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津軽三味線を皆に聞いてほしくなった話

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:安斎 智美(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
これはギターか何かかというのが、津軽三味線の全国コンクールを見た時の最初の感想だった。楽器を楽器で例えるのも難かもしれないが、伝統的なものを見ているというよりも新しい何かを感じた。
 
「津軽三味線のコンクールに行かないか」と知り合いから誘われたのは、1週間前のことだった。会場が家から近く、特に予定もなかったので、「行けますよ」と軽い気持ちで返事をした。津軽三味線は去年青森に行った時に聞いたので、なんとなくこんな感じかなあというイメージはあったが、1曲か2曲程度しか聞いておらず、詳しいことは知らなかった。
 
コンクールの時間は11時から17時ごろまでと長時間に渡るため、「小学生、中学生の部は見なくてもいいのでは」と思っていた。しかし、誘ってくれた知人は長唄の三味線を習っており、興味があるのに悪いかと思い直し、中学生の部から観覧することにした。
 
会場の中に入ると、すでに中学生の部が始まっていた。男の子が懸命に、弦を押さえ、撥を動かしている。それが弦を押さえている指も、弦を動かす指も想像よりも大分早い。ロックバンドのエレキギターをめちゃくちゃ早いスピードで弾いているアーティストを見かけるが、それと同じような凄みを感じた。
「中学生なのに、すごい!」というのと同時に「こんな若い子も一生懸命練習している津軽三味線はきっと無くならないだろうな」と思った。どんな素晴らしい伝統文化でも、継承する人がいなければなくなる。技術が次の世代に着実に渡っていくこと、そして、その人たちがさらに他の人たちに津軽三味線の素晴らしさを伝えていくことで、鎖のように文化が後世に繋がっていく。そんなことをこの中学生たちを見て考えてしまった。
 
飽きるかなあと思った演奏だが、全然飽きずに中学生の部が終了となったため、昼食のために一旦会場を出た。昼食をとりながら、パンフレットをよくよく見ると、なかなかのイケメンが表紙を飾っていた。「モデルを使ってイメージ向上をしているのかな」くらいに思っていたのだが、どうも違うらしい。表紙の右下に小さく書いてあった名前はパンフレット中程にも載っており、記録保持者、つまり、去年の覇者であることがわかった。
伝統芸能や民謡=古い、ダサいは過去の話、全くのステレオタイプであることを改めて認識させられた気がした。イケメンが津軽三味線をやっているとか、なんか新しくて渋くてカッコいいのだ。
彼の演奏も聞いたが、撥の捌きや音程はもちろん完璧で、余裕すら感じる圧巻の演奏だった。単独の公演も行っているらしい。民謡やってるイケメンの漫画があったら読みたい気分になり、調べたら「ましろのおと」という漫画があるらしく、アニメ化もされていたらしい。やはり時代は伝統芸能もしくは民謡×イケメンなのではないだろうか。
 
午後からは高校生以上の一般の部を鑑賞した。中学生よりも緊張感が増している。知人が以前行った民謡居酒屋で働いている方も出ており、その居酒屋で演奏を聞いたことがあったらしい。コンクールで大賞がとれれば、居酒屋での演奏だけでなく、他の演奏機会にもつながる可能性もあるだろうから、自然と力が入るのだろう。小柄な若い女性だったのだが、力強い撥捌きでありつつ、高音でテンポが緩やかになるところでは繊細さを感じさせる演奏だった。津軽三味線は力強さだけではないのである。低いところはボーンという余韻が重なり、重厚感があり、まるで一人で弾いているのではないのではないかというくらい音の広がりを感じる。一方高音のところになると、ヴァイオリンのように一つ一つの音がクリアになり、音が丁寧に紡がれていく。その対比に津軽三味線の面白味があるように思う。
ちなみに、三味線は音程を合わせるのも難しい楽器だそうで、実際、演奏の始めに弦の先に着いている糸巻きを回して音を合わしているらしい姿を見た。合わせると言ってもチューナーなどをつけて音程を合わしてる訳ではないので、自分の勘で整えているのだろう。その勘が狂ってしまっていたら、音程が合わず、おかしな曲となってしまうのだから大変な楽器だ。途方もない数の練習を積み重ねてそういう勘を積み重ねているのだと考えると、音合わせの仕草が尊く見える。
 
一般の部の優勝は、この知人が紹介していた女性だった。来年のコンクールの表紙に掲載されるらしい。きっと、素敵な笑顔で今度は男性たちを魅了することだろう。
 
後日談だが、津軽三味線のコンクールに行ったことを友人に話したところ、「吉田兄弟しか思い浮かばない」という人たちが結構な確率でいた。それだけ、多くの人にイメージを定着させた吉田兄弟の認知度はすごいのだが、吉田兄弟だけでないことをもっと知ってほしい。
切磋琢磨して技術を継承しようとしている若い世代がたくさんいる。優勝した女性が働いていた浅草の民謡酒場では、ほぼ毎日津軽三味線を聞けるらしい。東京でも気軽に触れ合える機会があるので、ぜひ行って三味線の力強くも繊細な音色を体感してみてほしい。
 
 
 
 
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2023-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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