ウォーキングをして体を慣らし、恐る恐る泳ぐコースへ移動してみた。
プールは歩くレーンと泳ぐレーンに分かれていた。
泳ぐレーンにはすでに何人か泳いでいたが、間隔を見計らって泳ぎ始めた。
やばい! 泳げない。一応形としては泳いでいるつもりだが、前になかなか進まない。しかし後ろから次々に泳いでくる。私は必死に水中をもがきながら、やっとのことで25mの終点にたどり着いた。これはきつい。息もゼイゼイしているが、たった25mで音を上げるのも恥ずかしくて、何度か立ち止まりながらもスタートの位置に戻った。
 
「お母さん、唇が紫や。大丈夫?」
少しきついと感じていたが、そこまでひどい顔をしているとは思っていなかった。だがこれ以上泳ぐことはやめて、自分に見合った歩くコースに戻った。
「ちょっと泳いでみて?」
しばらくして娘から声をかけられ、少しだけ泳いでみた。すると娘からいろんなアドバイスをもらった。手足の動かし方がバラバラであること。体の動きが固いこと。息継ぎのタイミングが悪いこと。
一度にたくさんのアドバイスをもらったので混乱したが、まずはできることから少しずつ練習してみた。すると動作がとても楽になった。楽になると自然と力が抜け、ちゃんと進むようになった。
泳げている! それは私にとって大きな驚きであった。
「うまいうまい! お母さん、上手になったわ」
いやそれはこちらのセリフだ。娘は教えるのがとても上手なようだ。
 
一つのことができると、私も次々にどん欲になり、もっとうまく泳ぎたいと思うようになった。自分ができない部分を娘に伝えると、それをわかりやすく説明してくれる。
例えば水中は三つのゾーンに分けるそうだ。水面に近いところ、真ん中あたり、底の部分。その真ん中のゾーンを泳ぐと推進力が増すらしい。
確かに娘に言われた通りのことをすると、水中をグンと進むのが体感できる。
体感できたからといって身に付いたのかといえば、決してそうではない。まだまだ初心者の私には毎回同じ泳ぎ方ができないのだ。一つのことができれば、違うことはおろそかになっている。これは何度も繰り返して練習するしか方法はないのであろう。
気が付けば25mを四苦八苦して泳いでいた私が、300mくらいは泳げるようになっていた。運動することが楽しいと感じたのは初めてだ。
 
そして、この気持ちは何かに似ていると気が付いた。
そうだ、ライティングだ。
分かりやすく教えてもらうこと、うまくできた時の喜び、できたと思えば全くできない時が続く情けなさ。そんな時にフィードバックを丁寧に返してもらうことで、できない部分があぶり出される。
娘の教え方が上手だと感じるのは、わかりやすさもそうであるが、フィードバックの丁寧さも素晴らしいのだ。いままではOKとしていた部分でも、次へのステップアップのために、もう少しこんな風にしてみて、と手取り足取り教えてくれる。
 
教えるのがうまいだけのコーチでは、きっとこんな楽しさを味わえなかったであろう。教えることとフィードバックの連動、そして何度も繰り返して練習することで、自分の中に落とし込み、私は楽しさを満喫している。
この歳になって私は素晴らしい趣味を得たようだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-07-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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