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“せんべろの街”の丁寧な暮らし


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:塚本 牧生(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「入院したり顔面神経麻痺になるやつじゃないの?!」
 
背中にできものがあるなと思って皮膚科に行き、帯状疱疹と診断された。電話でそう話したら、真剣な調子でこう返ってきたので、こちらがたじろいだ。そんな大変なものだとは、まったく思ってなかった。
 
「いや、薬飲めば1週間ぐらいで治るだろうって……」
 
僕はそう聞いて帰ってきたのだ。でも帯状疱疹はそういうものらしい。治療開始の目安は発疹から3日程度。遅れて悪化すると入院治療となり、神経まで傷むと後遺症が残りやすい。たまたま、僕はすぐに皮膚科に行った。かかりつけの皮膚科が自宅から5分の距離にあり、僕は在宅勤務で、気づいたその日の昼休みに受診できた。幸運だった。
 
同じようなことは数年前にもあった。朝起きて、耳の聞こえ方がおかしいことに気づいた。右耳が聞こえない。左耳もわずかにしか聞こえない。前月に見た友達のSNS投稿で、突発性難聴の治療は発症から48時間が重要と知っていた。耳鼻科も自宅から5分、横断歩道を一回渡るだけのところにあった。この時も幸運に恵まれていた。
 
そんな話をすると「なんでも近くにありますね」と言われそうだけど、幸運にもなんでもあるのだ。やはり徒歩5分の距離に総合病院があって、年次の健康診断などでお世話になる。徒歩10分の距離に、MRIなども撮れるさらに大きな総合病院があって、頭痛外来などでお世話になっている。今年は不本意ながら、これも徒歩5分の生活習慣病を専門とする内科にも通い始めた。
 
“せんべろの街”赤羽。僕は引っ越してきた20年前ぐらい前、お酒は二杯ぐらいという程度だった。誰かと飲みには行くけど、一人飲みや自宅で晩酌はしない系。それもいつの間にか一杯までになり、「飲むと頭が痛くタチで」となった。そんな風にお酒と縁が切れてしまったいまも、僕はこの「なんでも近くにある」街を離れられない。
 
赤羽駅はJRの4路線が乗入れる一大乗換駅だ。一人暮らしを始める時、まず通勤しやすさにはこだわりたいと思った。当時の勤め先だと、勤務地は埼京線か京浜東北線。それで両方が乗り入れている赤羽を選んだ。赤羽岩淵駅もつかえば二駅6路線。都内外勤はもちろん、東京や大宮駅経由の旅行や出張もスムーズで、本当に交通の便がいい。
 
それでもう決めたようなものだったけど、不動産屋さんに「スーパーとか多くて食料品の安い街ですよ」と言われたのも後押しになった。衣食住で言えばもう一つ、家賃相場や住宅相場も23区の中では低い方。それなら予定していた住宅費用で、駅前も選択肢に入ってくる。とことん通勤にこだわろうと、駅近徒歩5分みたいな住まいを選んだ。
 
左党(酒好き)なら泥酔しても帰れて天国みたいだけど、呑まない下戸の住む場所じゃない。夕涼みとばかりに窓を開けると、夜風と一緒に酔ったゴキゲンな歌い声とか、フキゲンな怒鳴り声が入ってくることもある。道を歩けば客引きが煩わしい。朝から飲める街とも言われ、土用の丑の日となれば朝9時前から鰻を焼く香りがして、出勤意欲を鈍らせる。
 
赤羽駅近に住むとはそういうことだ。通勤のストレスのなさを最優先して、住環境の良し悪しは捨てたつもりだった。
 
ところが、だ。住んでみて気付いたことがある。なにかあっても、一人でなんとか駆け込める場所に病院が揃っている。忙しい平日でも、仕事の合間に回れる場所に銀行や役所の窓口が揃っている。日中が働き詰めでも、早朝や夜遅くに寄れるスーパーがある。日用品の補充ができる薬局やDIYショップがある。意外にも生活がスムーズなのだ。
 
体調悪いなと思ったら、すぐに病院に行って軽いうちに治す。いろんな支払いや手続きは、平日の昼休みにさっと済ます。コンビニとスーパーが僕の冷蔵庫だし、薬局が僕の薬箱。そうした生活の用事が平日で済んでいると、週末は全部、休養や趣味にあてられる。こんな雑なところに住んでいるのに、まるで丁寧な暮らしみたいだ。
 
こんなに「なんでも近くにある」理由を考えてみたけれど、どうも「せんべろの街だから」なのではと思う。
 
かつての赤羽には、1階は居酒屋さんで2階は店主の住まいといったところも多かった。職住接近どころか職住一体。それが集まってせんべろの街を作っているのだから、駅前は近隣からも酔客が訪れる一大商業地であり、同時に小さな戸建ての密集する住宅地でもあった。商業地だから銀行も役所の窓口も総合病院もある。住宅地だからスーパーも薬局も雑貨屋(DIYショップ)も町医者もある。
 
彼らが引退した後、跡地の多くは3階建てぐらいの雑居ビルになって飲食店などが入り、大通り沿いのいくつかは大規模マンションや大型ビジネスホテルになった。形は変わっても、やはり商業地でありながら住宅地。入居してくる子育て世代も多くて、彼らが子供を連れていく公園もあるし、小中学校や塾もある。デスクワーカーの会社員も多くて、彼らが通うスポーツジムもいくつもある。僕の通う25mプールまである大型ジムは、ロータリーを見下ろす駅前のファッションビルの上にある。
 
つまり赤羽とは、駅を中心に徒歩圏内で生活が完結できるコンパクトシティなのだ。せんべろの街だから自然に生まれた、天然物のコンパクトシティ。
 
郊外のような暮らしのQOL(生活の質)はない。豊かな自然の中のゆとりのある間取り、大型のファミリーカーを自宅の駐車場に停めてといった。でもそうした暮らしは、平日になにかあっても週末を待つガマンと、週末にまとめて用事や買い物を済ませる計画性で支えられている。
 
コンパクトシティにあるQOLはガマンが不要の、その日のことはその日に片付けるシンプルな暮らしだ。その日の気分で食材を買って料理し、日用品を切らさないように整え、毎日の生活感を楽しむ。不調はすぐお医者さんに診てもらって、長引かせたり後遺症のリスクを抱えたりしない。それから仕事の前後に近くの公園で散歩する。あるいは意外に多い喫茶店や菓子屋で甘いものを楽しむ。僕は左党ではないけどさとう好き、甘党なのだ。
 
赤羽暮らしの“いま”の姿を紹介してきたけど、“将来”についても一つだけ。数年越しで話し合われてきた駅前の再開発が、昨年ぐらいからようやく進みだして、さらに暮らしの街になりそうだ。ぜひ「赤羽駅 再開発」などで検索してみて欲しい。不動産サイトなどが、これからの再開発を分かりやすく、すでに進んでいる赤羽台団地刷新や、赤羽のもう一面である子育ての街の側面などとも合わせてまとめている。
 
吞まない人の暮らしでも、ぜひ赤羽という選択肢を考えてもらいたい。まずは繰り返しになるけど、「赤羽駅 再開発」などで検索を。以上、赤羽にもっと住みよくなって欲しいとか、そう思う人たちと暮らしていきたいと思う、赤羽住まいの僕からの宣伝でした。ぜひ検索、してみてねー。
 
 
 
 
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2023-08-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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