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体臭を変えたのは……


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記事:T.AYUMI(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
初めての恋人と聴いた思い出の曲がふと流れると、いくつになっても甘酸っぱさを復習するように心をなぞってくる。あの子との思い出のあのメロディ、思い出すでしょう?同じように、匂いもその時を蘇らせるトリガーになりうるらしい。アルバイト代をはたいて彼へのプレゼントに買った香水ウルトラマリンは、今でもわたしを高校生に戻してしまう。嗅覚は、記憶だ。
 
わたしは匂いに敏感な方だと自覚している。街で好みの香りの人とすれ違えば、ついていきたくなるので、餌でさえあるかもしれない。「彼の何が好きだったの?」と聞かれれば、思わず「香水」と言ってしまいそうな、かつての恋人もいる。
 
さて、ここであなたに問いたい。
 
パートナーの香りは好きですか?
 
 
わたしと今の夫は、付き合うまでに長い時間がかかった。恐れ多い話だが、わたしがなかなかOKできなかったからだ。その理由を順に言えば、体臭は2番目か3番目に挙がってくる。どれだけ優しくても、良い人だと分かっていても、匂いが受け付けられなかった。ちょっと顔を背ける程度ではなく、彼の車に乗ることや彼と狭い部屋にいることが辛くなるほどだった。匂いが鼻につく相手とは、生理的に合わないとTVで聞いたことがある。動物的な感覚なのだそうだ。彼と同じ空間で働く若い女性は、匂いを気にしてないようだったこともあり、私は「匂いが合わないなら彼との関係が先へ進まなくても仕方がない。本能的に合わないんだろう」と思っていた。
 
なんて上から目線の失礼な話なんだ。自分だって朝の口臭は最悪だし体臭もあるはずなのに。そんな失礼すぎる、匂い重視のわたしだったが、彼の体臭を改善するために色々調べると、原因ではないかと思うことがいくつかあった。
 
・睡眠時間の短さ
・体に優しくない食生活
・仕事の過度なストレス
・加齢
 
食事はどうにかなったとしても、仕事の状況が変わらないと仕事のストレスも睡眠時間も改善できない。歳はとる一方だ。彼の匂いは苦手だがそれ以外は基本的には好きだし、ストレスフルな生活をしていることがどことなく不憫にも思え、わたしはヘルシーな食事を作ってあげたり、早めに寝るように促したりと、それとなくトライしてみた。本当に、完全なる余計なお世話なのだが。しかし簡単に改善するはずもない。私は、匂いに捕われない、大きな人間になりたいと思った。
 
あるとき、縁あってカウンセリングとマッサージをセットでしてくれるという体験施術を受けた。体をほぐしながら、心に引っかかっていることを和らげてくれるというものだ。それが心地よかったのでマッサージ好きの彼にも勧め、すぐに彼も施術を受けた。
 
そこに転機があった。
 
彼が施術を受けてから、彼の匂いが変わったのだ。私にとってはあんなに強烈だった匂いなのに。喜びよりも驚きが大きかった。マッサージで何があったんだろうか不思議に思っていると、どうやら先生からこんな話をしたそうだ。
 
『真面目なあなたは「ねばならぬ」王国の住人。周りの期待に応えなければならぬ、もっとがんばらなければならぬ、正しくいなければならぬという風に。自分にさまざまなことを強いて、拳をにぎったように生活しているので、「こうしなきゃ」「こうあるべき」と思った時に、「じゃなくていい」とかぶせて考えてみてはどうでしょう』
 
彼にはこの具体的な提案がありがたかったようで、すぐに日々の中に取り入れてみた。すると、張り詰めていた心の緊張が緩み、徐々に「ねばならぬ」という感覚にとらわれなくなったのだそう。他は何も変わらない生活だったようだ。自分では体臭が減ったことには気づいていなかった。もともと自分の匂いは感じないので無理もない。犬並みの私だけが、この大きな変化を感じていた。
 
体臭が減ったのは、ストレスの逃し方を知ることで心が軽くなった副産物だ。「じゃなくていい」という呪文が、リモコンのボリュームボタンを下げるように心と体に効果覿面だったということだ。匂いがなくなったことはもちろんだが、彼の心が軽くなったことが何より嬉しかった。
 
もちろん動物なので、完全に匂いがなくなるのではない。100だったのが50くらいになった印象だ。仕事の日には体臭は強くなり、週末には弱くなるという傾向も見られた。なんて野生的なのだろうと感心する。本来の人間はこうなのかもしれない。
 
こんな時間や経験を経て、私たちは結婚した。
結婚までいったのは、
匂いがしなくなったからだろうか?
愛が匂いに優ったからだろう?
彼の匂いに慣れたからだろうか?
 
鍵は【素直さ】だったと思う。彼が、わたしの勧めるままにマッサージに行って話を聞き、先生に言われたことを実践した彼の素直さが、匂いを超え、結果として愛が深まった。結婚どころか付き合うことさえ躊躇っていたわたしの人生まで変えた。素直さがいかに大切かを彼に教わった気がする。
 
もちろん匂いに慣れたのも確かだ。それでもやっぱり寝具は毎日洗濯したい。しかし、匂いは思い出のトリガー。もし彼と長期で離れ離れになったとき、彼の匂いの染みついた服か何かに顔をうずめると、今の幸せな日々が一気に、鮮明に、蘇ることになるかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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