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メディアグランプリ

人生で大切なことはお風呂で息子から教わった


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:高良祐次(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「パパ嫌だ! ママがいい!」
2歳6か月になる僕の息子は、絶賛イヤイヤ期の真っ盛りだ。
 
「パパお仕事お休みの日だから、パパとお風呂入ろうよー」
「パパ嫌だ! パパと入らないー! ママとがいい!」
「そうだよねぇ、ママがいいよねぇ(うーん……まいったなぁ)」
 
この5月から息子を幼稚園に預け、妻は仕事に復帰する。
僕が休みの日は息子をお風呂に入れる担当を仰せつかった。
 
これまでは、専業主婦だった妻が毎日お風呂に入れてくれていた。
僕が休みの日は家族みんなで入ったりしていた。
みんなで入るときは妻が先にあがって、保湿剤を塗ったりオムツをはかせたり髪を乾かしたりの準備をして待っているのだ。
妻が浴室から出ていくと息子は叫ぶ。
「ママのとこ行くー! ママがいい! マ゛マ゛―!!」
「ママのとこに行くならゴシゴシして拭いてから行こうね」と言ってなだめすかし、体を拭く前に浴室を出ようとする息子を時には少し力ずくで引き止めたりした。
 
「パパ嫌だ! ママがいい!」
これは何もお風呂に限ったことではない。
オムツの交換にしたってそう。歯磨きの仕上げにしたってそう。眠くなった時だってそう。
いつだってパパよりママなのである。
 
「ずっと一緒にいるんだから、それでパパがいいって言われたらそれこそショックやわ」
妻はそう言って慰めてくれているのか、もしくは、甘いわねと思っているのか知らないが。
確かにそれはそうだ。
いつも一緒にいるし、頬や手も僕みたいにガサガサしてないし、いい匂いがする、ママのほうがいいに決まっている。
僕が小さかったころは、母は仕事に家事に忙しかった。だからいつも相手をしてくれた祖母が好きだった。お風呂も祖母と一緒に入っていた。
母から一緒に入ろうと言われたかどうかは覚えてない。だが、もし言われたとしても「嫌だ、ばあちゃんとがいい」と言っていたかもしれない。
一緒にいる時間が長ければ長いほど、好きになるのは当然だ。
 
しかし悠長なことは言っていられない。
僕が休みなので妻は普段より長い時間のシフトに入っている。
やるしかないのだ。息子との戦いに勝たなければならない。
少しでも役に立つ作戦があれば参考にさせてもらおう。
藁にもすがる思いで子育ての本なんかをむさぼり読んだりもした。
妻の接し方を観察したりもした。
 
気付きがあったのは4月。
入園式に参加した時のこと。
式の最後に園児と保護者がクラスごとに集まって、担任の先生からお話があった。
先生はいきなり手遊びを始めた。「おべんどうばこのうた」や「グーチョキパーで何作ろう」などの、歌いながら手や体を動かすアレだ。
園児たちは何か楽しいことが始まると察したのか、先生の歌に合わせて遊びだした。
先生は最後に園児たちがお座りするように手遊びの歌で誘導する。
みるみるうちに園児たちは静かにお座りしたのだ。
「そうか、この手があったか!」
さすが子育てのプロだった。
 
まずは子供の興味をひく。そして聞いてくれる準備が整ったところでこちら側の主張をするのだ。
思い返してみると妻もそんなふうにしていたのだ。
歯磨きの仕上げ磨きの時は、バイキンマンのぬいぐるみを目の前にかざして息子が逃げ出すのを阻止していた。
寝転がせてオムツを替える際にお尻を拭く時は、寝返りしないようにヘリコプターのトミカを持たせて遊ばせていた。
そんなふうに息子の興味をひきながら、こちらの主張をさりげなくしていたのだ。
世の中のママは誰に教わらずともそんなことをしていたのか!
こんなに身近にも子育てのプロはいた。
 
これまでの自分の行いを振り返ってみると、僕はいきなりこちらの主張から始めてしまっていた。
「パパお仕事お休みの日だから、パパとお風呂入ろうよー」
これでは息子からしたら「は? パパが休みかどうかなんて知らんよ」である。
当然「パパ嫌だ! パパと入らないー! ママとがいい!」となる。
そうではなく、「次は何して遊ぶ? お風呂で水車しようか! くるくる水車くーるくる♪」と誘い出す。
服を脱がし、覚えた1から10までの数字遊びで湯船に浸からせ、泡で遊ばせながら体を洗う。
もちろんいつもそんなに上手くいくわけではないが、以前は泣きながら浴室を飛び出していたのは、少しずつではあるが改善されつつある。
 
そして気付いてしまった。
これは子育てというか子供に対する接し方だけではなく、仕事や自分自身にも通用するコミュニケーションの取り方ではないか。
相手の興味があるポイントを突いて質問すること。それから自分たちの商品が相手のニーズを満たすものであると主張すること。
相手が以前から欲しがっていたものが値引きされているからとショッピングに誘い出し、自分も欲しいものがあるとさりげなく伝えること。
まず相手の興味や潜在的な欲求を満たしてあげる。そうすることで相手に動いてもらいやすくなる。
息子からそんなことを教わった。
 
「パパお風呂入ろう!」
そんなふうに言われる日を願って、今日もお風呂に誘う。
「次はお風呂で遊ぼうよ!」
 
 
 
 
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2019-05-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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