地元愛と回ったフェスから聴こえた音楽
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記事:村人F (ライティング実践教室)
なぜ名古屋に住んでいるのに、茨城の音楽フェスのチケットを買ってしまったのか。
衝動的にしても、正直ブッ飛んだ選択だ。
大学が茨城だったから、というのもある。
好きなアーティスト、「打首獄門同好会」と「サンボマスター」が出演していたからでもある。
ただこれらは、わざわざ新幹線を使っても片道5時間以上かかる距離を移動するには弱い理由だ。
それでも行こうと思ったのは、誘ってくれた人の力が大きい。
彼女はこの『LuckyFes』を愛しすぎて同人誌まで作った人だ。
しかも内容はただのファン語りではない。
地元民への取材を多数こなした超本格的な1冊である。
ここまでの熱狂を持った方が「案内しますよ!」と言ってくれたのだ。
だから後悔はなかった。
実際、彼女の案内のおかげで、普通なら絶対にわからない視点をたくさん得られた。
まず入場列を見た時点で「去年と全然違う! ものすごくスムーズになっている!」と教えてくれる。
これは経験者でなければ気付かないことだ。
他にも「この休憩スポットは近くのステージの演奏が聞こえるからオススメ」など、痒い所に手が届くアドバイスもあった。
こういうネタほど初参加陣にありがたい情報はない。
ただ、それ以上に貴重だと思ったことがあった。
地元愛だ。
彼女は、こう言った。
「このフェスはですね、成長するんですよ!」
『LuckyFes』は、今年が2回目の開催だった。
コロナ禍前まで、ここ「ひたちなか海浜公園」で行われていた日本最大級のフェス『Rock in Japan』が他県に移動したのをキッカケに始まったフェスだからだ。
前身は期間中に30万人以上も集客した巨大イベントだったから、地元民の危機感も大きかったことだろう。
だからこそ、本フェスに同じくらいの盛り上がりを期待していたようだった。
そして彼女は、そういった地元の声をたくさん聴いてきた。
だからこそ1人の音楽ファンとしてではなく、共に盛り上げる仲間として参加していたのだ。
それゆえ「成長する」という言葉が出てきたのだろう。
これは、なんとなく参加した私には決して出せないセリフだと思った。
この気付きは、演奏される音の印象を大きく変えた。
アーティストが何を背負って歌っているか。
それを真の意味で実感したからだ。
つまり演奏に込められるのは、単純な言葉で表せる感情ではないのだ。
一生懸命作った楽曲への思いもある。
ファンへの感謝だってそうだ。
しかし、これら以外にも街全体を盛り上げてほしいという地元の声など、多くの期待を背負っているのだ。
だからこそ、私達に常軌を逸した感動をぶつけられるのだ。
「打首獄門同好会」は「ステージの上、気温計が45度示しているんだけど!」と笑いながら全開のハードロックをブチかましてくれた。
「サンボマスター」も同じだ。
ライブハウス等で彼らの演奏は何度も見てきた。
どの会場でもフルスロットルで最高をぶつけてくるスタイルは変わらない。
しかし超満員の『LuckyFes』で叫んだ「愛と平和」からは、これまでの100億倍以上のパワーを感じた。
この原動力こそ、共にフェスを作り上げた人々の声なのである。
わざわざ名古屋から茨城に行くことで、初めてこの共同作業を理解できた。
フィナーレの花火も、オススメされた通り最高だった。
場所も経験者ならではの見やすく帰宅もスムーズな地点だった。
こういった方と共にフェスを過ごせたのは本当に幸せだった。
そして、最寄り駅まで送ってもらった車内の会話。
当然ながら「フェスが最高」という話もするのだが、同じくらいの熱量で「来年はこうすればもっとよくなると思う!」と改善点を語る彼女の姿が印象的だった。
もう地元民にとっては、ただ音楽を聴きにくる場ではないのだ。
学園祭のように、担い手として共に盛り上げる。
そういう祭りが『LuckyFes』なのだ。
ファンがこの熱量なのだから、主催者はそれ以上のパワーを来年にぶつけてくるのだろう。
そこで繰り広げられるパフォーマンスはどれほどすごいのだろう。
きっと、今年感じた最高を遥かに超える熱量に違いない。
そう考えると、もう1回この場所に来たくなった。
これこそが音楽、そしてフェスの最大の醍醐味なのだ。
ファン、アーティスト、そして地元民。
共に盛り上げて手に入れたパワーを源に、来年までフルスロットルで駆け抜けていこう。
***
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