祖父母の代から40年続く元中華料理店に、「神戸天狼院」の出店を選んだ理由《神戸天狼院「編集会議」3/14(火)スタート!》
朝、出社して、メールの送受信ボタンを1回押す。新規受信、0件。
当然か。もはや、なんとも思わなくなった。
パソコンのハードディスクが回転する音だけが虚しく響く。
その当時私は、自社ビルの空室に出店してくれる企業・お店を探していた。
祖父母の代から続いた中華料理店「だった」フロアに、新しい心臓を入れる。
それが、自分の使命だった。
2年前の夏の日、思いつめた様子で、父が神戸から東京にやってきた。
「店を閉めることに決めた」と告げに来たとき、私が見たのは、飲食業にも人生にも疲れ切っている父の姿だった。それは同時に、メーカー勤務のサラリーマンだった私の心を揺さぶり続ける、強烈な問いかけが一斉に芽吹いた瞬間でもあった。
「お前、このままでいいのか」「神戸は、このままでいいのか」
「どうする」「俺はどうしたいんだろう」
自問自答の結果、私はあくる年の年度末で、お世話になった会社を去ることを決めた。
4月になり、神戸に戻ると、会社の広告を作って、「これは」と思う会社や新進気鋭のお店の連絡先を辿り、直接コンタクトを取る試みを始めた。
ビルのある三宮駅前・生田神社周辺は飲食店が立ち並ぶエリアで、通行量も多いけれど、通り過ぎて行くだけの人も多い。もっともっと面白くできる可能性が十二分に眠っている場所だ。
だから、誘致するのも、神戸三宮にあったら面白いと思えるお店、ワクワクできるお店と決めていた。何より、とても愛着のある場所に入るお店だから、他ならぬ自分が納得できるお店に来てもらいたいのだ。
私は、地元・神戸に「台風の目を持って来たい」と思った。
静かな興奮を呼んだり、どうしようもなく気になって、ザワザワと胸が騒ぎだすような、好奇心をそそられるような場所。
そこに行けば何かがあるんじゃないかと思わせる場所。
まだ出会っていない沢山の人がいて、まだ出会っていない沢山の可能性が渦巻いている場所。
これは言い換えると、「お目当てになる場所」と言えるのではないだろうか。
「うちのビルに来ていただけないでしょうか」
「三宮にお店を出しませんか」「話を聞いてもらえませんか」
情熱をこめて文章にしても、メールが返ってくるのはほんの一握り、本当に一握りだった。
確かに、どこの馬の骨ともわからない会社が、仲介業者も通さずに連絡をしてくるんだから、無視されるのも当然だ。中には興味を示してくれた社長さん自身が返事をくれる会社や丁寧に回答いただけるお店もあったが、やはり契約には至らなかった。
不動産仲介業者に頼らずにやると決めていた。私は12年ぶりに神戸に帰ってきたばかりで、仲介業者との信頼関係もない。仲介業者に丸投げして「ただ待っているだけ」というのは性に合わない。「誰にも頼れない」という状況は、見方を変えれば、「しがらみがない」状態じゃないか、と自分に言い聞かせた。馬鹿げていると笑われても、こだわりたかった。
そう言うわけで、ラブコールを送っても、レスポンスが返って来ないことに、すっかり慣れっこになった。
季節は、春から新緑の夏になっていた。
その日は確か、夜に花火大会のある日だったと思う。
赴任先の上海から里帰りしている同級生から連絡があり、お互いの近況報告ついでに昼飯でも行こう、という話になった。
「どこか面白いトコ、ないもんかねえ」
食後にコーヒーをかき回しながら、半ば独り言のように呟いた。
「面白いトコかぁ」
「なんかこう、度合いで言うたら、『おもしれえ!!!』ってところ」
「サイくん、確か本好きやんな。天狼院書店って知ってる?」
私はほぼ反射的に身を乗り出した。
「その名前」
つい最近、目にしたばかりの名前だ。
とある日のこと、「ご開帳された『天狼院秘本』と天狼院書店」についてのネットニュースがふと目に留まって、私は大層たまげてしまった。
入るにはいささか勇気が要りそうな、お寺のような名前の本屋が、店主の目利きで選んだ本にカバーをかけて、あえて一切の中身を伏せ、買ってくれた人にも「秘密を守って」と言っている。
それが成立している衝撃。さらに、その売り方でめちゃくちゃ売れているという衝撃。
本は大好きだけれど、「東京には何やら得体の知れない本屋が存在するもんだな」と戦慄した。
半ば、遠い存在のように思えた。
天狼院書店という名前の響きだけで、店主はきっと白髪と白髭の仙人みたいな人とか、気難しい初老の頑固親父の姿を勝手に想像していた。
端的に言えば、いくらか怖そうなところだと思っていたし、店主である三浦さんも怖い人だろうと思っていた。
そのことを話すと、「三浦さんはそんな怖い人ちゃうで」同級生は笑って訂正した。
「結構気軽にFacebookの友達になってくれんねん。ほら」
アイコンに表示されているのは、親指を立ててニッコリしているスキンヘッドの男性だ。
「……これやっぱり怖い人ちゃうん?」
とは言え、短い期間に同じ名前を2度見聞きすることに、予感めいたものを感じた。
私は猛烈に天狼院書店のことが気になり始めた。
いてもたってもいられなくなって、急いで事務所に戻るなり、パソコンの電源をつけて、天狼院書店のことを改めて調べ始めた。オフィシャルウェブサイトがあることを初めて知る。
記事を次々と読み漁っていく。やることなすこと、チャレンジングなことばかりしている。
凄まじい熱狂を帯びている文章が頭を駆け巡る。「本は世界に繋がる扉、どこでもドアなんです」全身に鳥肌が立って、ゾクゾク首の後ろ側が熱くなってくるような高揚を感じた。
目が急ぐぐらいに、文章を追った。それにちょっとの間、呼吸を忘れていたかもしれない。
とりわけ、やることに「狂」=クレイジーを籠める、という話が無性に気に入った。
こんな豪傑がいるのか。
こんな面白いことをやっている書店があるのか!!
この、とびきりユニークな、風雲児とも言える本屋さんがこれからどうなるのか、身震いしている自分がいた。
例えるなら、お祭り会場で何かがすでに始まっていて、少し離れた広場で歓声が上がっている。その歓声の発生源を知りたくなって背伸びするような、そういうザワザワする予感だ。
興味が炸裂して、空に打ち上がり花開いた瞬間だった。
きっとここが神戸に来てくれたらきっと面白いことになる。
この興奮を抑えるためにも、出店依頼のメールを打たずにいられなかった。
店主の三浦さんは空港発のリムジン・バスの待合で、たまたま、私の送ったメールを開いたそうだ。
メッセージをしっかり受け取ってくれた三浦さんは短パンにサンダル姿で、大きなカメラをぶら下げて内見にやってきた。ぐるりと見渡して、こう言った。
「ここは中華料理店ということを忘れて、劇場だと見立ててみると、素敵な場所になりそうです!」
目を輝かせた三浦さんは、怖い人ではないどころか、ものすごくフランクで面白い人だった。
打ち合わせの回数を重ねる中で、三浦さんは親指を立てて、こう言った。
「もう僕の中で、お客さんが入ってるところが見えました。イケます!!」
こうして近い将来、神戸に天狼院書店が生まれることが決まった。
「サイさん、神戸天狼院を一緒にやりませんか」と打診されたとき、自分でも不思議なほどすんなりと「はい!やりましょう!」と承諾してしまったのは、ひょっとしたら、私が夢に描いていた場所が、天狼院書店によってことごとく実現できるかもしれないと予感したからだと思う。
無謀と言える挑戦だが、三浦さんをはじめ、天狼院書店の素晴らしいスタッフの方々の力を借りながらやれるのであれば、きっと大丈夫と思ったからだ。
空っぽの中華料理店が、生まれ変わった姿で息を吹き返すイメージが、見えた。
***
はじめまして、神戸天狼院の宰井と申します。
「天狼院書店は、お客様と一緒に成長し、自在に姿を変えていく本屋です」
店主・三浦さんはそう言いました。
もうすぐ生まれることになる神戸天狼院も、そのイズムとスタイルをしっかりと継承していきます。
本を愛している人、本屋さんが好きな人、物を書くスキルを磨きたい人、カメラをもっと楽しみたい人、コミュニケーションスキルをプラス1上げたい人、人生をもっとクリエイティブにしたい人。あらゆる人のために、神戸天狼院は様々な空間と時間をご用意する予定です。
ワクワクすることなら、超がつくほど大歓迎!
ドラクエの主人公たちのように、「ちからのタネ」「かしこさのタネ」を与えて自由に育てていくイメージで、「レベル1」のひよっこ、「神戸天狼院」を私たちとどんどん成長させていきませんか!
3月14日(火)、神戸天狼院・初となるイベント「神戸編集会議」がスタートします!
「神戸といえば、もちろんこの本だよね!」「実は、こんな面白いことがあるよ!」「こんなことができるんじゃないか?」
など、お客様の声をお伺いし、これからの神戸天狼院に取り入れていく会です。
まさに神戸天狼院全体を「編集する」会となります。
ご一緒に、どこにもない書店・どこにもない神戸の空間を、作り上げたいと思っております!
どうぞ、皆さまのご参加をお待ちしております!
【概要】
日時:2017年3月14日(火)
19:00 受付開始
19:30 「神戸天狼院」編集部
21:30 閉会
参加費:一般2,000円/プラチナクラス1,000円/インターン応募生1,000円
*CLASS天狼院「プラチナクラス」の方は、本イベントに半額で参加いただけます。
定員: 30名 *定員になり次第、締め切らせていただきます。
場所:神戸市中央区北長狭通1-10-9 生田新道ビル 5F
【お申込はチケット販売サイト「Peatix」または「店頭」にて事前にお受けいたします】
※お支払い・決済がすむまではお申込み受付完了とはなりませんのでご注意ください。(当日お席がございましたら店頭お支払いも受け付けさせていただきます。)
*ご予約は、お電話・メールで承っております。
京都天狼院(075-708-3930)までお電話いただくか、またはこちらの お問い合せフォーム から、タイトル【3/14 神戸編集会議参加予約】、お名前、アドレスを明記の上、メールをお送りください。
また、神戸天狼院ではインターン生を募集します!
【募集要項】
☆年齢、性別問わず
☆履歴書、ES不要
書店の立ち上げに興味のある人
天狼院書店が気になっている人
出版業界への就職に興味がある人
自分のアピールポイントを見つけたい人
何かを始めたい人
どんな人でもかまいません! 一緒に、神戸天狼院をつくりませんか?
インターンに募集したい方は、今回のイベントにいらしてください!
※インターン応募生は割引料金で参加できます。
ー天狼院書店とはー
天狼院書店が提供するのは、「READING LIFE」という新しいライフスタイル。「本」だけでなく、その先にある「体験」までを提供する次世代型書店です。「天狼院のゼミ」をはじめ「部活」、「ファナティック読書会」など、様々な「体験」を提供しています。
2013年9月26日 天狼院書店 東京天狼院 OPEN
2015年9月26日 天狼院書店 福岡天狼院 OPEN
2017年1月27日 天狼院書店 京都天狼院 OPEN
【注意事項】
・参加者への他のイベント、セミナー、グループ、店、企業、その他への勧誘は固く禁じます。また、勧誘を見かけた場合はスタッフまでご一報ください。
・本イベントの内容の著作権は、天狼院書店に帰属します。本イベントの内容を他で利用することを、あらゆる面で、固く禁じます。
・会およびコミュニティーの運営に支障をきたすと判断した場合、任意かつ一方的に、退会をしていただく場合がございます。
天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27
〒605-0805
京都府京都市東山区博多町112-5
【天狼院書店へのお問い合わせ】
TEL:075-708-3930(京都天狼院)
http://tenro-in.com/zemi/writingsemi/34081
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