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論文はライティングゼミ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:原雄貴(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「もうやめようか」
「いくら考えても出口がないよ!」
さすがに、もうおしまいかと思っていた。
この数か月後に何が起こるのかも知らずに。
 
僕は、大学卒業後に大学院に進んだ。
大学のサークルでの活動をきっかけに、どうしても研究したいことができたからだ。
研究したいことができた後は、大学での研究が僕の支えになった。
自分の知りたいことを調べれば調べるほど研究は面白くなり、卒業論文を書いても足りないほどだった。
「もっとこの研究がしたい」
これが大学院への進学理由だった。
自分がやりたい研究をするために、全国から必要な先生とカリキュラムがある大学院を探した。興味がある先生がいる場合は、どんなに遠いところでも直接会いに行った。
そして、1年ぐらいかけて第一志望の大学院が見つかった。
第一志望の大学院には週1回のペースで先生の研究室に通い、先生の面倒見の良さに惚れた。
「この大学院に何としても行きたい」
この思いが実を結んで、僕は第一志望の大学院に合格。
「これで、自分の思う研究が思いっきりできる」
大学院に入ったばかりのときはそう思っていた。
 
「この研究テーマはやめた方がいいよ」
研究に関する面談でのことだ。
授業担当の先生が放った一言に、僕は思わず耳を疑った。
「研究テーマをやめた方がいいとはどういう意味でしょうか。私の方ではもう研究計画書に沿って研究を進め、フィールドへ調査に行く計画も出してあります。調査のための予算も確保しました。なのに、なぜ研究をやめなければならないのでしょうか」
「君の研究テーマは面白くないからだよ」
「え?」
ますます耳を疑った。
よく聞けば、僕が研究の対象にしていた政治制度がすでに消滅しているとのことで、これ以上は研究を続ける意味がないという。
でも、僕もそんなことは既に知っていて、その制度が別の名前の制度として今も機能していることも知っていた。面談当日に配布した資料にもそう書いておいた。
それでも、授業担当の先生はこう言うだけだった。
「君の研究テーマは面白くない」
そんな理由で研究ができなくなるなんて思いもしなかった。
よく考えてみれば、入試のときに面接担当の先生が少し困ったような顔をしていた。
それは、研究テーマについて説明しているときだった。当時、研究対象の政治制度はまだ存続していて、その時点では面接担当の先生も「研究をやめたほうがいい」までは言えなかったのだ。
でも、好きでずっとやってきた研究テーマを変えることは、僕にはできなかった。
この大学院に入るしかなかった。
 
「君の研究テーマは面白くないからだよ」
そこから、僕の大学院生活は暗転した。
好きだった研究テーマで研究ができなくなり、研究テーマを最初から考えなければならない。
でも、僕にはあれ以上に好きな研究テーマはなかった。
仕方なく、ある授業で少し面白いと思った分野にテーマを変えたが、もう研究をしたいという情熱は湧いてこない。
当然、代わりのテーマの研究には身が入らず、長続きしなかった。
結局、研究テーマは3回も変わった。
3回変わっても、僕の気持ちに変化はない。
僕の大学院での研究は、消えようとしていた。
もとを辿れば、自分が悪かったのだろう。
入試のとき、面接担当の先生の反応はあまり良くなかった。面接担当の先生を説得させられなかった時点で、僕の研究は崩れ始めていた。このことに、気がつくのが遅すぎた。
その結果が、「君の研究テーマは面白くない」だ。
「もう大学院をやめようか」
真剣にそう考えたこともあった。
もう耐えきれなかった。正直、大学院をやめて早く就職したかった。
それでも、何とか研究らしいことはしなければならなかった。
「研究したいことが研究できなくなったので、やめました」
これは他の人が聞いても納得しないだろうし、大学院という環境の中でまだ何か得られるものがありそうな気もしていた。
「何かを得たい」
希望につながるものを手にしたくて、這いつくばるような思いで日々を過ごした。
そんな日々の中で見つけた楽しみは、書くことだった。
僕は天狼院書店という書店でライティングゼミというゼミに通いいっている。
ゼミでは文章を書くためのコツを習っているけど、最初のうちはコツが掴みづらかった。
でも、何か月か文章を書いているうちに文章は少しずつ良くなっていき、書店の人からもいくらか好評価をもらえるようになっていた。
「自分は書くことが楽しいんだ」
そんな自覚を持ちはじめ、必ず毎日文章を書くようになった。
 
すると、不思議なことが起こった。
研究での成果を見せるための論文を書くのが楽しくなってきた。
以前は論文を読むことすら嫌気がさしていたのに。
「なんでだろう」
僕は、ライティングゼミでエッセイのようなものばかりを書いてきた。
決して、論文を書くのに直接役立つことは教えてもらっていない。
なぜ、論文を書いていて楽しいのだろう。
 
この問いの答えは、以外なところからでた。
僕が、研究の指導をしてもらっている先生に論文の書き方を教えてもらったときのことだった。
「先生、論文って色々書かなければいけないことがありますけど、どうしたら内容がうまく伝わるんでしょうか」
「それは、分かりやすく書くことだよ。他の人が読んで何が書いてあるか分からないような文章があるようでは、論文とはいえない」
僕はハッとした。
文章を分かりやすく書くことは、ライティングゼミで散々教えられてきたことだった。
この他にも、先生から論文を書く上での注意点を教えられた。
でも、そのほとんどがライティングゼミで教えられてきたことだった。
ゼミで教えられてきたことは、毎日エッセイを書くことで習得してきたけれど、僕はいつの間にか論文を書くことまでも楽しいものにしていた。
「そうか、論文を書くことも意外と楽しいものだったんだ」
そう思った瞬間、少し今までの研究に対する嫌な気持ちが薄らいだ気がした。
 
僕は今でも論文を書いている。
僕にとって、論文を書くことはもう一つの「ライティングゼミ」になっている。
論文だって文章であって、書くことで文章を書くコツに気がつける。
そして、気がついた分だけ楽しく文章が書ける。
これは、以前は感じられなかった心地よい感触だ。
「やっぱり、大学院をやめなくてよかった」
そんなことを思いながら、今日も僕は論文も楽しんで書けている。
ライティングゼミのエッセイと共に。
 
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2018-11-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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