余白は最高のスパイス《絶対麗度ライティング》
*この記事は、「絶対麗度ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:紬野 しずく(絶対麗度ライティング)
「余白を楽しんで」
「聴いている人は、余白でいろんなことを考えて、想像するの。つめつめの歌なんてつまらないし、聴く側も歌う側も息切れしちゃうでしょ」
「歌わない時間をいかに作るか。それがいい歌い手なのよ」
ジャズのボーカルレッスンを始めて、もう半年以上になる。
月に2回。
休みたい気持ちを抱えながら、それでも仕事帰りにレッスンへ向かう。
先生はいつも明るくて、パワフルで、そして面白い。
そんな先生が、毎回のように口にする言葉がある。
「余白」
そして私は、毎回同じことを思う。
「もっと歌い込まないと、不安で余白なんて作れない」
「次回までに、しっかり歌い込んでおこう」
不安だから追い込む。
不安だから、詰め込む。
私はずっと、そうしてきたのかもしれない。
余白なんて意識しなければ、大切なものには思えないのかもしれない。
でも最近、気づくことがある。
余白があるからこそ、守られているもの。
余白があるからこそ、保たれているもの。
人生には、案外たくさんある。
例えば、車の運転。
車間距離を詰められると、追われているような気がして、なんだか苦しくなる。
人との会話もそう。
自分が話し終わって、間髪入れずに相手が話し始めると、
「今の話、ちゃんと聞いてくれていた?」
と、少し寂しくなる。
毎日の予定だって、ぎっしり詰まっていると、いつの間にか気が重くなってくる。
でも、若い頃は違った。
スケジュール帳に予定がいっぱい詰まっていると、それだけで充実しているような気がしていた。
予定がないことが、どこか不安だったのかもしれない。
余白が好きになったのは。
余白が必要になったのは。
余白があっても、不安に駆られなくなったのは。
歳を重ねたからなのだろうか。
少しずつ、余裕が生まれてきたからなのかな。
歌わない時間があるから、音楽は豊かになる。
予定のない時間があるから、心は自由になる。
言葉と言葉のあいだに余白があるから、人は想像する。
きっと人生も同じなのだ。
詰め込むだけでは、見えないものがある。
急がないからこそ、感じられるものがある。
秋の夜長。
そんなことを考えながら、余白を楽しむ。
読書に耽りながら、ひとり、スパークリングワインをグラスに注ぐ。
小さな泡が、しゅわしゅわと水面に向かって泳いでいく。
その隣には、チーズとお裾分けを待っている愛犬の、つぶらな瞳。
なんでもない夜。
でも、なんだかとても幸せな時間。
読書に夢中になるあまり、ついついワインを飲みすぎてしまったりして。
それも、大人の余裕でカバーしたりとかしないとか。
今は、何もない時間こそ、愛おしい。
急がない。
埋めない。
ただ、静かな夜を味わう。
大人の人生には、少し余白があったほうがいい。
その余白が、人生をもっと美味しくしてくれる、
最高のスパイスなのだから。
***
この記事は、天狼院書店の「絶対麗度ライティング」にご参加の方が書いたものです。
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