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メディアグランプリ

額縁から見える世界


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鈴木 洋子(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
あっ、額縁の種類が全部違う!
それは、額縁専門店の2階で行われていた企画展で発見した。
 
みなさんは、「額縁専門店」というお店があるのをご存じだろうか?
「額縁」とは、絵や写真などを中に入れて飾る枠のことである。
 
日曜日のある日、春の陽気に誘われて、買い物帰りにいつもと違う道を通って、街を散策していた。通りがかったお店の屋根に「額縁専門店」の文字を見つけた。以前、地元密着の情報番組で取材をされていて、気になっていたお店だった。
 
その番組では、番組の「格言」を書いた「書」を飾るため、額縁専門店の方が選んだ額縁の候補3点の中から、出演者が1点を選んでいた。私だったらどの額縁がいいか考えながら観ていたのだが、私とその出演者が選んだ額縁は違うものだった。額縁に書を入れてセットに飾ってみると、その額縁は主張しすぎず適度に「書」を引き立て、でも風格があり、番組の雰囲気になじんでいた。感性は人それぞれだが、違う考えの人が選んだ額縁に飾られた書というのも、新たな世界観が広がっておもしろいなと思った。「額縁」を選ぶということは、今まで額縁の存在を意識したことのなかった私には新鮮だった。そして、「額縁」だけで商売が成り立つんだろうか、と不思議に思った。
 
お店の入り口に、企画展の紹介ポスターが貼られていた。
「Artrooming Market」、部屋に飾れる絵画を探して買える企画店、と副題がついていた。
2階に展示スペースがあり、スタッフの方に聞くと、200人のアーティストにポストカードサイズの絵を描いてもらい、飾っているとのことだった。
 
2階に上がってみると、壁一面に絵が飾られていた。コの字型の壁面に、縦5点×40列の絵が並んでいる。
まず1点1点の絵を観ながら、一周してみた。「この絵、好きだな」とか「斬新な絵だな」とか、それぞれのアーティストの個性を感じながら観ていて、最後から5列目の絵を観て気づいた。絵、正確には、絵の周りを取り囲んでいる額縁に目が行った。レンガ風の茶色のブロックが連なっているような印象的な額縁だった。その中に飾られた絵は、擬人化されたクマがおいしそうにクッキーを食べているイラストだった。イラストと額縁の雰囲気が合っていて、相乗効果でメルヘンな世界観に引き込まれ、楽しい気分になる絵だった。
今まで、絵に注目して観ていたのだが、そこで初めて、全ての絵の周りを囲んでいる額縁がそれぞれ違うことに気づいた。
 
スタッフの方に、額縁はどのようにして決めているのか、と尋ねた。
すると、アーティストが「こんなイメージの額縁がいい」と希望を伝え、額縁専門店の方が2点、額縁の候補をアーティストに提示して、最終的にアーティストが絵の雰囲気に合った額縁を決定し、飾っているとのことだった。
 
額縁の説明を聞いた後、改めて、順路の始めから見直してみた。
2週目、次は、絵と額縁の組み合わせに注目して観た。そこには、額縁という窓から、1週目とは全く違った世界が広がっていた。絵の色合いに合わせた同系色のもの、反対色を使ってあるもの、光沢のあるもの、彫刻が施してあるもの、様々な額縁があった。
絵と額縁を一体として観てみると、絵のイメージがより鮮明に浮かび上がってくるような気がした。
 
そのあと、どんな額縁があるのか、と1階の販売コーナーを一周した。そのとき、70代ぐらいの女性のお客さんがお店に入ってこられ、「この証書を飾る額縁を探している」と店員さんに相談していた。そのお客さんは、近所の額縁屋さんが閉店になってしまい、店主からこの額縁店を紹介されて、電車を乗り継いで来た、と話されていた。きっとその証書はそのお客さんにとって大切なもので、その証書に似合う額縁で飾りたいという気持ちで来られたのだろう。
その後も、美術学校に通われている学生さん、趣味でイラストを描いている人など、何人かが額縁を選んで購入されていた。
 
額縁店というのは、電車の運転手さんのようだ。お客さんの思いをくみ取り、お客さんの思い入れのあるものにふさわしい額縁を一緒に選んで、書やアートの世界を広げてくれる。お客さんの理想に、プロとしての視点を追加して、新しい窓を提案してくれる。
 
その後、額縁店を出て、お昼ご飯を食べようと、通りがかった洋食屋さんに入った。洋食屋さんには、海外の街の風景写真が5点ほど飾られていた。全て、白色のシンプルな額縁で統一されていて、お店の雰囲気と合っていた。料理も、風景写真やお店の世界観と一体となって、さらにおいしく感じられた。
 
今まで、色々な美術館やお店に行って、無数のアート作品に触れる機会があったが、アート作品だけを観ていて、額縁を意識したことがなかった。
「額縁専門店」との出会いを通じて、アート作品自体、額縁との組み合わせ、空間全体のコンセプトを意識して観ることで、アート作品を様々な角度から鑑賞する奥深さを教わった。今後、「額縁」という窓から、新たな世界が広がっていくことが楽しみである。
 
 
 
 
***
 
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2023-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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