知らなかった! 大人の勉強法
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:工藤洋子(ライティング・ゼミ4月コース)
「もう近ごろは歳を取って記憶力が衰えちゃって……」
とか、
「若い頃はなんでもすぐに記憶できたのに、今はちっとも新しいことが覚えられない」
とお嘆きの大人のみなさん、朗報です!
「大人には大人の勉強法がある」って知ってましたか?
実は「脳の最盛期は50代」らしいのです。
それなら、たいていの社会人のみなさんは当てはまりますよね?
これは最近読んだ『一生頭がよくなり続けるすごい脳の使い方』(加藤俊徳、サンマーク出版、2022)に書いてあったことです。これが本当なら、資格試験に英語の習得、なんでもござれ、となりますよね。
一体どういうことでしょうか?
まずはじめに私たちが考える「記憶力」または「記憶のやり方」は若い時の覚え方で、大人になってからは同じ方法では覚えられない、ということです。若い時の記憶方法は言ってみれば、ゴリ押しの力技。意味がない、と思われる単語の羅列、歴史の年号のかたまりでも、暗記することができました。
しかし、そのやり方はたとえば柔道で技のキレではなく、腕力で相手を投げ飛ばすようなもの。力の上手な使い方、とはけっして言えません。
それに対して大人の記憶法とは、記憶する力だけに頼らずに思考したり、理解したりする力を総合的に使って覚えていきます。つまり、実際に記憶したことを使う場面ではより応用力に富む、ということが言えます。
そう言われると、私にも思い当たることがあります。
たとえば、小学生のときにお気に入りでなぜか暗唱できるほど覚えてしまった『茂吉のねこ』というお話。スラスラとそらんじることができるのは気持ちがいいものですが、
「じゃあ、それでどうするの?」
と問われると、小学生の私は何も答えられなかったと思います。同じように歴史上の偉人の名前でたとえばヴィットーリオ・エマヌエーレ二世とか、「なくようぐいすへいあんきょう」という謎の呪文で覚えた年号とか、理科で出てきたフォッサマグナという名前の何か、とか、そんな風に単語だけ頭にこびりついているものはあっても、さあ、それをどう活用できるの、というと、単に覚えているだけです。
それに対して、大人になってからの記憶には思考すること、理解することが欠かせません。だからなんでもスラスラと覚えていく若い人の記憶力を目の当たりにすると、
「ああ、もう私も年寄りの仲間入りだ」
と愕然としてしまうこともありますが、そうではないのです。
今までの経験や記憶と照らし合わせて、
「なるほど、こういう理由でこの点は重要なのだな」
と理解することが記憶の近道になります。そして一度覚えたことは長期記憶に送られ、他のことにも利用することが可能になるのです。
理解して覚えるのが、一番いい。
私はこのことを経験上よく分かっています。
というのも、私は英語の同時通訳を職業としています。
プロとして仕事をしているわけですから、たとえよく分からないことが話題に出てもそれを一時的にせよ記憶して反対の言語へと訳出しなければなりません。
そのときに内容や背景がよく分かっていることだと、訳すまでに覚えておく労力がとても少なくて済みます。
「そうそう、あれとこれとこれがそれよね」
と言語化しなくても、脳内マッピングで内容を覚えて訳出することができます。ところが知らない内容のことを記憶する、となると、多大なる労力が必要となるばかりか、覚える内容も極めて粗い情報しか頭に留めることができなくなってしまうのです。
これは別に通訳、という二言語間を往き来するときの話だけではありません。
テレビでニュースを見ているときでもその背景情報を知っていればすぐに内容が理解できるでしょうし、もし知らなければ一体何のことだろう、と頭の中がはてなマークで埋め尽くされてしまうだけです。
もしそのニュースでどこか知らない外国の地名が出てきたとしましょう。きっとカタカナで聞いたことのない響きの言葉のはずです。ニュースの内容に何らかの知識が元々あればその部分を理解するのは労力が少なくて済むので、その謎の地名を記憶することに脳内のリソースをより割り当てることができます。ですが、もし背景も分からないニュースを「えっと……?」と逐一追いながら聞いているとしたら、聞いたことのない地名まで覚える余力はきっとないでしょう。
そんな風に理解が進んでいる事柄は記憶しやすく労力は少ない。ところが、理解が及んでいないことは覚えるのに多大なる労力を必要としてしまうのです。さきほどの私の言い方でいうなら、「脳内のリソース」を多く割り当てないと記憶できなくなります。
だからこそ、背景知識や経験などが豊富な大人の方が、記憶力だけに頼って暗記する子どもや若い時よりも、もっともっと頭をよくすることができるんですよ、とこの『すごい脳の使い方』は説明してくれます。
この本では、脳の機能をそれぞれ役割別に「脳番地」という概念を使って説明しています。
「脳番地っていったい何?」
と思われた方は是非この本を読んでみることをお勧めします。
自分の暗記力に辟易している人も、脳科学的にこれからの年代が脳の最盛期なのだ、と「理解」できれば、きっと未来を明るく感じることができると思います。そして是非この定番のセリフを吐いていただきたい。
「まだまだ若いもんには負けんぞ」
本当に負けないのです。
読むしかないでしょう?
***
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