メディアグランプリ

月と飛行機と大仏と


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小川りか(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「もう少し時間あるし、どっかまわる?」
午後3時前でお寺もまだ観光できる時間ではあった。朝から西国三十三か所の一寺「槙尾山 施福寺」をお参りしてきた帰り道の車中の会話だ。
最近では、なぜかいつも私の車で主人と出かけることが多いので、私が運転席から、主人にそう言葉をかけた。
 
「こっからやと、壺阪寺行ける?」
行けるなら行ってしまいたいという願望と焦りが、その言葉の語尾から感じ取れた。
「たぶん、間に合うと思うけど」
そう言いつつ、ナビ代わりのグーグルマップに入力してみた。閉門30分前には到着予定と出た。
「大丈夫そうやで。じゃぁ、行く?」
「うん! 御朱印ゲットしよ!」
いや、ゲットって、ポケモン違うやろ? と思ったが、あながち全く違うわけでもないなと、妙に納得をして向かうことにした。
 
さて、壷阪寺に着いたのが、午後4時20分だった。
ほぼ予定通りではあるが、急いでまわらないと、5時の閉門までゆっくりはしていられない。それに来たからには、境内をぐるっと回らないと気が済まないので、自然と早足になった。とはいえ、先ほどの施福寺の山道を歩いた後なので、私の膝はもう歩きたくない! と駄々をこねはじめていた。
 
「あの……。 私を待ってなくていいよ。行きたいとこ見ておいでや」
と、主人を促すと、すたすたと喜んで歩きだした。そして、大石仏があるらしく、少年のように喜んで階段を駆け上がっていった。私のほうが、10歳も若いはずなのに、日ごろの運動不足で、歳の差が逆転しとるがな……。と、ひとりでプッと笑ってしまった。
 
数分遅れて、私のペースで石仏のほうにゆっくり歩みを進めた。そもそも、石仏って大づくりな感じで、私はそんなに好きではない。でも、その石仏は、白く滑らかなシルエットが、バックの清々しいほどの青空によく映えて、きれいやな、と声が出た。
 
せっかくここまで来たのだから、と見上げながら数枚撮った。
よく見ると近くに月が出ていて、構図的にも一緒に取れば、ご利益マシマシな感じがして、何枚か撮った。今日は天気も恵まれ、2つの寺院をまわることもできて、充実感と達成感で5時の閉門を後にした。
そこまでは、予定以上の完璧だったのだが、如何せんGWの最中。帰路は案の定、渋滞に巻き込まれることになった。
こうなると、どんなに素敵なところで、素晴らしい時間を過ごしても、その有難みを享受することはできなくなる。「プラスマイナスゼロ」の世界観の表出だ。
やっぱりかぁ。半分は覚悟していたが、渋滞は嫌いだ。特に奈良の渋滞は、抜け道がないから、苦手だ。
 
そうこうしながら、家に着くと、撮り貯めた写真を確認した。
天気も良かったし、山の木々や足元の草花など、寺以外の自然のシチュエーションも完璧と言いたくなるくらいだった。
 
あれ? これなんだ?
 
例の石仏に、何やら映り込んでいるものがある。
 
飛行機?
そうだ、ジェット機が空の中に映り込んでいた。月は、その場で確認できたが、飛行機は光の加減もあって、それと知らずに撮っていたようだ。
 
しばしまじまじと眺めた。
明るい空にかかる月と ジェットから吐き出された雲と そんなことは気にも留めない石仏の表情が、なんだか語り掛けてくるようでもあった。
 
昼間の月か、と思った瞬間浮かんできたのは『金子みすゞ』の詩の一節だ。
夜は星が見えないことを書いた詩で
「夜のお星は目に見えぬ 見えぬものでもあるんだよ」
この詩を読んだ時の、「当たり前の事実を見ていれば、その裏側の有り様も知ることができる」という感覚は大切だと思っている。
 
この3つが並んで写真におさまっているさまは、空間のマクロ的拡がりにも通じた。目の前の石仏から、空を飛ぶ飛行機、そして大気圏外、宇宙空間の月。この広がり様が、自分の目の前で明らかに可視化されている。
そして、すべてはタイミングとして奇跡にも近い確率で、この場所にこの時間に来たからこそであるには違いなかった。
 
ここに、存在して一つの空間の中でつながりをもっている月と飛行機と大仏は、ココに「在る」ことで「見えなくても在る」ことのつながりを表している気がしてならないのだった。
 
『金子みすゞ』のいう「見えぬものでもあるんだよ」の世界観と「目の前に見えているものはそこにあるんだよ」の共存する空間。
そうか……。
全てはバランスで陰と陽なのだ。あるけど見えないものを意識すると、目の前にあることの意味を考えようとする。そう、バランスなんだな。
 
有ることと無いことは、もちろん一緒ではないことはわかっている。
でも見えないことを無いものにしていることって、生活の中にもいっぱいあるんだろうなと感じた一枚になった。
 
そう思うと、在ることを知ると、見えないことが怖くなくなるから不思議だ。
そうだ、まだ社会から見えていない私でも、ここにいることに間違いはない。だから、見えないからといってそこに居ないわけじゃないのだから、自信をもってやればいいと励ましてもらったような気さえした。
 
時間の偶然と空間の拡がりが見せてくれた記念すべき一枚の写真はスマホの中で私の待ち受け画面になった。
 
 
 
 
***
 
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2023-07-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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