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あんまりかわいくない方の天然として生まれてしまった悲劇《川代ノート》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」で「読まれる文章」の書き方を学んだスタッフが書いたものです。

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私は、天然です。
こういうことを言うと、たいていの場合、「いやいや自分で天然っていう人は本当の天然じゃないから。本物は自覚してないからね、自分の天然さを」と言われる。うん。たしかにそう思う。実際、私もそうだった。「あたしい〜天然なんですよお〜」なんて甲高い声で髪の毛をくるくるいじりながら言う女は往々にして天然ではなく、とても頭がよく観察力のある女性である。天然な女は周りから愛され、男にある程度モテると思っているからこそ天然のふりをするのである。本当の天然というのは別に自分が天然かどうかなど気にしていない。ただ「自分らしく」あるだけである。綾瀬はるかしかり。菅野美穂しかり。そして天然の女というのは男を癒すことができる。ちょっと変なことをしても「まっ、〇〇ちゃんだから仕方ないよね〜」なんて言葉で済ましてもらえる。許される。そんな天然がゆえの恩恵を受けたいと思うのは仕方のないことだ。私だってなんど「天然になりたい」「得したい」「仕方ないなあ、許してあげるよ〜とか言われたい」と思ったことか。そうだ、私はずっと天然の人に憧れていたのだ。自分が天然であるということに気がついていなかったからだ。

そう、私は天然。本当に天然なのだ。信じてくれ。本当なんだって。自分でも気がつかなかったけれど、どうやら、私は天然らしいということがわかってきたのだ。でも天然は天然でも、私は綾瀬はるか側の天然ではない。最近になって、「天然」とひとことに言っても、二種類に分けられるということがわかってきたのである。

まず、天然とは何か。それを考えてみよう。のん。綾瀬はるか。菅野美穂。彼女たちに共通するのは「不思議ちゃん」とか「ふわふわしてる」とか「つかみどころがない」とか言われるところ。そして、この時何より重要なのは「癒し系」というところである。

ちょっと不思議で、何を考えているかわからなくても、かわいいのである。むしろ何を考えているかわからないからこそかわいいのである。そして癒されるのである。天然の女というのは、人とずれた発言やちょっと空気のよめない言動をする代わりに、プライドがそれほど高くないことが多い。「私は真っ当な人間でありたい」とか「恥ずかしい思いをしたくない」とか、そういう見栄とか承認欲求とかが一般の人よりも少ないのである。だから一緒にいて気が楽だというのはすごくよくわかる。私の友人にも天然の子が何人かいるが、彼女たちに共通するのは「気を使わなくていい」ということだ。「エセ天然」ではなく「本物の天然」だった場合は、彼女たちは周りに気を使わない代わりに、自分に気を使ってもらおうとも大して思っていない。いい意味で自分の世界と周りの世界を区別している。だから楽だし、一緒にいても何も考えなくていい。ぼーっとしていられる。私は基本的にはちゃんと気を使ってくれる人と友達になりたいと思う方だが、ときどき、そういう何も考えなくてもいい人と一緒にいる時間を欲することもある。

天然の人というのは、いい意味でゴーイングマイウェイというのか、自分の世界を持っている。自分と周りがずれていることに違和感を覚えない。そういう人種が「天然」だ。いやー、羨ましい限り。

そう、羨ましい。羨ましい限りである。そうだ。私も行きたかった。そっちの世界に行きたかった。何でこっち側なんだよ。どうせ天然なら「かわいい方の天然」になりたかったよ!!!!

そうなのだ。天然には二種類ある。それはずばり「かわいい方の天然」と「かわいくない方の天然」である。そして私は「かわいくない方の天然」なのだ。これはタチが悪い。本当にタチが悪いというか、損である。非常に損である! もうやめたい。やめてしまいたい。誰かこの「かわいくない方の天然」を脱する方法を教えてくれ! でも無理なのだ。これは「かわいくない方の天然」として生まれてしまった私の宿命なのだ!

なら私のどこが天然なのか。「天然は自分が天然であるということを自覚していない」という理論を逸脱している私は本当に天然なのか。いや、天然なのだ。だって自分が天然だということを自覚していないのだから。そのときは。

私は今でこそ「自分は天然的行動をとることがたまにある」と自覚するようになったが、もともとは「天然になりたい」と思う程度には天然であることを自覚していなかった。むしろ自分は真っ当な人間だと思っていた。私ほど常識や周りの目を気にする人間はいないと思っていた。
でも何も考えずにいたある日、悲劇は起きた。それは就活中のグループディスカッションでの出来事だった。
私は大学三年生のとき、住宅系の企業のインターンシップに参加していた。結構時間をかけるインターンだったと思う。学生数人でチームを組み、その会社の人事担当にプレゼンをした。学生ながらに色々なアイデアを出し、最後には涙が出てくるほど熱狂した。

そんなグループディスカッションの終わり、反省会をメンバーでしていた時である。
稲妻のような衝撃が、私の脳天を貫いた。

「さきちゃんって、KYだよね」

KY。
けー、わい?

「えーと、それって」

「うん。空気読まないよね」

にわかには、何を言われているのか、さっぱりわからなかった。

「っていうか、天然?」

うんうん、わかるわかるー。などと私が天然で空気が読めないという話題で盛り上がるグループの中で、「マジで? ごめんごめーん、そうとは知らなかったわー」などと明るく言うほど強靭な精神を私は持ち合わせていなかった。
そのあとどうやって家に帰ったかは覚えていない。でも帰るなり私は母親にこう詰め寄った。

「ねえ、私って空気読めないの!?」

「は?」

いきなりそんなことを言われた母親は驚いた顔をして私を見ていた。

「私って、天然!?」

けれどそう言うと、何かに納得したようにあー、と声を漏らす。

「たしかに、天然なところはあるよね」

「えっ!? どこが!?」

「いや、ほら、たまにあるじゃん? 変なことするときとか、抜けてるときとか」

衝撃だった。何も思い出せない。変なことをするとき? おかしなことをするとき? 抜けてるとき? 嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。そんなはずはない。私は常識人であり空気が読める人間のはずだ。周りと歩調を合わせていける人間のはずだ! 私が天然だなんてそんなことあるはずがない! だって天然ならもう少し得をしているはずじゃないか! 得をしていないどころか損ばかりしている私が天然だなんておかしい!

でもおかしいのは私の方だった。
その事実に気がついたのは、その日の夜だった。

「ほら、天然ってさ、そういうところだよ」

疲れ切った私があったかい風呂に入浴剤(バブ的なやつ)を入れたあとのことだった。湯加減をチェックしに行った母がそう言って居間に戻ってきた。

「え? どういうこと?」

「あんた、入浴剤のビニール破かないで、そのままお風呂に入れてたよ。これでお湯に溶けると思ったの?」

母親の手の上には、ビニールに包まれたままの入浴剤が乗っていた。
あれ、と思った。私はどうしてそのまま入れちゃったんだっけ。いや、そうだ、思い出した。

「いや……お湯に入れるとビニールが溶ける系の入浴剤かと思って」

「いやいや、そんな入浴剤ないわよ」

「ほら、ボンタンアメみたいに溶けると思ったんだもん」

「……」

呆れた目で母親が見ていた。

「これで間違えて入れちゃっただけなら普通のドジな子ってだけだけど、さきは本気でそれで合ってるって思ってるところが天然だよね」

ああ、なるほど。そういうことか。そういうことか!!!

すべての糸が繋がったような気がした。なるほど、なるほど、なるほど! 今までのあれはそういうことだったのか! 高校生のとき、ゴマだれしかないしゃぶしゃぶ屋さんに「ポン酢ありますか?」と聞いてしまった時のあの微妙な顔は。父親と母親がけんかしたとき、よかれと思って父親に「お母さんもうお父さんの顔を見たくないって」といった時のあの父親の切なそうな顔は。あれはそうか。そういうことだったのか! あのとき変な空気になったのは私がKY的行動をしていたからだったのか。そうか。私は天然だったのか!

驚いた。
もう本当に驚いた。驚いたなんてもんじゃなかった。

私は天然だったなんて。こういう天然も存在するなんて。しかしなんて損なんだ。天然なのに誰からもかわいがられない。「まーさきちゃんだから仕方ないよね〜」なんて言われたこともない。「ただの迷惑な奴」なだけの天然だなんて。こんなに「かわいくない方の天然」だなんて! いらないよ。そんな天然いらないよ! 

泣きそうになった。今までの自分の行動に疑いを抱いていなかった私自身のことも情けないと思った。なんということだ。もういやだ。やめてしまいたい。せっかくなら「かわいい方の天然」になりたかった。いや、天然の要素ならあるのだから、なれるんじゃないか? 変更はきかないのだろうか。

いろいろなことを考えたが、結局、私はあのときから「かわいくない方の天然」であることを自覚し、そして、なるべくそれがばれないようにして、こそこそと生きている。
これほどに窮屈に生きなければならない天然があるだろうか? かわいそうだとは思いませんか? もういっそ「天然保護」を受けたいほどである。私が天然であるが故に被っている損は計り知れない。ならば非天然民たちから少しくらい恵んでもらってもいいような気がする。ひどい。ひどすぎる。なんということだ。私はかわいそうだ。

だから私はいつもヒヤヒヤしている。自分が何かおかしな行動を起こすんじゃないかと、ビクビクしながら生きている。ああかわいそう。私だって「さきちゃんといると癒されるわ〜」とか「本当ふわふわした空気まとってるよね!」とか言われたいわ。周りの目を気にしちゃう天然とかもう色々な要素が飽和してめちゃくちゃなことになってるよ。本当いやだ。誰か同情してくださいよまったく。

天然であることにここまで悩んでいる天然がいるだろうか。これほど苦しんでいるのにどうして私はおかしなことをしでかしてしまうのか。むしろみんなはどうしてそんなにまともな行動をとれるんだ。誰か助けてくれ。どうにかしてくれ。私だって、私だって大事なことに限って忘れるとか、自信満々に反対の電車に乗るとか、レモンを買いに行ったスーパーでシュークリームだけ買って帰るとか、そういうことをもうしたくないんだ……。こんな天然ボケでいるのをやめたいんだ!

あれ? これってもしかして。
天然に二種類いるんじゃなくて、私がただボケてるだけなんじゃないのか。そうなのか。なんかそういう気がしてきた。……いや、そんなはずはない。私もいつか可愛い方の天然になれる日が来るはずだと、信じてるぞ。マジで。

***

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2016-12-07 | Posted in チーム天狼院, 川代ノート, 記事

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