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メディアグランプリ

日本人女子vsイタリア男


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:卯月そら(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「ああ~、疲れた」
私たちは、ローマの自由旅行で街中を歩き回り、疲れ果ててポポロ広場のベンチに腰を下ろした。朝から歩き始めて、もう足がぱんぱんだ。
「これからどうするー。夕飯にはまだちょっと早いよね」一緒に旅をしている友人(女子)と話しながら、空を見上げた。
古いものと新しいものが入り混じった街。一度ツアーで来てから、ずっとまた来たいと思っていたところだ。
 
そのとき、どこからともなく男性が二人現れた。そして、「チャオ」とにこやかに私たちの両側に腰を下ろした。ものすごく手慣れた感じで。
やばい。ナンパされるのか?
すると男性は、「手を出して」と言う。
「えっ? 何」そう思う間もなく右手を取られた。そして、なにか糸のようなものを取り出して私の右の手首に巻き付け始めた。
「えっ? えっ? 一体、何が起こっているの?」
隣に座っている友人を見ると、同じように手首に糸をまかれている。
 
あっけにとられて手元を見ているうちに、彼は実に素早い動作で糸を編んでいく。これ、ミサンガだ・・・・・・。
彼は、楽し気にイタリア語で何か私に話しかけながら、どんどん編み進めていく。そして10分もたたないうちに私の手首でカラフルな色合いのミサンガが編みあがり、両端をキュッと結ばれた。
 
見事だ。
隣の友人をみると同じように、ミサンガが左手首に出来上がっている。
でも、やばいんじゃない。これって何かの詐欺かしら。
 
そしてそのイタリア男は、にっこり笑って私に言った。
「ひとつ5000円。君と彼女の分、2つで10000円だよ。イタリアの思い出だね」
決して日本語で、そして日本円で言われたわけではない。直感的にわかったのだ。金額は素早く当時のリラを円換算した。
 
ええー!! ひとつ5000円! とんでもないぼったくりじゃないか。
旅行者だから、5000円を持っていないわけではない。でも、このミサンガに5000円支払うなんてあまりにも「いいカモ」すぎるではないか!
でも、右手首にしっかり巻かれたミサンガは簡単に外すことができない。
私は考えた。この窮地、一体どうしたら乗り切れるんだ。隣の友人は、もう仕方ないといった表情でバックの中の財布に手をかけている。私は、それを素早く制した。
 
そういえば、本気で怒れば言語なんて関係ないって聞いたことがある。怒っているのは伝わるって。よし、日本語で怒ってみよう。どうせイタリア語で文句言うことなんてできないし。私は彼に向って怒りながら言った。「これが1個5000円なんて高すぎる! おかしいじゃない」と。
しかし彼は、怒る私に笑いながら「僕は、君の国の言葉はわからないよ~」と軽く言い放ったのだ。
ああ、本気で怒れば言語なんて関係ないってのは嘘なんだ。簡単にかわされてしまったではないか。
でも、このままで引き下がるわけにはいかない。これでは日本人女子は「ちょろいぜ」ってことになってしまうではないか!
 
そして私は、次の手にでた。日本語がわからないっていうなら英語だ。
「私たちは、今そんなにお金を持ってない。ここでひとり5000円も払ったらホテルに帰れない。帰れない。2人で5000円にしてくれないと帰れない」と、たどたどしい英語でしゃべりながら目を潤ませた。そして黒く長い髪で嘘泣きがバレないよう顔を隠した。
友人が驚いた顔でこちらを見ている。
私は、泣くふりをしながら小声で「帰れない」を繰り返した。
 
そんな私をみて、イタリア男は悪びれる様子もなく優し気な表情でこう言った。
「仕方ないな。二人で5000円にしてあげるよ。君が泣くからまけてあげるんだよ」と。
 
へっ?
私は拍子抜けした。もっといろいろ言われると思ったのに、こんなつたない泣き落としが通用するなんて。
しかもさすがイタリア男だ。
「君が泣くから、まけてあげるよ」とは。
勝手に人の手首にミサンガ作って、5000円も請求しといて、最後はやっぱり女に弱い。
 
私が友人の分と二人分、日本円で5000円相当を支払った。
そして彼らは、実にさわやかな笑顔で「チャオ」と手を振りながら去っていった。
 
その場に残された私に、しみじみと友人が言った。
「あの状況でよく、泣きまねなんかできたね~」と。
「まあね。でもそのおかげで半額になったんだから、ちょっとは感謝してよ」
 
ホテルに帰って、固く結ばれたミサンガを手首から外して眺めてみた。
確かに、これをあんな短時間に作るってすごい。でも、これが5000円って・・・・・・。
これは、これからまだ続く旅のお守りにしよう。私にとってはちょっと苦い思い出だけど、イタリア男はイタリアの太陽みたいにカラッとしてたな。
 
だけど、私もなかなかよくやった。
結果的にお金は支払ったけれど、ちゃんと半額に値切ったし。
日本人女子vsイタリア男は、引き分けってとこじゃないかな。
 
それにしても。
イタリア男は、噂にたがわぬ女たらしだったわ。

 
 
***

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2018-06-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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