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閻魔様への、3つの訴え


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:mopa(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「お客様、おカバンの中身を拝見させていただいても、よろしいでしょうか?」
 
皆さんは、このセリフを面と向かって言われたことがありますか?
私は、あります。
 
会計が済んでいない商品が、カバンの中に入っていないか、確かめさせて欲しい、と。
 
雑貨屋さんで会計をしている最中、
いつのまにか隣に立っていた女性に、
にこやかで、とても丁寧に、声をかけられたのでした。
 
肩からかけたショルダーバックとは別に、かごバックを傍らに置いていました。
涼やかな、くすんだグリーンで、コロンとした形に編まれた、趣のあるバックです。
「おカバン」なんて呼ぶほどじゃ、ないですが、大切に使っているもの。
そのかごバックには、だけどフタがない。
パッと、物を入れてしまいやすいカバン、と言われたら、確かにそうです。
 
もちろん、潔白です。
それは、中身を見ていただければ、一目瞭然。
ハンカチとムヒだけ。
どうぞ。いいですよ。
 
女性は、そうしてカバンの中身を検めた後、なおも言いました。
 
「そちらは……」
手のひらを、私の左腕にぶら下がった紙袋に、指し向けている。
これは、さっき別のお店で買ったばかりの、帽子が入っている紙袋。
お店のお姉さんがテープで封をし、丁寧に両手で手渡してくれたものです。
これには、さすがに不快が胸を刺しました。
この封印を、あなたが開ける? なぜ?
おそらく、私の眉間には、様々な感情が浮かんで見えていたことでしょう。
(眼ぢからは、強いタイプ)
女性はそれ以上を求めず、口を濁して、辞退をされたのでした。
今思えば、いっそ確かめてもらったほうが、お互いにスッキリしたのかもしれません。
かもしれませんが……。
そうしていたとしても、
モヤモヤしないわけにはいかなかったと思います……。
 
どうして、声をかけようと決めたの?
いったい、なにが目に見えたの?
私、そんな風に見えてるの?
 
お店を後にしてからしばらく、それはそれは、モヤモヤして過ごしました。
 
誤解ですし。
ぬれぎぬですし。
けっこう、傷つくし。
 
さて、こんな時、皆さんだったら、どうしますか?
 
晴れないモヤモヤを、心から取り除きたい時、私がとる行動は、だいたいこの3つです。
 
① パアッと、お空に鬱憤を放つようにして、忘れる
② お酒と共に、友人に楽しく話して忘れる
③ 閻魔様に訴える
 
ここからは、3つ目の、「閻魔様に訴える」について、
もう少し深く考えてみたいと思いマス。はい。
 
「閻魔(えんま)様」というのは、説明に及ばず。
地獄の門の前で、腕組みをして睨みをきかしている、あの方です。
生前の悪行と善行を検めて
 
「こやつを地獄へ送ってやろうか、はたまた、天国か」と、
 
判別しておられます。
 
人の一生分について、書き留めた帳面のことを「閻魔帳」と呼び、
本人が忘れていたことからなにから、
すべての一挙手一投足が、記録されているんだそう。
 
嘆願 A
「閻魔さま!
あの人は、私のことを窃盗犯だと疑いました!」
 
相手を指差して、言いつける私。
 
もしくは、
嘆願 B
「閻魔さま!
私は、無実の罪で疑われ怪しまれ、カバンの中身を検められましたが、
まったくの誤解です! 潔白です!」
 
ひざまずき、指を揃えて、下から見上げる姿勢で、身の潔白を訴える、私。
 
実際のところ、AでもBでも、スッキリはしません。
心のモヤモヤを晴らすためには、もう一歩、深い理解が必要なのです。
 
ここで、”閻魔様にまつわる解釈”について、ご紹介させてください。
 
これは、360度、全方位的に応用可能な最終手段となる解釈で、効果テキメン。
 
その考え方とは。
 
 
閻魔様という存在は、じつは、自分の胸におられるそうなんです。
 
地獄の門の前にお座りですが、
そこは天ではありません。
 
私達自身の胸に住まわれ、すべての諸行を観ておられます。
 
誰が見ていなくても、
自身の行い、すべてを共に目にし、
それが良心からしたことなのか、
または、
悪心からなのかを、黙って観ておられます。
 
もし、その行いが、一見は悪行に見えたとしても、
やむを得ない事情や
前後の流れ、背景すらも、すべて見通す力をお持ちのため、
公平で間違いのない、完璧な判断を下すことができます。
 
そこで重要視されるのは、他なりません。
誰かのために、思い遣りをかけたのかどうか、です。
 
つまり、自分の内側にある”良心”そのものが閻魔様なんだそうです。
 
さて。
これを踏まえ、改めて考えてみます。
 
嘆願Aのように、相手の間違いを言いつけることは、かえって自分を貶めます。
だから、
罪名「告げ口した罪」で、地獄行き。
 
嘆願Bではまだ、中途半端。
ゆえに、
罪名「いつまでもモヤモヤを引きずった罪」で、地獄行き。
 
 
おそらく、
あのお店は、減らない万引きに手を焼いていて、
Gメンが立たなくてはならないほどの、状況だったのでしょう。
 
そこへやってきた
・妙に目立つ(よくいわれる)
・目付きの悪い(マスクのせいでメガネが曇るから、はずしていた)
・中年の痩せた女性が(これは、本当)
・フタのない、くすんだ色のくたびれたバック(手編みなんです)
を持ってウロウロしている。
 
そして
・背が小さいため、他のお客よりも手元が見えにくく
・触ったものを、カバンの中にポイと入れた、ように見えた、気がした、
のかもしれません。
 
これを鑑みて、渾身の訴えです。
 
嘆願 C
「閻魔さま!
私は、無実です。
 
ただし、
無闇に周囲を
悪い目つきで睨まないよう、ちゃんとメガネをかけなければ、いけませんでした。
そして、
混んだ店内に入る時は、かごバックにハンカチなどでフタをして、ポッカリ開けたままにしないよう、気をつけなくてはいけませんでした。
また、
小さな小物を買う時には、必ず店内備え付けのカゴを持ち、誤解を与えないよう配慮します。
 
私は、相手に対して、思慮深い態度をとれていたでしょうか?
心中の不愉快を、ぶつけてはいなかったでしょうか?
 
紙袋の件については、
自分の手で封を開け、ニッコリと笑顔で見せて差し上げられたら、100点満点だったことでしょう。
でも、自分の胸に沸いた不愉快も、無視せずに尊重しました。
 
今の私にできる、等身大でリアルな行いです。
相手のために、さらなる誠意を差し出せるようになることは、今後の課題とします。
 
どうぞ、ご判断くださいませ!」
 
ゼーゼー。
血走る目で息を整える、私。
 
 
これでいかがでしょうか。
ここまでしっかりと伝えられたら、
なんかもう、
どうでもよくなっていたりするんですよね。
 
さて閻魔様は、どんなご判断を下されるのでしょうか。
 
それは、三途の川を渡った後の、お楽しみです。
 
 
 
 
***
 
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2023-06-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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