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この夏、浴衣を着てどこに行く?


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記事:土谷茉亜紗(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
どどんどどん
 
太鼓の音が鳴り、高座にスポットライトが差し込み、大きな拍手とともに一人の噺家がその光の中へ入っていく。
 
観客の注目を一点に集める中、居住まいを整え、一呼吸。
 
の間をおいて、するりと話し始めた瞬間から、観客は皆、その噺家の口から流れ出る話にぐいぐいとひき込まれていった。
 
真夏のある昼間、中洲のホールへ講談を聞きに行った。
 
講談って? と思われた方も多いだろう。
落語というワードは聞き馴染みも深いと思うが、基本的には、落語がフィクションに対し、講談がノンフィクションだと考えてもらえればいい。
 
……と、偉そうに解説したものの、実は私自身、今回講談を聞きに行って初めて知った。
なぜ、講談なるものを聞きに行くことになったか、というと、私の大学の友達で、落語好きな女の子がおり、その子の話を、へえ~! と物珍しくて聞いていたら、チケット2枚とったから行かない?ということで、誘われて行くことになったのである。
 
夏休みが始まって初のイベントが講談って……とも思ったが、そんな女子大生も稀有な存在だろうと自負している。
 
今回行ったのは、ひなたの会という噺家の3人グループが、地方を回って講演を行う中の福岡であった分である。
会場に入る前は、こんなところに大学生が2人で入っていいものかと、何しろ私は初めてだったから、正直少し緊張した。
しかし、入ってみると、意外と若者も多いし、雰囲気も堅苦しくない。浴衣を着ている人もいれば、私と同様、tシャツにジーパン位のラフな格好の人もいる
 
既に席は結構埋まっており、2人分空いている席をなんとか見つけ、腰を下ろした。入口で貰った大量のチラシを、ほぉ~、こんなのがあるんだ、と一枚一枚に目を通していると、身構える間もなく、照明は落とされ、噺家が登場し、講談が始まった。
 
あっという間にその話の虜になっていた私は、息をするのを忘れていたのか、笑い過ぎたのか、一席が終わったところで、はぁっと息を吐いた。
 
いやぁ! こんなに面白いとは!
講談って、説教じみた感じの昔話で、若者には分かりにくい内容だったりするのかな~、と勝手に想像していたが、全然そんなことはない。むしろ、テレビとかでやっているコントとか漫才よりも断然面白いのではないか、とさえ思う。
 
なぜそんなに面白いのか、と考えると、噺家はナレーター的な立場から物語の筋を説明しながらも、色んな登場人物を演じながらストーリーを展開していく、それも自然に演じていて、すごいもの見たという気分になることが一つにある。
 
一人で話の中の登場人物を演じようとしても、普通は無理だ。そもそもそんなに使い分けられないし、聞いてる側にも違和感が生じるだろう。スムーズに話を展開していくことは難しい。
 
普通の会話だったら、「○○ちゃんがね、こうこう言って、△△さんが、こう言って……」というところを、○○さんがね、△△さんが、という前置きをいちいちする訳にはいかないため、噺家は大変だ。
 
そこで、場面が変わる時に羽織を脱いだり、話のテンポに変化をつけたり、人によっては、張扇で釈台を叩いたり……と、その切り替わりの違和感を無くすための工夫があらゆるところに施されていた。
 
そして、登場人物になりきっての演技も見事なものであった。役柄によって、表情、声のトーン、スピードを変えている。
 
つまり、笑いを誘うという意味で面白い、というだけでなく、圧巻の一人芝居を見て、面白い、と感じるのである。
 
それに、講談は噺家によって、それぞれの全く異なった味が楽しめる。
 
企んだような顔で、ぼそぼそと話し始めたと思ったら、徐々に徐々に危機迫るストーリーを、気迫に満ちて語って、最後にはその世界観に観客をどっぷり漬からせる噺家。一方で、最初からずっとまるで落語の中の登場人物そのもの、江戸っ子の粋な感じが清々しい噺家。他にも、ゆるりとゆるりと、独自のペースで話しながらも、観客をそのペースにのせて、大きな笑いをとっていく噺家。
 
一人語りでも、こんなに噺家によって違うのか、と本当に驚きである。
 
5席終わった頃には、もうお腹いっぱい。
この一夏分、笑い切ったのではないかと思うほどに、笑った。笑いまくった。
笑い過ぎて疲れたくらいあったが、心地よい疲労だと感じた。
 
今回、思いがけなく友達に誘われて、たったの1回講談を聞きに行っただけだが、わたくし、もう既にハマってしまいそうな勢いである。
 
講談が終わった後は物販スペースに並んで、初めてなのに、講談の本なんか買っちゃったりして、初めてなのに、噺家さん達とばっちり写真まで撮ってもらった。
 
最近はその本を読んで、講談って奥深いのね~、ふむふむ、と楽しんでいる。
 
猛暑日が続いて、気の滅入るような毎日だが、そんな時は講談を聞きに行って、腹の底から笑って、エネルギー補給するのもいいかな、と思う。
 
浴衣を着て行く所、といえば花火大会が定番であるが、趣を変えて、講談を聞きに行ってみてはどうだろうか。
 
私も今度は浴衣を着て行ってみようかな、と思っているところだ。
 
確かに花火が打ちあがるのは綺麗である。
しかし、講談を聞きに足を運べば、そこでは大爆笑がドカンドカンと何発も、いや、何十発、何百発も打ちあがっていることだろう。

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2018-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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