この世の終わりみたいに思える生理前をどう過ごすか
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記事:mizu(ライティング・ゼミ12月コース)
電気のスイッチを入れるように突然悲しくなることがある。ケトルのお湯が沸くように沸々と、でも速いスピードでイライラが加速することもある。それが生理前だ。
私はPMS(月経前症候群)という症状に悩まされている。PMSとは生理前10日間ほど続く精神的・身体的な症状のこと。人によって症状はさまざまで、そもそもPMSが全くない人もいれば、日常生活に支障をきたす人もいる。さっきまで和やかにおしゃべりしていた相手が急に不機嫌になったり、思い当たる節もないのに八つ当たりされた経験はないだろうか? 何か失敗をしたわけでもないのに落ち込んでいる様子を見たことは? 相手が生理前だとか生理中だなんて家族くらいしか、もしくは家族であっても正確に把握している人は少ないだろうから、「いったい何?」と思うだろう。もしかすると彼女たちはPMSかもしれない。
生理前・中に腹痛や頭痛があることはよく知られているが、実は精神的症状も同様に辛い。イライラ、情緒不安定、集中力の低下、突然悲しくなるといった症状があって、これらは不思議なことに勝手に湧き上がって止められないのだ。自分で感情をコントロールできないので他人に当たってしまうことも、申し訳ないが多々ある。例えば、親や自分の老後を考え途方に暮れて「もう自分の人生は終わりだ」と思ったり、ちょっとした仕事のアドバイスが自分を否定するように聞こえて「私は嫌われていて仕事もできないんだ」と思ったりする。飛躍しすぎかつ悲観的すぎと思われるだろうが、PMS中は本気で悲しんでいるのだから怖い。もちろん生理さえ終われば嘘みたいに心が晴れやかになり悩んでいた自分の考えや奇行を思い出し笑いするほどだ。
PMS期のせいで、私にとって一か月は長い一日のようだ。生理が近づくにつれて心はダークサイドに堕ちていき、生理が終わるとともに悩みが消え、活力が湧いてくる。しばらくイキイキと過ごせたと思うと、また少しずつ荒んでいく。夜更けから夜明け、日中のサイクルを一か月かけてゆっくり過ごしているみたいだ。
最近気付いたことだが、PMSは「私は今PMSである」と自覚することが楽になる近道だ。このときに最も重要なのが、仲間を見つけること。仲間というのは知り合いという意味ではなく、同じ経験をしている人のことだ。YouTubeやTwitterでPMSを検索すると、自分と同じような症状で悩んでいる人がたくさん出てくる。緩和する方法や解決策を教えてくれるWeb記事はたくさんあるけど、それでは楽にならないし実践しようという気持ちになれない。それよりもYouTubeのコメント欄にある「わかる~!わたしも突然悲しくなって家飛び出したことある(笑)命の母飲むようになってだいぶ改善された」というコメントの方がよっぽど試そうという気になる。そして同士がたくさんいることに安心して初めて「PMSである」ということを自覚できる。そうすれば本来の自分じゃない自分が顔を出しても「これはPMSのせい」と思って客観視できるので少し楽になる。放っておくと悪化しそうだな、と思ったら色々対策をすればいい。
そしてもうひとつ気付いたのは自分をいたわることと甘やかすことの違い。PMS緩和のため自分をいたわることはとても有効だけど、甘やかすと悪化する一方だ。いたわるためにすることは、いつもより長く湯船に浸かるとか入浴剤を入れるとか、寝る前にホットミルクを飲む、ストレッチや適度な運動をするとか簡単なこと。以前の私は、食欲に身を任せてブラックホールみたいな胃袋がいっぱいになるまで暴飲暴食をしたり、ダークサイドに堕ちた心を救おうとせずに気力がなくてできないことから目をそらしていた。でも結局は爆食いした罪悪感や「できない」を繰り返すことでさらに落ち込んでしまう。それをすることで自分の荒んだ心がなめらかになっていくようなことをしなければ意味がないと気付いた。いたわることはお手頃だし簡単だ。「今の私めっちゃ丁寧な暮らししてる!」と自己肯定感もあがる。
生理そのものを終わらせることはできないからPMSとはあと数十年付き合っていかなければならない。今効いている方法もそのうち効かなくなるかもしれないし、次は更年期障害とかもっと辛い時期が待っている。でも、どうしたら楽になれるのか考えるのはちょっと楽しいかもしれない。これをしたらホッとするな、とか、これは心に毒だったな、とか自分を知ることに繋がっている。自分が気持ち良くないことは避けられるし、喜ぶことを増やしていけばハッピーに過ごせる期間がちょっと延びそうだ。最終的にはもっと自分と上手く付き合っていって、一か月が長い一日じゃなくなるといい。夜更けみたいな日があってもいいけどずっと続くのは嫌だし、夜明けのような静かな日や日中のようなキラキラした日が多い方がいい。当分は一日一日を穏やかに過ごすことが目標だ。
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