メディアグランプリ

嫌いで嫌いで堪らなかった土曜日の小学校


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記事:黒崎英臣 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
小学3年生のころ、僕は土曜日の学校が嫌いだった。
 
「今日は、学校に行きたくないなぁ……」
 
何度、そう思ったことだろう。しかし、特にいじめられているわけでもなく、具合も悪くないので、休むわけにはいかない。毎週土曜日、学校に向かう足取りは重かった。授業は午前中しかなく、荷物は少ないのに重く感じるランドセル。とにかく学校に行きたくない。はやく4年生になりたかった。そうすれば、僕の嫌いな学級会をしなくてすむからだ。
 
 
僕が小学校3年生のころ、土曜日に40分間の学級会があった。僕は、この学級会が嫌いだった。厳密にいうと、学級会が嫌いなわけではない。僕の役割が嫌いだった。僕の役割は、学級会の議長だったのだ。クラスの前に立ち、司会進行し様々な意見をまとめ、最終的に一つの結果を出す。それが議長としての役割。この役割が全く果たせず、意見をまとめることができなかった。クラスから様々な意見がある。それをまとめるなんて、僕にはできなかった。
 
 
ある日の放課後、担任の先生に呼び出された。
 
「もっとしっかりしなさい!あなたは議長なんだから、しっかり学級会をまとめて!」
 
僕は悲しかった。まとめろ、と言われても、その方法が分からない。別にまとめることをサボっているわけではなく、どうしたらいいのか分からないのだ。当時、学級会の議題が何であったかは覚えていないし、そもそも何故、学級会の議長になったのかも覚えていない。多分、僕のことだから『議長』という言葉の響きだけで立候補したのかもしれない。覚えているのは、議長の役割が何かもわからずにその役割に就き、実際にやってみたらボロボロで怒られたということだ。
 
実は、学級会の議長は2人いた。僕とS君だ。2人一緒に前に立ち、学級会を仕切る。しかし、僕は議長としての役割を果たすことができない。一方のS君は、クラスの意見をまとめることができ、見事に議長の役割を果たしている。自然と僕は、議長の役割をS君に任せ、クラスの前に立ってはいるものの完全に名ばかりの議長となった。当時の僕は、悔しいと思いはなく、ただただ重荷が軽くなって少し安心した気持ちだった。こうしてS君に守られた形で、4年生へと進級し、議長の役割から解放されたのだ。
 
 
それから10年後、僕は地元カラオケ店でアルバイトをしていた。肩書はリーダー。バイトをまとめる役割だ。そのカラオケ店では、月一回、社員、アルバイト全員が集まる全体ミーティングがある。ここでの役割は、司会進行と意見をまとめること。奇しくも学級会の議長と同じ役割を担っている。小学生の時と違うのは、責任感だ。リーダーとしてのお金をいただいているし、普段からアルバイト育成や売上アップの企画などもしているため、アルバイトとは言えそれなりの責任感を持って臨んでいる。しかしだ。責任感はあっても、ミーティングで意見をまとめるスキルがあるかというと、小学生の時から多少毛が生えたようなものだ。
 
全体ミーティングで議題を提示し、ひとりひとりの意見を聞いていく。自分なりに意見をまとめ発言するも、ポカーンとしている人や納得していない表情の人ばかり。多分、着地点が悪かったのだろうと、あれこれ話すがドンドンと脇道に逸れ、話を元に戻そうと何度も同じ話をする。ついには他のバイトから、
 
「それ、さっきも聞きましたよ」
 
と突っ込まれ、飽きられる始末。小学生の頃から何も変わってない自分がとても恥ずかしく、悔しかったのを覚えている。しかも、ちょうど新社員が入ってきて、司会の役割は新社員にバトンタッチ。汚名返上の機会も失い、大学を卒業することになる。
 
 
それから20年たった今、僕は様々なミーティングを取りまとめている。セミナーやイベントの統括として、チームを作り、メンバーの話を聞き、全体のバランスを整える。そんな仕事をしているのだ。意見をまとめることができなかった学生時代を考えると、嘘みたい。しかし、全体をまとめる統括としてお声がかかるのだから、人生というものは面白い。
 
僕がミーティングで意見をまとめられるようになったのは、ゴールを明確にするようになってからだ。ミーティングが終わった時に、いったいどのような状態になっていたいのか? そのゴールを明確にし、意識する。それだけでミーティングの質は大きく向上することがわかった。これは、カーナビのようなもので、現在地とゴールが分かっていれば、自然と必要な意見や不要な意見が見えてくる。とりあえず出てきた意見を全部まとめようとしても無理な話。ゴールによって取捨選択ができるのだ。道に逸れても、ゴールが分かっているからすぐに戻って来られる。ゴールを明確にする。それだけだ。
 
今思うと、学生時代の僕には、ゴールが見えていなかった。議題は上がっていて、ゴールは提示されていたにもかかわらず、それが見えず、全員の意見をまとめようとしていたのだ。それでは、まとまるものもまとまらない。時間ばかりロスしてしまう。そんなミーティングを僕はしていたのだ。
 
ゴールを明確にする重要性は、ミーティングだけでなく、イベントもセミナーもプレゼンテーションも同じように感じる。先にゴールを明確にしないと一貫性がなくなってしまうのだ。その活動が終わった時にどのような状態になっていたいのか? 自分が欲しいものは、シッカリと認識しておきたいものだ。
 
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2018-11-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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