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男が四十過ぎに青あざ=太田母斑を消した理由

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:イシヤマ(ライティング・ゼミスピード通信コース)
 
 
太田母斑(おおたぼはん)をご存知でしょうか?
顔、特に額や目の周り、頬などにできる青あざ(痣)や茶色い斑点のことです。メラノサイトという色素細胞が増殖して、生成するメラニンが増えて青や茶色い痣として現れるものということです。
生まれてすぐに現れるタイプと思春期ごろに現れるタイプの2つがあり、男女比では女性に多いそうです。黄色人種に多いとされていて、割合は数百人に1人だそうです。
 
私(現在50代前半男)は物心がついた頃から左目の周りに青あざがありました。
子どもの顔に青あざがあるとどうなるか?
はい、シンプルにいじめに遭うのです。日本の子どもは「普通でないもの」に敏感ですからね。
「なんでここ青いの?」
は基本のキ。だいたいからかわれます。
 
気にするなー、無視しなさいー
 
普通はそう言うでしょうね。私も今、目の前にそういう子がいたら気にするなと言うと思います。しかし、繰り返し言われ続けた上に理由もなく見下した態度を取られた幼かった頃の私はどうしたか?
 
おもちゃのスコップ持ってからかった子を追い回してボコボコにしたわけです。子どもの力ですから大怪我にはなりませんし、やられたらやり返せの時代なので多くの場合は先生に怒られて終了でした。しかし次の日になったら、からかわれて追い回しての繰り返し。ケンカしないで帰った日ってあったかな?
 
痣のことでつらくなると、母に
「医者に行って痣取りの手術してほしい」
と泣いたこともあります。親になって思いますが、母も辛かったと思います。
 
もう少し大きくなっても、青あざのことを話題にされることはありました。ケンカしていないのに「ケンカに負けた子」の扱いを受けたこともありました。優しく聞いてくれる人には気を遣って無理やり笑い話に変えようとしてスベっていました。幼少期の記憶も影響してポジティブに転換するのは難しかったように思います。
 
さすがに三十代になると周りも気にしないか、わざわざ触れてこないことが普通になりました。時々触れてくる人もいますが、悪気はないので気にならなかったし、それでもイジってくる人もいましたが、スコップ持って追いかけない代わりに心の中でバカにしていました。いい歳してなにやってんだって。
ただ、35歳で結婚式を挙げたときには、美容師さんにメイクをお願いしました。事情を知らない妻の関係者に詮索されたくなかったのです。それを除いては特に痣を気にすることも少なくなっていました。
 
にもかかわらず、どうして四十過ぎになってから治療を決断したのか?
 
1つ目は、経営している会社で幹部社員が辞める際にトラブルがあって会社が倒産寸前に追い込まれてしまって何か変えたくなったこと。
2つ目は、初めて営業セミナーを受講して、見た目や立ち居振る舞いが大事だと言われたこと(痣を消せとは言われていませんが、そこは自己判断)。
3つ目に、生まれたばかりの息子がこれから大きくなって、こども園の送り迎えや親の集まりで痣を見た他の子どもや親御さんから詮索されることで息子に負担をかけたくなかったこと。
 
もっとも大きな理由は息子でした。自分のことでもないのに他人からとやかく言われたくないだろうなと思ったのです。
 
思い立ったら病院探しです。レーザー治療のできる皮膚科医を探しました。
 
最初に受診したのは知人に紹介された開業医。お年寄りの院長は気難しい人で
「レーザーの試運転で上手くいかなかったときや雨の日はちゃんと動かないので云々」
と機械の調子が安定しないことを説明されて、その日は帰ったのですが段々と不安になり、日を改めようと電話したら院長が電話口に出るなり
「止めるの?」
この一言でやる気ねえんだなと判断して、ここでの治療は中止に。
 
2件目は先ほどとは別の開業医から紹介状をもらって受診した総合病院。なんとレーザー治療をやめていました。機械の管理が難しいとのことでした。とほほい。さらに、代わりに提案されたのが1件目の医者。即座に却下したら
「やっぱり感じ悪かったですか……」
知っているならお勧めしないでくれ。
少し離れた大病院に紹介状を書いてもらいました。
 
3件目の大病院は診察医の先生が丁寧に説明してくださり、安心して任せることができました。
 
レーザー治療でなぜ痣が消えるのか? 痣の色素がレーザーの熱を吸収して細胞が破壊されるから、だそうです。なお壊れた細胞はリンパ球が食べてくれるとのこと。
 
治療そのものは、とりあえず痛いです。一発なら我慢できるのですが、二発、三発続くと痛さと熱さが蓄積されて我慢できなくなります。なので、局所麻酔を打ってもらっていました。まぶたにも痣があったので、眼球を保護するためのコンタクトレンズのようなカバーを入れるのですが、それでも光が入ってきます。目の前で花火が爆発してるようで、悪影響はなかったものの毎回怖かった。
レーザーの強さは、治療した先生いわく「色素が皮膚の中で爆発するくらいの強さじゃないと細胞は壊れない」だそうで、治療後はホントに殴られたのかってくらい腫れ上がっていました。
 
治療を始めて2~3ヶ月おきに6回、約2年経ったころに診察医の先生から
「もういいと思いますよ。これ以上やると白く抜けてしまいます」
と話があり
「先生、少し茶色いシミが残っています」
と聞くと
「レーザー治療後は日焼けしやすいから日焼け止めしてもらっていたけど、それでも少し焼けたようだからお薬出しておきます」
ハイドロキノンという強い薬をもらって、3週間ほどでシミのようなものが消えて治療終了となりました。なお、治療期間には個人差があります
 
それから、7年が過ぎました。
 
中学生の頃、からかわれることを悩んで相談した担任教師からこんなことを言われました。
 
「人にどう見られようと関係ない、自分らしく、堂々と生きろ」
 
先生、それは理想です。生まれつきの痣なんて物語がないし、自虐ネタとしても弱すぎるし、こうしてまとまった形にしないと話も広がりません。大人になると何も言われない代わりに誤解されたままも珍しくありません。
痣があったままでは前向きになりたくても足を引っ張られてしまいます。
無くせるものなら無くしてしまった方がいいのです。
 
今、少し前の私を知る人からも痣の話題が出ることがなくなりました。当然ですが、息子も私に痣があったことを知りません。
2年の年月と健康保険適用で6~7万のお金がかかりましたが、その価値はあったと思います。
 
人生が変わったり前向きになったりしたわけではありませんが、今はとても快適です。
 
 
 
 
***
 
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2023-06-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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