メディアグランプリ

幸せってなんだっけ


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記事:望月祥子(ライティング・ゼミ平日コース)

ポストを開けたら、一通のかしこまった封筒が目に入った。
友達からの結婚式の招待状だ。

「しょうちゃん、今度結婚するよー」
「祥子、今度赤ちゃんが産まれるー」
時々届くそのお知らせは抜群の破壊力を持つ。おめでとうと思いながらも私の心がちょっとトゲトゲしているのはどうしてだろう。
仲の良い友達の幸せな報告が嬉しいのに、何故か手放しで喜べない。それは34歳独身彼氏ナシという私の現状がそうさせるのだろうか。
うらやましいのか、自分がこの年齢で独身ということを気にしているからか。
送られてきた結婚式の招待状とにらめっこをする。

何故独身と既婚でこんなに扱いが違うのか。そう思ったことはいくつもある。
そしてそれは30代をすぎて如実にあらわれた。
知り合い程度の関係性の人に言われる
「まだ結婚してないの。いきおくれちゃうわよ」という言葉。
申し訳ないけど私のことをもっと知ってからそのセリフを言ってください。

「女の幸せは結婚して子供を産むことよ。30歳すぎたら誰ももらってくれないわよ」
私は看護師です。妊娠は場合によってはパートナーの身体の事情で望めないことを知っています。そして女の幸せはそれぞれ違うのではないでしょうか。
言い返さないけれど、心の中でそうつぶやいていた。
その人たちにとっては心配の言葉でも、私にとっては雑音にしか聞こえないのだ。

小学校の時に一度は言われたことがあるだろう。
「自分がされて嫌なことは人にしてはいけません」
これの応用編が
「自分の幸せが相手にとっても幸せ」
なのではないかと思っている。
もちろん結婚して幸せ、子供を産んで幸せ、子育てをして幸せ。その気持ちだって分かるし憧れる。
でもそれを他人に要求したり押し付けたりする人が一部いる。だから私の肩身がどんどん狭くなるのだろうか。

仕事が楽しすぎて結婚に惹かれなかったのだ。
昔付き合っていた人の
「今度ニューヨークに転勤になった。一緒についてきて欲しい」
とういう申し出を
「仕事が楽しいから無理です」と断ったのはまぎれもない私である。
看護師の仕事が楽しくて先輩にも後輩にも恵まれて、もっとやりたいことがたくさんあった。
その時、知り合い程度の関係性の人に言われたセリフは大半がこれだ。
「勿体ない。結婚して幸せになれるのに」
結婚して幸せになれる? それってなんだろう。
私のその時の幸せは、結婚ではなかった。
そしてやっぱりその彼と結婚しておけば良かったと思ったことはない。

一緒にニューヨークについてきて欲しいと言われた。その話を最初に話したのは幼馴染のミサだ。そして勿体ないと言われたことも同時に伝えた。
「それはさ、そうやって言う人たちがスペックだけでの判断だからでしょ。ニューヨークじゃなくて、アフガニスタンだったらその人たちは考えなさいとか危ない目にあうとか言うんじゃないの。今の仕事をすることよりも魅力的な人なら祥子はついて行ったんじゃないの」

相手の肩書きではなくその人柄に興味を持つミサらしい考え方だなと思った。

30代を過ぎて結婚していないのは本人に欠陥がある。
売れ残り。
親を安心させてあげなさい。
これらは実際私が全て言われてきたセリフだ。

結婚式の招待状を見ながらスマホのLINEを開いてミサのアイコンをタップする。
「こんなこと言うの変かもだけど、友達の結婚とか出産とか喜べない自分がいて悔しい」
と送ったら電話がかかってきた。

中学生の頃、同級生の男子たちが女子の顔のランクを点数で表すという遊びをやっていた。一時とても流行った。顔とスタイルだけのカースト制度。勉強も運動神経も加味されない。
ミサは1位だった。
自慢気だったのはミサではない。採点をした男子のほうだ。
「全員でつけてやったんだぜ、お前が1位だって」
そう言いながら男子がランキング表を渡した瞬間、ビリビリと音が鳴った。
「人に点数つけるとか何様のつもり。全く嬉しくないしこんな遊びになんの価値があるの」
次の日から女子ランキングの遊びはなくなった。

ミサが言う。
社会人になると営業成績とか、順位とか成功するにはとかそういう言葉が増えるからね。
祥子は私のこと可哀想って言わなかったじゃん。昔、父親がいない私と遊んでくれてありがとうって言ったらすごく怒ったじゃん。
その人にはその人が信じているものとか、価値観があるからね。伝え方がちょっと下手なだけだよ。

私が焦っていたのは、勝手に人生に負けていると思っていたのかもしれない。
結婚している、していない。
そのことに点数なんてつかないし、人生は勝敗ではない。幸せのカタチは自分が決めればいいだけのことだ。
なんでそんな大切なこと忘れていたんだろう。

ミサにありがとうと言って電話を切る。
さっきまで、にらめっこしていた結婚式の招待状に目が止まる。

どんなウエディングドレスを着るんだろう。
どんな顔をして笑うんだろう。
招待状の出席の文字に、とびっきり丁寧にマルをした。

***

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2018-12-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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