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暇つぶしの人助け


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:堀部 佳野乃(スピード・ライティング)
 
 
突然だが、みなさんは「サポステ」というものがあるのをご存知だろうか?
正式名称は「若者サポートステーション」で、15歳から49歳までの就労の支援を行っている機関である。
 
支援してくれる主な内容は、臨床心理士やキャリアコンサルタントによる相談やカウンセリング、ハローワーク等を通しての職探し、面接練習、就労体験などである。
病気や、今社会問題になっているひきこもりの人にももちろん対応している。
 
先日、わたしはサポステの繋がりで就労体験に行ってきた。
お菓子作りが趣味で、製菓関係の仕事に興味があり、あるケーキ屋に4日間お世話になった。
 
1日目。
在宅では少し仕事をしていたものの、外で働いたことがなかったわたしはとても緊張していた。
それを見かねたのか、シェフ(この方が店のオーナーである)が
 
「目の前の仕事はきちんと集中してやらないといけないけど、人間関係はラフでいいからね」
 
と笑顔で声をかけてくれた。
その一言で、わたしはとても安心した。
初日の仕事内容は、クッキーに砂糖をまぶしたり、焼き菓子の袋詰めなど。
製菓学生でもなく、外できちんと働いたこともないわたしを信じて、様々な仕事を任せてくれるのがとても嬉しかった。
だからこそ、「その期待に応えたい!」という強い責任感が芽生えた。
 
2日目や3日目はだいぶ仕事内容にも慣れてきて、少し難易度の高い仕事も任せてもらえるようになった。
シェフ以外の従業員の方とも話す機会もあった。
 
ある若い女性のパティシエさんは、幼い頃からパティシエになるのが夢で、現在は製菓学校に通いながら、学校がない日にケーキ屋で働いて修行しているそう。
いずれは自分の店を持ちたいのだとか。
ケーキ屋で働きだしてからは4年経ち、その間に何度も辞めたいと思ったこともあったと聞いた。
その若さで、仕事の面でそのような感情を既に経験していることに尊敬の念を覚えた。
 
またパートで働きに来ている女性の方は、子どもを6人育てながらケーキ屋とコンビニで働いているそう。
ダブルワークできっと多忙なはずだが、家族のために生き生きと働いている姿はとてもかっこよかった。
 
みんなそれぞれ、いろんな思いを抱えながら一生懸命生きているんだなと実感した。
 
そして迎えた体験最終日。
わたしは、体験を始めたころから、絶対にこれだけは聞きたいと思っていたことを質問した。
 
「製菓学生でもなく、むしろ少し複雑な事情を抱えた人も来る可能性があるサポステの就労体験の受け入れを、どうして承諾したのですか?」
 
すると、シェフの答えはシンプルだった。
 
「暇つぶしだよ」
 
わたしはそれを聞いた瞬間、「かっこいい!」と思った。
もっと正義感に溢れた、立派な答えが返ってくると思っていたから、良い意味で裏切られた感じ。
 
でも、シェフのその答えにも納得がいった。
4日間のあいだ、シェフは他の従業員の方と同じようにわたしと接してくれた。
「複雑な事情を抱えているかもしれないから、極力傷つけないように」みたいな変な気遣いがまったく無かったのだ。
そのおかげで、わたしはより実践に近い形で就労体験を行うことができたと思う。
 
後日、サポステの支援員の方にそれを話すと、シェフが就労体験受け入れの登録をしてくれたときのエピソードを聞かせてくれた。
 
サポステの就労体験の受け入れ先は、支援員の方が一軒一軒回って直接お願いしに行くのだという。
かつて支援員の方が、そのケーキ屋にお願いをしに行ったとき、その場でシェフは「考えておきますね」とだけ言ったそう。
その後、支援員の方が店を後にして帰り道を歩いていたとき、シェフが店から出てきて「待ってくださ~い」と走って呼び止めに来たらしい。
 
「受け入れ先の申し込みをさせてください」
 
そこから、サポステとケーキ屋の付き合いが始まったのだった。
 
受け入れ側にも、時間と労力がかかるこの就労体験のプログラム。
わたしもシェフのように「これだ!」と思ったことには、自分の資産を惜しまず、飛び込める人になりたい。
 
話は変わるが、最近友達と話していると、みんな未来に絶望しているような発言ばかり聞くようになった。
 
「就活が嫌すぎる」
 
「一生結婚できなかったどうしよう」
 
大学に行ったことがないわたしは、今の大学生がどのようなことを教えられて、どのような気持ちで過ごしているのかはわからない。
だから、わたしが無知すぎるだけなのかもしれない。
 
だけど、そんな若者たちにわたしは声を大にして言いたい。
 
「世の中、そんな捨てたもんじゃないよ。手を差し伸べてくれる人はいるよ」
 
人間はみんなひとりでは生きていけない。
だから、人に頼っていいと思う。
それは決して恥ずかしいことじゃない。
 
今回の就労体験先の人たちや、サポステの支援員の方たちに直接恩返しはできないかもしれない。
だけど、この先わたしが社会の一員として働けるようになったら、今度はわたしが手を差し伸べる側になって、その意志を繋いでいけばいい。
それが結果的に、お世話になった方たちへの恩返しになると信じている。
 
 
 
 
***
 
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2023-03-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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