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確認ミスで、サザエさんに為って仕舞った


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山田THX将治(天狼院・ライティング実践教室)
 
 
うっかりミスで、サザエさんをして仕舞った。
正確には、サザエさんに為って仕舞った。
 
勿論、私があのへんてこな髪形にした訳ではない。私は、星野源では無いのだ。
私がして仕舞ったのは、サザエさんの主題歌2コーラス目に在る、状態に陥ってしまったことだ。
何のことは無い。財布を持たずに外出して仕舞ったのだ。出掛けに、確認をしなかったばっかりに。
更に気付く迄に、結構な時間が掛かってしまったので、始末が悪く為ったのだ。
 
 
キャッシュレス化が今ほど進む前から、私は余り現金を使う方ではない。支払いが、1,000円を超えた途端、現金支払いをクレジットカード・チェックに切り替えている。
最近では、クレジットカードのタッチ決済も増え、益々使用頻度が上がっている。
しかも、交通系ICカードが、全国どこでも使用出来る様に為ったので、現金、特に小銭迄、使うことが減っているのが実情だ。
 
元々、二つ折り財布と小銭入れを使い分けている私だが、財布には一切の現金(お札)を入れてはいない。中に在るのは、クレジットカードとPontaカードだけだ。そう。私の二つ折り財布は、“カードフォルダー+お客様控え+領収証”入れと化して居る。
 
一方の小銭入れは、最近では100円玉・500円玉しか入っていない。50円以下のコインは、家のリビングルームで、小銭集積缶に収納されている。
 
こんな状態なので、現金を持たずとも、私の普段通りの行動には、さしたる支障は来たさない。キャッシュレス化が進んで、恩恵を受けているのだ。
 
その日も、その筈だった。
 
 
2月17日の土曜日、この日は第三土曜日なので、私はいつも通り出掛けた。
毎月第三土曜日は、75年の伝統を誇る映画サークルが開かれるからだ。この会は、私の師である映画解説者・淀川長治先生が創設者だ。私は会の事務局を、長年務めている。
なので、何が有っても時間通りに港区芝公園の会場に着かねば為らないのだ。
 
途中、昼食を買おうと、私はコンビニに立ち寄った。目ぼしい御弁当とヨーグルトをチョイスし、私はレジ前に立った。一緒に買い求めるつもりの煙草の番号をスタッフに告げ、ズボンのポケットを探った。クレジットカードとPontaカードが入った、二つ折り財布を出そうとしたのだ。
しかし、ポケットには何も入っていなかった。次に私は、いつもは前のポケットに入れている小銭入れを探った。
想定されたことだが、小銭入れも私は自宅に忘れて来てしまったのだ。正確には、出掛けに確認をミスったのだ。
 
私はスタッフに、
 
「あっ、すまないが財布を忘れた」
 
と、告げた。
その間、約5秒。スタッフが、御弁当を温める前だったのが、せめての救いだった。もし、温めた後だったら、私には代金を払う術が無かったのだ。
 
 
車に戻った、財布不携帯の私は、一先ず落ち着こうとSNSに、
 
『ヤバい! サザエさんをやっちまった!!』
 
と、暢気なことを書き込んだ。
一呼吸置いたら、少し落ち着いた。
 
私は先ず、財布を取りに一旦帰宅する選択肢を考えた。
即答で、無理だと判断した。時間通りの出席(会への)が、必須だったからだ。
どう道順を変えても間に合うとは思えなかったのだ。
 
次に、代替案を探ろうと、鞄の中を探ってみた。悪いことは重なるもので、その日は丁度、出掛けに鞄を替えていたのだ。
いつもなら持ち歩く、数枚の10,000円札を入れた札入れは、入れ替えていなかった。同じく、予備のクレジットカードを入れたカードケースも、自宅に置いてきてしまっていた。
いつもは持ち歩く、交通系ICカードさえも置いて来て仕舞っていた。
 
一先ず私は、自分を落ち着けようと、
 
「スマホを忘れるよりはマシさ。現代は、情報・連絡が生命線なのだから」
 
と、考えてみた。
少しは落ち着けたが、状況は一歩も前進出来ていなかった。
 
困り果てた私は、必死に鞄を探った。探りながら、対応策を考えた。
先ず、会に行けば誰かに事情を話し、少額の現金を貸してもらうことが可能だろう。しかし、年長組に入る私がすることではないと観念した。
でも、事情が事情なので、何とかなると自分に言い聞かせた。
そもそも、会の会計用に若干の釣銭が有るので、数日寸借も出来ると思った。
 
更に、代替えのクレジットカードを考えた。カードが無いと、駐車場代が払えないからだ。
しかし、いい考えが浮かばなかったので、私は諦め愛車のエンジンを起動した。
ナビゲーションシステムが、いつも通り、
 
「ETCカードを確認しました」
 
と、電子声で言って来た。
私の頭に、突然、
 
『!!!』
 
が、立った。
私のETCカードには、クレジット機能が付いていることを思い出したのだ。
私はこれで、
 
『勝った』
 
と、思った。(何にだよ!!)
 
 
私は笑顔に戻り、車をスタートさせた。正確には、思わずスタートさせてしまった。
何故なら、クレジットカードが見付かったというのに、昼食を買い忘れたからだ。
 
更に、冷や汗が出そうなシーンにも出くわした。いつも停めている駐車場でのこと。ここの上限料金は、5時間で切れるのだ。
その日は、会の撤収に時間が掛かり、私が車に戻ったのは停めてから4時間55分後だった。
残り5分で、駐車料金が跳ね上がる。私は焦りながら、クレジット機能付きETCカードを取り出した。
 
ところが、精算機にクレジットカードをタッチしても、反応しないのだ。いつまで経っても、駐車料金の表示が消えないのだ。
制限時間が迫ってきたので、私は焦りまくった。
もう一度、クレジットカードを確認した。その日の私は、サザエさんなのだ。いつもより、慌てん坊な筈だ。
カードの有効期限は過ぎていない。そもそも、期限が過ぎていたら、ETCカードとしても機能はしない。
しかし、カードは反応しない。時間は刻々と過ぎていく。
 
もう一度私は、クレジット機能付きETCカードを見た。
そして、合点が行った。ETCカードに、横倒しになったWi-Fi(みたいな)マークが無かったからだ。
そう。私が愛車にいつも搭載しているETCカードは、クレジット機能は付いているものの、タッチ決済機能は持ち合わせていなかったのだ。
私は、駐車後ジャスト5時間でカードを精算機に差し込んだ。そして、事無きを得た。
 
 
結局その日、代替えのクレジットカードを発見した御蔭で、私は支障無く行動出来た。
やはり、現金は使わなかったのだ。
 
帰宅してみると、私の財布と小銭入れは、いつものポジションに置いてあった。
 
私は自分に、
 
『ま、落としたり無くしたりじゃなくて、良かったではないか』
 
と、納得させ様とした。
 
 
聞き手の私は、納得はしたものの、小首は傾いでしまった。
 
でも、サザエさんに為っただけで、財布を無くさずに済んでよかったのは事実だった。
 
 
 
 
***
 
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2024-02-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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