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おひとりさまだっていいじゃない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:植咲えみ(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
 
 
「何名様ですか?」
 
 
レストランにいくと良く聞くおきまりのセリフだ。
 
 
私は聞こえるか聞こえないかぎりぎりの声で「ひとりです……」と答える。
 
 
すると聞こえなかったのか、もう一度声を張り上げて「おひとりさまですか?」なんて確認されてしまうからたまったものじゃない。
 
 
見ればわかるじゃないか、ひとりに決まっているだろう。
 
 
そのうえ、「おひとりさま、ご案内で~す」なんて店内に響く声で言われたらもう消えてしまいたくなる。
 
 
何人かで来ることが前提であるレストラン側からしたら、人数を確認することは重要だ。悪気があって言っているわけではない。
 
 
それはよくわかる。わかるのだが、おひとりさまの肩身の狭さをもうちょっと配慮して、静かに案内してはもらえないだろうか。
 
 
そんなふうに思っていた私は、いつしか右手の人差し指で1のポーズを作り、目で申し訳なさそうに合図すると、気の利くお店の人ならひとりでも気の使わない静かな場所へそっと案内してもらえる、という技を習得した。
 
 
ひとり焼肉、ひとりカラオケ、最近ではおひとりさま専用のお店が次々とできてきている。
 
 
ひとりでディズニーランドに行く「ひとりディズニー」という言葉も定着してきている。年々おひとりさまの壁は徐々にではあるが解消されてきているように感じる。
 
 
とはいっても、まだまだそれはごく一部の話に過ぎない。
 
 
みなさんはどこまでおひとりさまで行けるだろうか?
 
 
私はカフェやファミレス、その他大手チェーン店で、しかも一回入ったことのある飲食店以外はひとりで入ることに抵抗がある。
 
 
それはおひとりさまで入っても居心地が悪くならない店なのかどうか、見極める必要があるからだ。
 
 
ひとりで映画、これには抵抗はない。カップルだらけだったりすると抵抗がないといえば嘘になるが、オンラインのチケットで開演時間ギリギリに行けばあとは暗い映画館。周りの目はあまり気にならないからだ。
 
 
ひとりで買い物、これも問題ない。むしろひとりでじっくり商品吟味して買いたい。
 
 
じゃあひとりで参加するライブはどうだろうか?これに関しては無理と言わざるを得ない。ひとりで参加するライブで盛り上がれる自信がないからだ。
 
 
こんな感じで、ひとりで行ける許容範囲はきっとみんな違うはずだ。
 
 
わたしは基本的にひとり行動が好きだ。
自分の時間を興味のあることに全力で使いたいからだ。
言い換えれば非常に自己中心的であるし、協調性がないことは十分自覚している。
しかしおひとりさまは楽しくて、一生やめられそうにないのだ。
 
 
どうせやめられないならば、おひとりさまを満喫できるように、私の中のおひとりさまの壁を取っ払って行きたいと思った。
 
 
そこでまず年始に「ひとりラーメン」という目標を立てた。
くだらない目標に思えるかもしれないが、おひとりさまを満喫するには超えなければならない壁だった。
 
 
行きたい店も見つかった。
店内の様子も事前に調べた。
場所も分かる。
あとは入るだけ。
しかしなかなかハードルが高かった。
 
 
入り口には見えないバリアが張ってあり、私はなかなか足を踏み入れることができないのだ。
 
 
これができなかったら、ひとりディズニーなんて程遠い。
「よし、やってやる!」
 
 

そう思ったはずなのに……
 
 
私は結局ファミレスでラーメンを食べていた。
 
 
違う違う、そうじゃない。
私はラーメン屋でラーメンを食べるはずだったのだ。
 
 
こうして私のひとりラーメン計画は失敗に終わった。
 
 
そんな失敗も忘れかけたころ、銀座で友人とランチをする機会があった。
 
 
せっかくの銀座だから、フレンチのコースを食べようということになった。
 
 
一人ではとても行けなさそうな場所だからだ。
 
 
しばらくして白いポロシャツにチノパンの、30代くらいの男性が店に入ってきた。
 
 
連れ合いがいる様子はなく、その人はカウンターに案内された。
 
 
そしてなんと一人でフレンチのコースを頼んだのだ。
 
 
私も友人も正直びっくりした。
 
 
彼はフレンチのコースを食べながら、シェフと話をしている。なんなら昼間からワインまで飲んでしまっている。
 
 
シェフとの話をこっそり聞くと、どうやらはじめての店らしい。完全に上級者である。
 
 
そしてゆったりと食事を楽しんで、そしてさわやかに帰って行った。
 
 
そこには見栄や羞恥心は感じられなかった。
 
 
例えていうなら、変わった衣装を着てランウェイを堂々と歩くパリコレモデルのようだった。
 
 
むしろ楽しんで何が悪い、と言わんばかりの堂々たる余裕があった。
 
 
彼は人目を気にせず、自分の時間を思いきり堪能していたのだ。
 
 
そうか、人の評価を気にする他人軸じゃなくて、自分が楽しいかどうかの自分軸でおひとりさまの時間を堂々とすごすべきなのだ。
 
 
私はこうしておひとりさまを楽しむためのヒントをもらった。
 
 
きっとわたしのおひとりさまの時間も楽しめる、そう思えた。
 
 
そうと決まればまずはラーメン屋のリベンジである。
 
 
さぁ、あなたもおひとりさま時間を楽しんでみてはいかがだろうか?

 
 
 
 
 

***

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2019-08-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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