大の怖がり屋がユニバのハロウィン・ホラーナイトで覚醒した話
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記事:まつもとみう(ライティング・ゼミ2月コース)
「いや、無理、絶対無理だよな?」
私は頭を抱えた。
何も考えずに「楽しそう!行こー!」と承諾した過去の自分を恨んだ。
就職のため関西に引っ越してきて、半年とちょっとの頃。
会社の同期と、ユニバーサルスタジオジャパンのハロウィン・ホラーナイトに行く約束をしてしまったのだが、ホームページをみて血の気が引いた。
え、こんなガチなのか……。
でも、一度行くと言った手前、もう誘いを断ることはできない。
当日までなるべく考えず、心を真っ白にしておこう。
私は考えることを放棄した。
そもそも、私は昔から怖いものは全て避けてきた。
夏になるとなぜか毎年一世を風靡する「本当にあった怖い話」というテレビ番組は、幼少期に一度見てしまった内容を今でも覚えている。
それ以来、音楽を聞くだけでもゾッとするし、CMで流れたら一瞬でチャンネルを変える。
なんなら、ホラー作品のCMを放映するのはほとんど犯罪じゃないかと思っている。
多くの視聴者にトラウマを植え付けているはずだからだ。
ただ、仲の良い同期に言われた、
「同じ階のメンバー4人で、ユニバのホラーナイト行かへん?」
の言葉は一瞬でキラキラと魅力的に響いた。
「え! めっちゃいいじゃん! 行こー!」
0.5秒でそう答えていた。口が勝手に動いていた。
その時の私のホラーナイトの理解といえば、「SNSでよく見る、夜のパークでゲストも一緒に楽しそうに踊るやつ」くらいのものだったのだ。
そして、ユニバに行く日程が決まり、お金を払えば優先的にアトラクションに乗れる魔法のチケット「エクスプレスパス」を買おうということになった。
エクスプレスパスにも種類があるのは知っていたので、ホームページを見に行った時、ホラーナイトの事実に気が付いた。
え、夜のパレードのゾンビ、めちゃくちゃ怖くないか?
なんなら、パレード以外にハロウィンのアトラクションもあって、その世界観はもはやリアルなお化け屋敷では……?
完全に、甘く見ていた。油断した。
ユニバは言っていたじゃないか。「NO LIMIT!」と。
彼らは手加減というものを知らないのだ。
しかし、見栄っ張りの私は、内心ビビりながらも同期の前に出たら少し余裕のあるふりをしてしまう。
すぐ調子に乗り、「これも面白そうじゃん!」などと言い、みんなで話し合った末に、ホラー系アトラクションが3つほど含まれるエクスプレスパスを購入することになった。
そして、楽しみと怖さと半々で迎えた当日。
楽しみにしていたハリーポッターや、マリオのエリアを満喫すると、恐れていたハロウィンのアトラクションの時間になった。
私たちは、お昼ご飯を食べながら怖さを紛らわす方法をグーグルで調べた。
「耳を塞ぐと怖くないらしいよ!」
と友人からアドバイスをもらい、友人と身を寄せ合い、ほぼお化け屋敷へと足を踏み入れたのだ……。
結論から言おう。
ユニバのハロウィンは、めちゃくちゃ楽しかった!
世界観は細かいところまでリアルだし、ゾンビは追いかけてくるし、本当にびっくりする。
だから、ずっと怖くて叫んでいることになる。
これがなんだかやみつきになるのだ。
次々に出てくる怖いものたちに大声でツッコミを入れながら先へ進む。
「ギャー!! 大丈夫、落ち着いて! 落ち着いて!キャーーーーー!」
と悲鳴をあげながら進んで、出口につく頃には、妙な充実感と達成感を得ているのだ。
「ん? なんだか、ホラーって楽しい?」
そして気が付いた。
ユニバの中のホラーは、日常に挟み込まれることのない状況が舞台なのだ。
吸血鬼やゾンビ、フランケンシュタインのような怖いものたちは、日々の暮らしでは会いそうもないものたちだ。
だから、ユニバの中ではたくさん怖がって、叫んでも、家に帰っても後を引く怖さが全くない。
瞬間的に怖さのピークだけを楽しめる。
閉園間近、私は道を歩くリアルゾンビたちを、自ら追いかけていた。
まだまだ怖がりたかった。ゾンビに魅せられ、ゾンビを欲し、求めていた。
園内に溢れるゾンビたちに近づいてしばらく見つめていると、チェーンソーを「ブゥウン」と鳴らして急に近づき、怖がらせてくれる。
「ギャーーーーー!」と言いながら逃げた5秒後には、また次のゾンビを探している。
友人たちが、「電車が混む前に帰ろう」と言っても、私はゾンビに後ろ髪を引かれていた。
大のホラー嫌いだった私は、ユニバのハロウィン・ホラーナイトである種の怖さを克服し、それどころかハマってしまった。
今年のハロウィンも、ぜひまた怖がりに行きたい!
***
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