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世界一周したって人生なんか変わりっこない


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記事:金澤 鮎香(ライティング・ゼミ朝コース)

 
 
「私、なんのために世界一周したんだろう」
 
4年前の4月、私の目の前は真っ暗だった。
 
満を持して大学4回生を休学し、行った世界一周から帰国したのが12月。何のために? 勿論就活のためだ。
世界一周から帰ってきた私は、それはもうふわふわしていた。なんだかもう何でも出来る気がしていた。「世界に価値を生み出せるような人間になりたい!」今考えると顔から火が出るほど恥ずかしい、具体性も何もない浅い考え、ただただ根拠のない自信だけに満ち溢れていた。
やっぱり世界を股にかけて働きたいな。だったらやっぱり商社かな? 世界一周とかしちゃったし、5大商社位狙ってみよう、きっと上手くいくはず。
 
世界と関わる仕事なんて、商社以外にもいくらでもあるにもかかわらず、なまじっか進学校から国立大学に入学してしまった私は、一流企業にきっと入れるはず、という思い込みに支配されていた。周りも大企業か公務員志望ばっかりだったし、中学校からなんとなく優等生をしてきた私は流れのまま進学校、国立大学に入学し、特に挫折の無い人生を送ってきた。しかし就活でつまづいた。
 
40社くらい志望した商社は全てエントリーシートか1次、もしくは2次面接で落とされた。どんどん無くなっていく持ち駒。内定が決まって行く友人たち。海外なんか全く興味がなかったずっと部活ばっかりしていた人達が大企業に内定をもらって行く。
あれ、もしかしたらやばいかも。
気付いた時には、持ち駒は全くなくなっていた。
 
そもそも何のために世界一周したんだっけ。
もともと海外旅行が好きだったこと、何も成し遂げたことがないまま就活することへの恐怖、学生の内しかできないことやらなきゃ! という焦り。
なんて薄っぺらな理由だろう。
 
世界一周したら、なにか見えると思ってた。
世界一周したら、人生が変わるようななにかビッグな出来事がおきるんだ、そう思ってた。
 
でもそんなこと全然なかった。
 
絶望じゃん。
 
ただ絶望しつつも、就活は終わらせないといけない。
商社以外も片っ端から受けるしかない。
そして当初の予定とは全く違うけれども、海外売上が半分を占めるニッチな機械工具中小メーカーになんとか内定をいただき、私の就活は終わった。
 
そして3年間働いた今、気付いたことがある。
当初の希望とは違うけれど、入った会社はとても良い会社だった。福利厚生もしっかりしているし、残業もそんなにない。お給料も中小にしては沢山いただいた。東京研修や海外出張と貴重な経験をさせてもらった。
 
仕事だし、嫌なことももちろんあるけれど、充実した毎日を送っていた、と思う。
 
でも、なんだか納得できない自分がいた。
なにか違和感を感じる自分。やりがいを感じつつもそれに夢中になれない自分。
 
自然と、「あ、仕事辞めよう」と思った。
 
仕事を辞めて、トルコに行こう。特にアテがある訳でもないし、そんなに貯金がある訳でもない。甘いかな。いつまでも学生気分って笑われるかな。
 
でも自然に決断していた。あまり不安はなかった。
 
根拠のない自信だと思う人は沢山いるだろう。
若いから出来るんだ、考え直した方がいいんじゃない?
色々な人から色々な事を言われた。
 
就活していたときからまったく成長していないのかな、自分。
そんな風に思うこともある。
 
でもそんな時、思い出すのは決まって世界一周した時の記憶だった。
 
明日、何食べようかな、次はどこの国に行こうかな。
なにをしようかな、だれと会おうかな。
 
自分のやりたいことにただ、忠実だったあの時。
 
ただ、行きたかったから。
 
突き詰めればそんな薄っぺらい理由。でも確かに、その時の私は自分に「忠実」だった。自分のやりたいことに嘘をつかず、全力だった。分からないこと、怖いこと、不安も沢山あったけれど、「あの国に行きたい! あの遺跡を見たい!」そんなワクワク感の前では不安もぶっ飛んだ。
 
今思えば、何て贅沢な時間だったんだろう。
 
「自分に忠実であること」
 
が許されていたあの期間に感じたこと、体験したことは、「意外とイスラム教の人はめちゃめちゃ優しいな」とか「インド人はうっとうしいけど、慣れると人懐っこくてかわいいな」とかしょうもないことばっかりだ。人生が変わるようななにかビッグな出来事ではもちろんない。
 
でも誰の為でもなく、自分の為だけに行動し感じたことは、知らず知らずのうちに私の根幹をなして、考え方や価値観に大きく影響していたのだと気づく。
 
世界一周したって人生なんか変わりっこない、
すぐには。
 
本当に大事なことは、時間が経ってから分かるものなのだろう。
 
仕事を辞めて、トルコに行って何が起こるのかは分からない。
特に何も起きないかもしれないし、それこそ4年前と同じように薄っぺらい自分に絶望して帰国するのかもしれない。
 
でも私は、「自分に忠実であること」を自分に許してあげたい。
世界一周して学んだことは、「自分に忠実であること」を許せる自分だった。
 
今ならそう思えるのだ。
 
 
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2018-06-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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