メディアグランプリ

パリピと過ごした春夏秋冬


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ハタナカ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
私の思う「パリピ」とは飲み会の盛り上げ上手でコミュ力最強で恋バナ大好きで何なら運動部のエースで身内と思った人には優しい、ある意味ヤンキー気質の人だと考えている。
私とは縁遠い、そして決して関わらない人達だと思っていた。
しかし大学の講義で1年間かけてやる実習班の半分が、学科内でもトップクラスのパリピグループのメンバーで構成されてしまった。
 
正直言おう、絶望した。
 
彼らは推薦諸々で奇跡的に国立大学に入れたらしい、言ってしまえば勉強をあまりしてきてない人達で、一方の私は目標の大学が不合格で、間違っても落ちることはないと言われた大学に入ったガリ勉人生なタイプだ。
それまで授業で見かける度、目立つ彼らに関わらないようにしていた。なのにその人達と1年間密に関わらなければならない。
さらに不運なことに女子は私以外で1人しかいなかった。
そしてその女子はオシャレで気立てが良く、またまた私とは縁遠いタイプだった。
 
女子2人、どこにでも溶け込めるタイプの男子2人、パリピ男子4人で構成された班。
間違いなく他のどこよりも濃いメンツだったと思う。
 
実習で集まるようになった当初、まあ当たり前に私は浮いた。
もう1人の女子はパリピグループから話題を振られてもいい感じに返し、一方の私はどうコミュニケーションを取っていいか分からんという扱いだった。
パリピグループのおかげで実習の授業中は賑やかで楽しい。
でも話すとなるとどうしても私も戸惑ってしまい、最初の2ヶ月くらいは本当にしんどかった。
 
気持ちが変わったきっかけは実際に泊りがけの調査に行った時だ。
夜にパリピメンツの1人を含む少人数でしっぽり話す時間があった。多分15分とかその程度時間だったが、一瞬私の話になった。
「いやね、本当失礼やけど、正直言うと最初はなんやこいつって思ってたんよ。でも話してみると色々ちゃんと考えてて、それ以来はちょっと見え方変わったんよ、マジ」
そんな風に思われてたのかと驚き、同時に思ったより認めてもらえていたことに嬉しくなった。
その後は彼のちょっとした悩みの吐露が始まり、大人数の飲み会とかでもみんなちゃんと楽しめてるかずっと気にしてしまう、たまにどうしても1人になりたくてずっとドライブする日がある等々、興味深く聞いていた。お酒も進んでなかなか楽しい時間だった。
 
……しかしお酒が進み過ぎた結果、翌日の朝に車移動で酔ってしまい、私はとうとう吐いてしまった。まだお酒に慣れていない頃で、初めてのお酒の失敗だ。
そして調査から帰ってもしばらく私はそのことで実習メンバーにいじられた。
恥ずかしくて堪らなかったが、悲しいことにその調査の二日間がきっかけで以前よりは打ち解けて実習に対する不安は随分減った。非常に複雑だったが。
 
そして夏休みに入り、ある日パリピのうちの2人から花火に誘われた。
片方が私じゃない方の女子に気があり、良い雰囲気にするのを手伝って欲しいとのことだった。つまり、私は当て馬である。
それが不服かと言えばそんなことは全くなく、むしろこういうデートの手伝いみたいなことは生まれて初めてで、ちょっとドキドキしたくらいだ。私は適当に扱われること前提で向かった。
ところがその予想は外れた。パリピ2人は私も楽しめるよう話に混ぜてくれたし、屋台のご飯も当たり前に奢ってくれた。
これは私を狙っているとかではなく、女子相手なら最低限これくらいはやるというマナーのようなものを感じた。
 
そういえば彼らはずっとそうだった。
私が馴染めなくてもわざと仲間外れにして排除するようなことはない。
お酒の失敗をネタとして延々からかってくるが、ジメっとした嫌なことはしない。
そして当て馬相手にも、たとえ本心では乗り気じゃないとしても、誘ったからには最低限の気遣いはやる。
みんなを盛り上げられるパリピは伊達じゃないな、と素直に思った。
 
そして夏休みが明け、後期の実習からはもうすっかり慣れていた。
彼らとは決して仲良くはなれないけど、お互いが気にせずいられる程よい距離感が分かるようになり、むしろ普通に楽しめていた。
 
さて、そんな日々の中で私にも変化が起きるようになった。一つは自分の格好だ。
それまでの私は華の女子大生から縁遠い、TPOさえ守ってればそれ以上は服装に興味ないタイプだった。何故かというと、私自身も他人の見た目をさほど重要視しないからだ。
たが彼らパリピ男子は女子の服装から体型まで、結構事細かに観察していた。
その時初めて見た目を重要視している人は案外多いと体感として実感し、整えることは不特定多数の人に良い印象を与えるのに必要だと思うようになった。
なので服や髪型、化粧を気にするようになり、以前より随分マシになったなと思っていた頃、パリピの一人に
「何か前と比べて印象変わったよな、いい感じやと思うで」
とさらっと褒められた時は正直嬉しかったし、他意なくこういうことを言えるのが根っからのパリピなんだなと感動すらした。
 
もう一つは他人との関わり方だ。
私は高校3年間、ほぼ固定されたクラスメイトのほぼ同じ人とばかりつるんでいた。
なので大学でコミュ障が大爆発していたのだが、彼らと関わってからは自身の立ち位置と振る舞い方が多少分かるようになった。
何より「あのメンツとすらやっていけるようになったんだ!」というのが大きな自信になった。おかげで大抵の初対面の人も、大勢での飲み会も苦手意識はかなり減った。
 
まだまだ色々あるが、そんな感じで彼らとの時間は色々と得るものがあった。
学科の大きな飲み会はいつも彼らが本領を発揮し、いつも中心となって準備してくれて盛り上げてくれたし、そんな彼らを私は「参加者その1」として凄いなと思っていた。
 
そして2月頃、教授とゼミ生と実習メンバーでちょっとしたアクティビティの為に1泊で遠出した。これは元々実習の最後に行くことが決まっていたものだ。
1日目の夜、もう1人の女子と私はパリピ達4人に部屋でトランプを誘われた。あとの2人の男子も誘ったが、疲れているからゆっくりするとのことで来なかった。
「なんだよ、ノリ悪い奴らやなホント!」
そんなことを言いつつ、私達に
「わざわざありがとな。でももう集まるの最後やろうから、最後にこのメンツで集まりたかったんよ」
我儘に付き合わせてる、といったニュアンスだった。
そして1年前はあれだけ絶望してたのに、もう集まることはなくなることに少しだけ寂しさを感じている自分に驚いた。
 
最後に6人でした1時間程度のトランプの時間は、色々ディープな話が飛び交いつつもやはり楽しかった。
そして実習が終わればほとんどの実習メンバーとは会ったら挨拶程度に言葉を交わすかどうかくらいで、密に関わることはなくなった。
 
決して関わらない人達だという気持ちは今でも変わらない。だけどその気持ちの感じ方はもうマイナスな意味だけではなく、遠い世界を見ているような、でも少しだけその世界を知っていて愛おしさがあるみたいな、そんな気持ちだ。
 
彼らと関わった時間は、大学で学んだ専門的な勉強と同じくらい、私にとって得難い貴重な経験の一つだったと思っている。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2023-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事