今更ながらのアイドル談義
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:辻村 佳代子(ライティング・ゼミ2月コース)
2020年12月31日。国民的アイドルの嵐が解散した。私は病院の待合室についていたテレビで、解散発表の記者会見を見た。それまで、嵐の冠番組を見るでもなく、音楽を聴くこともない、はっきり言うと興味がなかったわけだが、そんな私でもそれなりに衝撃があった。「これまでと違った時間を過ごしたい」という実に人間らしいコメントに、少し興味をそそられた。2年弱の期間をかけて解散に向け活動されている最中に、コロナ禍となった。ファンを思い、コンサートや色々な企画を考えていただろうに、思うようにできないのだろうな……。時々目にする情報番組での彼らを、遠い親戚のような気持ちで見守った。そして、12月31日の解散コンサート。Webでの開催となってしまったが、本当に素晴らしいものだった。リアルでの開催であれば、さすがにこんなにわか応援者はチケット入手を遠慮するが、Webということもありひっそりと参加した。そして、なぜだか大号泣した。
解散後の一人ずつの活動も、少し気になるところであった。大河ドラマへの出演、バラエティ番組やドラマ、映画など、各人が多彩な活動を続けている。その中でも、私がひときわ興味を持ったのは、グループの垣根を越えたYouTubeチャンネルの活動だった。おそらく、事務所でも初めての試みだろう。それを演者であるタレント自ら企画して事務所に説明し、仲間を選んでコンテンツを考え、実行に移す。言ってしまえば、やらなくてもよいようなことを、おそらく「楽しそう」と思って始めたのだろう。そのワクワク感が、画面を通して伝わってくる。参加している他の3人も、おそらく仕事が激務な中でも、撮影では本当に楽しそうに見える。リラックスできるよい人間関係が築けているのだろうな、と勝手な妄想が膨らんでいく。チャンネル登録者数しかり、24時間テレビのパーソナリティへの抜擢など、社会現象にまでなっているように見受ける。もちろん、元々のファンがたくさんいて、知名度もあり、事務所の力もあるのだろうけれど、かっこいいだけではない「素のようなところを見せるアイドルの姿」が社会に受け入れられたのではないだろうか。それまでグループでの活動が主体だった中、いきなり一人での活動になるだけでも大きな変化であるのに、それをもろともせず、それどころかグループではできなかった、一人だからこそできることを自分で見つけ、先見の明をもって活動を続けている姿がセンスの塊だと感じ、尊敬の念を持って見ているのである。
私はこれまで、アイドルのファンというものに一切縁がなかった。多感な中学生時代など、友達は当時下敷きなどのグッズや雑誌の切り抜きなどを持ち寄り、テレビ番組も欠かさず見て休憩時間には楽しそうに盛り上がっていた。私はそんな彼女たちを、楽しそうでいいなとは思ったが、自分もそうなりたいとは思わなかった。当時から少し冷めた子どもだったのかもしれない。アイドルなんて所詮虚構。そんな作り物の世界に、魅力を感じることはない。アイドルは人間的な魅力を見せる人たちではないな。そんなふうに思っていたような気がする。当時から、「人間的な魅力、人間の本来持っている良さ」に価値を感じていたのかもしれない。
人間本来の良さを感じるとは何か。例えば、新鮮なお魚本来の味を味わいたいと思うと、私はやっぱりお刺身が一番だと思う。煮つけでもなく、フライでもない。海鮮丼でも、他のお魚の味が混ざって、十分に味わえない気がする。やっぱりお刺身が、お魚本来の味と新鮮さをダイレクトに味わえるごちそうだ。それでも、ソースたっぷりのフランス料理でも、新鮮なお魚を使って調理する。料理人は、新鮮なお魚を求めて、仕入れをしているはずである。おそらく新鮮なお魚の味を引き立たせるように調理し、ソースの味を決め、目でも味わえるよう、おいしそうに見える盛り付けをしている。すべて計算しつくされたごちそうである。それでも、お魚の味はごまかしが利かない部分で、お料理全体の良し悪しがそこで決まってくるのだ。
アイドルであれ、何であれ、人にはそれぞれの役割があり、世間一般の目にはその役割を果たす姿が映ることが多いのかもしれない。その役割を果たすために、どれだけ真摯に楽しく向き合っているか、その姿で感動を与えることも十分にある。アイドルは虚構ではなく、人に夢を与える役割を十分に果たしているのだ。しかし、そこから魅力のある人間的な部分が垣間見えると、その瞬間人を惹きつける力が倍増するのかもしれない。アイドルとして生き残るのも大変だろうなと、アイドルと言われる人たちを遠い親戚のような気持ちで応援したくなるのである。
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