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【実録】結婚生活に「察してほしい!」を持ち込んだら、こうなった……


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記事:淋代朋美(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
結婚生活を始めるにあたって、私はひとつ、大切な理念を自分の中に作った。
それは「察してほしい」という気持ちを持たないこと。
 
心理学では、「言わなくてもわかってくれるはず」と思うことを、母子一体感と言うそうだ。それは、小さな子供が母親に対して「私の気持ちをわかってくれて当たり前」「期待に応えてくれて当たり前」と思うことと同じで、甘えの気持ちである。反対に、「相手は自分とは違う感覚、考えを持った、別の人格である」と受け止めることを、離別感と言う。
つまり、簡単に言えば、「思っていることは言葉にしなければ伝わらない。言おう!」ということ。言葉にもせずに「察して!」と思うことは、ただの甘えだ、ということだ。
 
以前、こんなことがあった。
その日は、とあるアート系の教室に参加していた。一緒に生徒として参加していたのは、私の母くらいと言ってもいいくらいの世代の女性が5人。作品作りの手を動かしながら……、いや、口を動かしながら手を動かしていた。
 
「もうね、うちは、晩御飯は大皿では出さないの。出したら、私の分なんか残さず全部食べちゃうんだから!」
「わかる〜! みんなのこと考えられないのよね。うちもあの人の食べる分だけお皿によそって出してるわよ!」
「うちもよ〜!」
 
共感の嵐である。
どこに行っても、あるある、なのかもしれない。
奥様方が集まっての、ご主人への不平不満の自慢大会。
 
勢いに圧倒されつつも、「へぇ〜」だとか「ほぉ〜」だとか声を出していたものだから、「あなたもね、気をつけなきゃだめよ。男って周りの状況を察するってことを知らないんだから。自分の身は自分で守らないとね。」なんて、ありがたい教えをいただいた。
 
私は、喉元まで出かかった言葉を、心の奥にしまった。
「私の分は残しておいてねって一言、ご主人に言ったら良くない?」
 
私の周りには、こういう、「本人に言えばいいのに」ということを、言わずに(言えずに?)不満を抱えている女性が多い。
 
思えば、母もそうだった。
ご飯にお味噌汁、焼き魚におひたし、温泉宿で出てくるような朝食を、毎朝作る母だった。しかも、掃除に洗濯を同時進行でこなし、パート勤務に出るための自分の身支度も整え、さらに父の出勤の準備ができるタイミングまで見計らっていた。
なのに、母がお味噌汁を出す頃に、なぜか洗面所に行ったり、自分の部屋に行ったりする父。
その度に、母はいつもこっそり文句を言うのだ。
「せっかく温かいお味噌汁を出してるのに、わざとか! って思うくらい、いつもタイミングをずらしてくる」と。
 
確かに、父はいつも、え? なぜ今それをするの? という間の悪さがあるので、母の言わんとすることもわかる。
しかし、いつも思うのだ。
「お味噌汁よそっていい?」が、なぜ言えないのだろう? と。
 
そんな両親を間近で見てきたからこそ、自らの結婚生活では、言葉で伝えることを当たり前としてきた。
もちろん、心の内を全て洗いざらい伝えているわけではない。思っているけど言わないこともある。そうすると、当然ながら「察して」はもらえないことも多いが、「それでもいいと思って伝えなかったのは自分」なので、自己責任だと思っている。
この理念を持つだけで、結婚生活は本当にうまくいっていた。はずだった……。
 
が、本当に、自分でもどうしようもできないような感情にコントロールされることも、人生には、ある。
 
その日は、夫を置いて、3歳の娘と午前中から出かけていた。
夫を置いて行ったのは、数日前から夫が風邪をひいていたので、少し家でのんびり休んで、という私なりの気遣いがあったからだ。もちろんそこまでは夫には言っていない。「娘と二人で参加したいイベントがあるから行ってくる」と伝えたのだ。
 
しかし、これが大変だった。
 
イベント参加まではとても楽しく、娘も大盛り上がりで、「参加して良かった」と思っていたのだが……。
盛り上がりすぎてしまったのか、もうほとんど昼寝を必要としなくなっていた娘が、帰りの電車で寝てしまった。これも、出かけた先ではたまにあることで、念のために簡易的な抱っこ紐を持参していた。私の準備勝ちだ!
……と思ったのも束の間。
電車から乗り換えたバスが、夕方早めの時間にも関わらずかなり混んでいて、道路渋滞も重なり、体重15キロの娘を抱っこしたまま30分ほど立ちっぱなしの状態だった。
気遣ってくださる方もいたのだが、ご高齢の方から席を譲っていただくわけにもいかない。
夫に「帰りに夜ご飯の買い物でスーパー寄るつもりだったけど、娘が寝ちゃったから、一度帰って娘を置いてから買い物に行く」とメッセージを送った。
 
実は、この時点で「察して〜〜〜〜っ!!」だった。
「一日中家にいたんだから「買い物行ってくるよ」って言って〜〜〜! 言ってくれ〜〜〜〜!!」
 
いや、いつものように、私から「買い物に行ってくれると助かる」って言えばいいだけなのだ。
だが、「いや、でも風邪ひいてるしな」と、この時点では気遣いが上回っていた、のだと思う。
 
しかし、当然ながら、私の思いに気づいてくれるはずもない。
 
体力を根こそぎ削られて帰宅した後、外に干されたままの洗濯物、昼食の片付けもされていないキッチンの流し台を見て、私の「気遣い」は「怒り」に変わった。
さらには、掃除してもいない浴槽に新しいお湯をためたと聞いて、プツッと何かが切れた。
「はぁあああ!? 浴槽、洗ってないんですけど」
「え? ご、ごめん、知らなかった」
「今朝、お風呂に入って浴槽のお湯を流したのは、あなたでしょうが! あなたが洗わなかったら誰が洗ったって言うの!」
「ごめん……」
 
その夜は、しばらく、お互い必要以上の言葉を発しない冷戦状態。
娘が寝た後に、小さくなった夫が一言、こう言った。
「ポンコツでごめん」
 
振り返ってみよう。
この冷戦勃発の契機は、ただひとつ。「お買い物行ってもらえる?」この一言が言えなかったこと、だけなのだ。
言えていたら、こんな後味の悪い思いをすることもなかった。そして、身長185センチの夫が、こんなに小さくなることもなかったのに。なんかごめん。
 
「私の方こそ「察してほしい」という気持ちは持たないようにしていたはずなのに……ごめんなさい」
やっぱり、親密な仲にこそ、離別感が、必要なのだ。
 
 
 
 
***
 
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2024-04-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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