メディアグランプリ

お別れの儀式


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:吉村奈緒子(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
大叔母が死んだ。
 
母から連絡があり、仕事を調整してお通夜に参加したのが数日前。
亡くなったとはいえ、95歳の大往生である。
来るべきときが来たな、というのが正直な感想で、悲しくはあるが悲壮感はない。
私以外の参加者もそうだったのであろう、こじんまりと開かれたお通夜はどこかのんびりとした雰囲気が漂っていた。
 
大叔母は家族に見守られながら、すっと眠るように息を引き取ったらしい。
危ないという連絡を受けて駆けつけた母を待っていたかのように、到着して10分ほどであの世へ旅立ったと聞いた。
大好きな大叔母の死に目に会うことができた母も、悲しみつつもどこか満足そうだった。
 
大叔母の、ある意味完璧とも言える通夜に参加しながら、私はぼんやりと2年前に亡くなった叔父のことを思い出していた。
コロナ禍で亡くなった、かわいがってくれていた北海道の叔父のことを。
 
叔父は、姪である私をかわいがり、東京まで会いにきたり、北海道の幸を送ってくれた。
普段は寡黙だが、お酒が入ると陽気になり、私や私の夫と一緒に飲むのが一番楽しいんだ、などと笑うチャーミングな人だった。
 
そんな叔父が突然亡くなった。
なのに、私は葬儀にも行けなかったし、亡くなったことも少し後になってから聞いた。
 
それは私が手術のために入院をしていた時だったからだ。手術前の私を動揺させないよう、両親も夫も妹たちも、私の耳に入れないようにしてくれていた。
なので私が知ったときには、通夜も葬儀も、すべて終わったタイミングだった。
 
当時は2021年6月。コロナ禍真っ只中で、会社的にも世の中的にも他都道府県に行くことがタブー視されていたタイミング。入院していなかったとしても行けたかどうかは分からない。
葬儀も限られた人のみでひっそりと行うしかなかったし、妹たちも行けずに両親のみが北海道へ行き、叔父を見送った。
 
実は叔父が亡くなる1ヶ月前に、私は法事で上京した叔父と顔を合わせていた。ただ入院を控えていて余裕もなかったし、「また夏に来るよ」という叔父の言葉に甘え、「じゃあ、その時にまたね」と、簡単に別れてしまった。
まさかその1ヶ月後に叔父が倒れて亡くなるなんて思ってもいなかったから。
 
どうしてあんなに雑な別れ方をしちゃったんだろう。
あの日、早く帰ったりせずにもっと一緒にいればよかった。
何度も北海道に遊びに来いと言われていたのに、なんで行かなかったんだろう。
あんなにかわいがってくれたのに、何もしてあげられなかった。
なんで。
なんで。
 
私はまだ「あの時こうしていれば」という後悔に囚われている。
そして叔父の葬儀に出れなかったことも、少し影響している気がするのだ。
 
宗教や宗派により葬儀のスタイルは様々だが、共通しているのは故人のことを思いながら語り合う時間を持てるところだ。
あの人はこうだった、こんなことがあったね、などと話しながら準備をしたり、親族同士でお酒を飲んだりする。自分の知らない故人のエピソードを聞いて、新鮮な気持ちになったりもする。
そうやって久しぶりに会う家族や親族と泣いたり笑ったりしながら語り合い、心の整理をつけるための準備をするのだ。
 
大事な人の死を予め覚悟できていたのかそうでないのかによって、遺族の心情が違うことは百も承知だが、突然亡くなった叔父のために北海道に行けていたら、そして叔父の顔を見て手を合わせ、親族たちと見送ることができていたなら、「叔父のために何もできなかった」という気持ちが少しは緩和されたんじゃないか、なんて思ってしまうのだ。
 
実際、コロナ禍で十分な看取りや葬儀が行えなかったことで後悔を感じる「弔い不足」という現象があるらしい。葬儀に参列したくても叶わなかったケースなどで、亡き人への心残りを抱えたままの人は多いという。
特に新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになった方については、入院中も死亡後も対面を許されないままにお別れをしなければならなかった。そのご遺族の心中は察するに余りある。
 
通夜や葬儀というものは、残された者たちがその後、強く生きていくための儀式なのだなと、改めて思う。一つの区切りとして、きちんとお別れをし、気持ちを共有しあう場なのだ。
 
大切な人には会える時に会っておく、そして万が一のことがあった場合にはできる限り通夜や葬儀に参加する。もしそれも難しい場合には、改めてどこかで周囲の方たちと故人を偲び、語り合う機会を持ってほしいと思う。
それは誰よりも自分の心を守るために。
 
幸いにも私はそれができる環境にいて、たまに母や妹たちとポツポツと叔父の話をする。
思い出すと今も涙が溢れてきたりもするが、時間とともに少しずつ癒えてきているのを感じる。
 
どんなに努力をしたとしても、大切な人を亡くした時には多かれ少なかれ後悔は残ってしまうのかもしれない。
それでもその心残りが少なくて済むように、大切な人たちと関わっていきたいと思う。
それを教えてくれた大叔母と叔父に、私は感謝している。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2023-07-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事