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「おまけ」にうれしい驚き、はじめてのヘアドネーション体験記


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Motoko(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「失恋でもしたの?」
 
かつてロングヘアからショートヘアにすると、決まってこう言われたものだ。
たかが失恋で切るかっ!
こころの中で毒づいたのは、もう遠い過去のオハナシ。
 
女優の柴咲コウさんがされたことで一気に広まったヘアドネーション。
病気により髪が抜けた子どもたちに、無償でウィッグを贈る活動をしているNPO法人があることを、このとき、はじめて知った。
ひとつのウィッグを作るには、人毛が10人から15人分必要で、その人毛を個人が寄付する活動がヘアドネーションである。
 
髪を伸ばすだけならば、自分にもできるかも。そう思ったものの、いざやろうとすると、不安や疑問が次から次へとわいてきた。
 
・ヘアカラーした髪や白髪も大丈夫?
・髪に傷みがあっても受け付けてくれる?
・寄付できる髪に年齢制限はある?
 
ネットでこれらの疑問を検索しても、はっきりした答えは見つからない。
かえって、“ヘアドネーション”と入れると、“意味ない”なんて出てきて不安がつのった。
周りに経験者もいないし、あきらめかけていたとき、あるワークショップで彼女と出会った。
 
暑い、暑いと言いながら部屋に入ってきた数分後のことだ。
 
「やっぱり、とっちゃおう」
 
元気よく言って、頭に手をやり、ウィッグを外した。
あらわになった頭は、見惚れるほどにカタチが美しく、磨き抜かれた陶器のように輝いている。
彼女は、無毛症。生まれて間もなく、眉、まつげ、髪、体毛など全身の毛が抜け落ちました、ほほ笑みながら、淡々と話してくれた。
 
彼女ならば、ヘアドネーションについて何か知っているかもしれない。
そう思い、失礼を承知で聞くと、子どもの柔らかな肌には、ちくちくしない人毛のウィッグが必要なこと、人毛不足でウィッグが作れず、待っている子どもがたくさんいることなどを教えてくれた。
 
彼女から聞いた話に背中を押され、残った疑問である髪質は、ヘアドネーションの認定講師資格をもつ美容師さんを、ネットで探して聞くことにした。
長さをそろえてもらいながら、話を伺うと、寄付された髪はすべて加工するため、ヘアカラーも、白髪も、多少の傷みも、まったく問題ないと分かった。
もちろん、いちばん気になっていた年齢制限も、ない。
ドネーションできる長さは、31センチもしくは51センチ以上の2種類。
はじめてなので、ハードルを下げ、31センチに決めた。
 
決めてからは、美しい髪を寄付したくて丁寧にケアをしたり、長い髪を楽しもうと、ヘアアレンジの本を買い、スカーフと一緒に編み込んで華やかにしたり、ワイヤー入りのリボンでまとめたり、できるアレンジを試して思いっきり楽しんだ。
後半は、美容師さんに相談し、右と左、まん中の3パターンの前髪の分け方で雰囲気を変えられるように切ってもらい、なんとか乗り越えることができた。
全体の髪の長さは変えられないけれど、ちょっとした工夫で新たな似合うが見つかるのがとても新鮮でよかった。
 
こうして、伸ばすこと約3年。ヘアドネーションをすると決めてからは、2年と半年。
いよいよ、ドネーションカットをする日が来た。
美容院で当日測ってもらうと、31センチプラス、ゴムで結ぶ数センチの長さがあることが分かり、ほっとする。
ドライヤーや最後の数か月の髪の重さは大変だったけれど、20年ぶりの長い髪、意外と楽しめて良かったな、そう考えていたら、にこにこ顔でハサミを差し出された。
 
「最初のひと束は、ご自身でハサミをいれてみませんか?」
「えっ!いいんですか?」
「もちろん!束の下の方を持つと、切りやすいですよ」
 
大切なハサミを落とさないよう気をつけながら、両手で受け取る。
失敗したらどうしよう?
どきどきどきどき……。なんだか緊張する。
 
言われたとおりにひと束つかみ、ひと息ついてから、そっとハサミを入れた。
思っていたよりも固い感触で、なかなか切れずにちょっと焦る。
 
「大丈夫ですよ、思い切ってどうぞ」
 
やさしく励まされ、指に力を込めながらジョキッ、ジョキッとハサミを動かしていくと、すとんと手に髪の束が落ちる感覚があった。
 
「切ったどー!」
 
安心感と照れくささで、つい手に残った束を高く掲げてしまう。
ほかの束はあっという間に切られ、生まれてはじめてのドネーションカットはこうして終わった。
 
3年ぶりのベリーショートは、見慣れず、そわそわ落ち着かない。
にも関わらず、周りからは大好評でほめそやされ、どんな服を着ても明らかにバランスが良くなった。
髪を切っただけなのに、がらりと見た目が変わり、同じ服を着ても別人に見える。これまでしたどんなイメチェンよりも効果を実感した。
 
また、SNSでヘアドネーションについて書いたところ、たくさんのコメントをいただいた。髪型のことだったり、ヘアドネーションへの賛同もあったし、やりたいけれど挫折しないか不安というお悩みまで、幅広い。
返信をしながら、ヘアドネーションがつなげてくれたご縁に深く感謝した。
 
ヘアドネーションというキャラメルを口に入れたら、思いがけず、うれしい「おまけ」がたくさんついてきた。
新たなヒトとのつながり、ヘアドネーションのホントのところ、自分の新たな似合うへの気づきや続けられる髪のお手入れ方法、いろんな感情の揺さぶりとそれに対する自分の気持ちなど。
そして、1年が経った今、再びヘアドネーションのために髪を伸ばしている。
今度は、どんな「おまけ」がついてくるのか、ちょっぴり期待しながら。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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