ただの事実、を受け入れるまで
*この記事は、「絶対麗度ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:伊藤美那(絶対麗度ライティング)
夜、日課となりつつあるジャーナリングの手を止めて、ふと初めての撮影を振り返ってみる。画面に映るのは、不安そうな笑顔で強張ったポーズをとる、今となっては何ともぎこちない自分の姿。照れ笑いと苦笑いで半々になりながらも、あの時覚えた解放感を思い出す。
仕事でもプライベートでも上手くいかなくて鬱々としていた時、秘めフォトを知った。興味は持ちつつも、綺麗でスタイルが良い人のためのイベントだろう、とどこかで諦めていた。
古い体質の男社会の職場で生き抜くために『スカートを穿いたオジサン』になるのは嫌だった。男性管理職の失敗は個人の問題でも、女性管理職の失敗は『女だから』と纏められるようで怖かった。自分の問題で後輩たちの道を塞いでしまうのでは、と怯えていた。初の女性管理職という立場は期待も大きかったが、プレッシャーも雑音も同じくらい大きく感じられた。
仕事自体は好きだったけど、息が詰まる日々。自分を責めて悩んで落ち込んでいるように見せかけて、問題と向き合うことから逃げていた。全ての問題の根源は自分が女だからだ、と思い込もうとしていた。そうしていれば、本当の原因に気付かないフリができたから。結局のところ私が一番、自分の女性性を許していなかった、と今ならわかる。
そんな毎日を過ごす中で、お酒を呑みながら改めて秘めフォトについて考えてみた。女性であることをおおらかに認めている人たちが羨ましかった。自分には縁遠い世界だと妬ましかった。
でもそれでも。何かをしなくては、この息苦しさから抜け出せないこともわかっていた。1枚でも自分を綺麗だと思える写真が撮れたら。1回でも自分の女性性を肯定できたら。もしかしたら、何かが少し変わるかも。賭けてみても、いいんじゃないか。
縋るような思いで、気が付いたら申し込みをしていた。お酒の勢い、と自分に言い聞かせて。
撮影当日。私を含め初めての方が多く、スタジオには何ともいえない緊張感。それに耐え切れず、スタッフの方の『誰から撮影しますか?』という問いかけに、真っ先に手をあげた。逃げ出したい気持ちで前に進み、指示されたポーズでソファに座る。とりあえず早く終わらせたい。その一心だった。
シャッターが切られ、三浦さんの『あぁ良いじゃない』という言葉で一気に気持ちが緩む。
あぁ良かった、大丈夫、私はここにいても良いんだ。
そこからはただ言われるがままに必死でポーズを取った。一緒に参加した方々の笑顔と歓声が嬉しくて、少しずつ心が解けていったのは覚えている。他の方の撮影は全力で応援し、終了した時には何か成し遂げたような不思議な解放感があった。
その夜、届いた写真を恐る恐る、見た。長い時間をかけて、画面と向き合う。そこにいたのは今まで見たことのない自分。こんな表情ができるのか、こんな雰囲気が出せるのか。
正直、手放しで私キレイ! とは思えなかった。でも、撮影中と似た安堵感に包まれた。
大丈夫、私は女性で、それは不自然でも不自由でも不都合でもない、ただの事実だ。
問題の原因でも結果でもない、ただの事実だ。
それからは撮影を重ねるごとに余計な重しが取れ、心が軽やかになっていくのを自覚できた。3回目で初めてお気に入りの1枚が撮れ、5回目からは撮影自体を楽しむことができるようになった。相変わらず日々はままならないし、会社では上手くいかず苛立つことも多い。それでも、あの時のように無闇に自分を責めるフリはしない。女性だから、と肩肘張って無理することも止めた。会社では決して見せないSEXYな私もいるんだぞ、と謎の余裕すら最近では出てきた気がする。
秘めフォトに挑戦することで、私は自分を縛る思い込みから少しずつ抜け出すことができた。まだまだ頑なな部分もあるけれど、昔にくらべればずっと自由だ。絶対麗度を通して自分がどう変われるか、今は素直にワクワクしている。1年後の笑顔を信じて、まずは今週末の撮影を徹底的に楽しもう。
今でも緊張しいなので、トップバッターをやりたがる癖は変わらないけれど。
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この記事は、天狼院書店の「絶対麗度ライティング」にご参加の方が書いたものです。
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