メディアグランプリ

北海道地震と人気のコーンパン


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:古川 馨(ライティング・ゼミ特講)

 
 
早朝の新千歳空港。
「繁忙期は過ぎているとはいえ、今日は人が少ないな」
駅から出発ロビーへと向かうエスカレーターに乗りながら、そんなことを考えていた。
 
エスカレーターを上りきると、ロビーへは行かずにまっすぐ、とあるお店へと向かった。
お店の名前は「美瑛選果」。
北海道土産として有名なコーンパンと豆パンで評判のお店だ。
 
前回買いに来たときは買えなかった。
早朝の開店前だというのにすでに20人近く並んでいて、コーンパンは売り切れ。
豆パンだけギリギリ購入することができたのだった。
 
私の後に来た人は、
「もう10回以上来ているけど、まだ一回も買えたことがない」
と悔しがっている。
まさにタッチの差だ。
焼き上がりの時間とタイミングが合わないと買えない。
お土産としては超激レアアイテムとなっている。
 
そんな「美瑛選果」だが、今日は店の近くに来ても行列は見えない。
あれ?今日やってないのか?
と思って正面に回り込んで見ると列はある。
しかし、たった2名だった。
 
珍しい。
1番目に並んでいたご婦人も、
「普段はもっとたくさん並んでいるのに……地震の影響かしらねぇ」
と驚いていた。
北海道に来る人が少なくなっているのだろう。
 
焼きたてのコーンの甘い香りがする。
うーん、美味しそうだ。
激レアのコーンパンをまんまとゲットしてウキウキしながら空港内を歩くと、黄色いシャッターが目立つのに気がついた。
ここって何があったっけ?
そう思いながら、3階のラウンジへ続く中央のエスカレーターへ向かう。
 
吹き抜けになっているホールから3階を見上げるとここでも黄色いシャッターが見えた。
お店をしめているところが多いのだろうか。
いや、もしかして3階全体、シャッターが閉まってる?
 
エスカレーターに近づくとロープパテーションがしてあるのがわかった。
やはり3階は封鎖しているようだ。
張り紙がしてある。
 
地震の影響によりスプリンクラーが故障。
復旧の目処が立っていないようだ。
3階の飲食店フロアが全滅。
そして同じ階にあるラウンジも使えないことがわかった。
 
「あらら、行くとこなくなった」
 
ここにも地震は爪痕を残しているらしい。
 
9月6日に起こった北海道地震。
地震によって発生した全道規模の大停電は、震災から2週間近く経った今でも街の至る所に影響を及ぼしている。
 
コンビニは空きが目立つドリンクの冷蔵ケースが並び、これまで見かけなかったパンで商品棚が埋め尽くされている。
牛乳などの乳製品は姿を消し、卵や納豆も品薄状態だ。
 
電気店やホームセンターでは電池や懐中電灯、モバイルバッテリーなどを抱え、レジに並ぶ人が目立つ。
他にもオーディオコーナーで、手回し充電式のラジオが売り切れ続出。
防災関連コーナーが大きく設置され、人々の関心を寄せている。
そして、ネットでも防災関連グッズの完売が続いているようだ。
 
北海道全体が停電すると言うインパクトは大きかった。
 
東日本大震災を経験してさえ、防災意識がそれほど高まっていなかったと感じる。
ある意味対岸の火事だった。
 
自分自身が被害にあっていないだけに深く考えていなかったのだ。
時間が経つと忘れてしまい、備えることをおろそかにする。
 
ニュースやネットで、大きな被害が報じられれば、その時は「大変だ」と思う。
それでもどこか他人事なのだ。
いつか自分にも降りかかるかもしれないとは、一ミリも考えていない。
 
心のどこかで自分には関係ない。
自分だけは被害にあわないはずだ。
きっと自分は大丈夫。
 
そんな風に考えてしまっていたと思う。
 
ビジネスでだってそうだ。
 
同僚が大きなミスを犯した。
プロジェクトが失敗した。
お客さんとトラブルになった。
 
本来なら、どれもいい教訓になるはずだ。
 
でも直接関わっていなければ、気にしないに違いない。
あーあ、やっちゃったね。
 
そう思うだけで、後日、自分も同じような目に会うかもしれないからと
注意を払うことをしない。
 
ちょっと意識するだけ、想定しておくだけできっと結果は変わったはずなのに。
 
自分が体験したことだけでなく、見聞きしたことも自分ごととして捉えることができたなら、もっと自分の世界は広がるのかもしれない。
 
そんなことを考えていたら、焼きたてのコーンパンの香りが食欲を刺激したらしい。
ぐうぅぅぅ
とお腹がなった。
閑散とした空港ロビーに、お腹の音が響いた気がした。
 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

http://tenro-in.com/zemi/59299

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2018-09-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事