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【劇団天狼院の裏側を暴露する】なぜ芝居経験のない人が、短期間で、人を泣かせるまでの演技ができるようになるのか?《海鈴のアイデア帳》


いや、そんなの無理でしょう。

正直なところ、それが真っ先に思い浮かんだ感想だった。

普通に考えたら、できるわけがない。
しかも、あんな短期間で?
なおさら無理に決まってる。

 

2015年9月26日、2号店である福岡天狼院ができた。
どうにか少しずつ、うまく舵を取り、お店がようやく軌道に乗りはじめてきたかという頃。
オープンから半年後のことだった。

天狼院店主の三浦が、まさかの計画を口にしたのだ。

「やっちゃおう、福岡で!」

「え?」

「やるんだよ、劇団を」

「まだ東京でしかやったことないのに、ですか?」

「そう。福岡でしかできない劇団ーーー『劇団天狼院〜FUKUOKA〜』だ」

「いや、でも……」

私の口からは、しぶった返事しか出てこなかった。
その提案は、あまり現実感がなかったからだ。

「誰が率いてやるんですか? 東京から講師を送り込む訳にもいかないし……」

「それが、心配ないんだよ」

目の前の彼は、にやりと笑った。

 

「初めまして、よろしくお願いします」

福岡天狼院の運営のために、東京からしばらくやってきていた私は、初めてお会いすることになった。

演出・脚本家であり、演技指導や、自身も役者として活躍している、中村雪絵さんだった。

「彼女に、劇団天狼院〜FUKUOKA〜の顧問をやってもらうことにした!」

三浦は言っていた。

そうか、この方が、まとめていくのか。
脚本も、演出もやって、演技指導もして。
けど、この短期間で……?

頭には疑問が浮かびながらも、「こちらこそよろしくお願いします」と握手を交わした。

だが、その後発表された詳細は、にわかには信じられなかった。

 

「劇団天狼院〜FUKUOKA〜」初の公演。
出演する方のほとんどは、劇団天狼院のワークショップイベントで演技を学んでいた、お客様だった。

……え?
何年かやっていたならまだしも、まったく公演にも出たことのない方がこんなに、出演するの?

しかも、用意された期間は、わずか1ヶ月あるかどうかというスケジュール。

私は「芝居」というものをほとんどやったことがない。
だからこそ、自分に置き換えたとき、1ヶ月もない短期間で、人に披露できるようになっている姿が想像できなかったのだ。

いやいや、さすがにそれはどうなんだろう。
そりゃあオープンしたばかりで、初めての公演という事情はあるにしてもさ。
「劇団天狼院〜FUKUOKA〜」と銘打って、公式におこなうものではあるのだから。
演劇経験がほとんど「初めて」と言ってもいい方が多いキャストで、本当に公演ができるの?

正直なところ、これが最初に浮かんだ印象だった。

 

しかもそんな状態のまま、私は福岡から東京に戻ることになってしまった。

数週間だけいることができた、福岡。
別のスタッフにバトンタッチをし、福岡天狼院を後にした。

ここで私、東京に行ってしまって本当に大丈夫なのだろうか……

 

気がかりなことが、もう一つあった。

今回は初めての福岡公演にもかかわらず、スペシャル仕様な方式でおこなわれようとしていたからだ。

「劇団天狼院〜FUKUOKA〜」の公演は、その日だけ、書店が劇場となる。
もちろん、メインの演劇は、福岡でおこなわれる。

しかしプロローグとエピローグだけは、東京でおこなうというのだった。

東京と福岡を中継でつなぐ、前代未聞の「双方向演劇」だ。

 

こうである。
東京でプロローグを演じ、福岡にはそのようすが大スクリーンに投影される。
プロローグが終わると、福岡ではスクリーンが収納され、実際の演劇が始まる。

いっぽう、東京では、演者がはけ、今度は東京のスクリーンに福岡の劇のようすが投影される。

本編が終わると、ふたたび福岡のスクリーンが降りてくる。
そして東京にて演じられるエピローグを投影し、双方向演劇は幕を閉じるーーー

 

三浦からなされていたのは、そんな、まさかという内容の提案だった。

だって、遠隔地をつないで演劇を遂行するだなんて、聞いたことがない。

どうなってしまうんだろう……

 

そうしているうちに、公演日は近づいてきていた。
東京でも、福岡とつないでリハーサルをおこなわなければいけない状況だった。

稽古をおこなっている情報は入ってきていたが、私は数週間、福岡の現場のようすを見れずにいた。

ーーーいったい今、どんなふうになってるんだ?

東京と福岡をつないだとき、目にしたのは、驚くべき光景だった。

 

うそ。

思わず息を飲んだ。

これが、本当に、芝居を「ほとんど初めて」取り組んだ人の演技?

説明をしなければ、誰もが、しっかりと経験をしたことがある人の芝居だと思うだろう。
それくらいに、何も違和感がない。本当に、自然なのだ。

これまで聞いたことのない「双方向演劇」というミッションも、それが逆にアクセントとなってますます味わい深くなるような、脚本と演出で仕上がっていた。

そのすべてを取り仕切り、演技指導をし、演出をつけていたのは、まぎれもなく、あの中村さんだった。

なんだこれ。なんだこれ。なんだこれ。
練習の演技にもかかわらず、私の目からは涙が止まらずにいた。

たった数週間前までは、演技なんてやったことがないーーーそんな風に参加し始めたお客様が、どうやってこんなに上達したんだ?

役者指導の仕事だけでプロとして食べており、大きな劇団や公演への出演者も、中村さんはたくさん育ててきたということを聞いていた。

もちろん、参加していたお客様の素質が、非常に高かったこともあるのだろう。

だけれど、こんなに目に見える形で、芝居が上達することがあるのだろうか。

 

福岡での劇団天狼院・初公演は、最高の形で幕を閉じた。

けれど、私には大きな謎が残ったままだった。

なぜ、短期間で芝居経験のない方が、人を泣かせるまでの演技ができるようになっていたのか?

 

それは、中村雪絵という人物が、特別な能力を持っているからなのだ。

半年後、私は福岡に長期滞在することが決まり、今度は「劇団天狼院〜FUKUOKA〜」の秋公演を担当することになった。
中村さんの演技指導をずっと傍らで見ていて、やはり、と確信に変わった。

不思議なくらいに、上手いのである。その人の持つ、もともとの魅力を生かしたまま、舞台の上でさらに輝かせる方法に導くのが。
なんでこんなに引き出されてしまうんだろうというくらい、良いところがするすると、この方の前では出てきてしまう。
見ていて、惚れ惚れするくらいだった。
本気でその人の良さを引き出すことに、どこまでもまっすぐだった。

これが、役者指導なのか。演出なのか。

震えるくらいにぴりりと背筋が伸びた。
人を育てるとは、教えるとはこういうことなのか。
魔法のように、その人の良さを見つけ、引き出していく。それが何倍にも輝くように、演出していく。
キャストは、中村さんの助言を得ると、水を得た魚のように、舞台の上でみずみずしく動き回り、活き活きとした表情をしていく。見たこともない顔がどんどん表れる。
それが、心を揺さぶる。
役者指導とは、究極の「教育」のあり方なのかもしれないと、私は中村さんの稽古を見ながら、思った。

そのとき感じた震えは、今でも忘れられない。

 

そんな中村さんが、舞台を東京に移し、すべてを取り仕切っておこなう公演が、まもなく幕を開けようとしている。
題目は、演劇版『殺し屋のマーケティング』だ。
NHK大河ドラマにも出演が決まっている役者さんが出演しているくらいだという。
演技経験のない方でも、短期間でその良さを一気に引き出し、人の心を震わせるくらいの芝居まで導いてしまう中村さんだ。
これが、その道のプロの役者さんに稽古をつけたら、いったいどうなってしまうのだろうか。

聞くまでもないことだった。
きっと今回も、私はあのときの震えを感じるに違いないだろう。

それはとても、想像にたやすい。

 

 

 

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【原作】
三浦崇典・著『殺し屋のマーケティング』
※2017年11月9日、ポプラ社より発売

 

【脚本/演出】
中村雪絵

 

【CAST】
結城莉奈/林雄大/糸数恵那/中﨑正人
ナナコ/佐藤奈織美/熊本彩/岡本陽子

 

【公演日時】
2017年11月26日(日)
第Ⅰ部 14:00 開演
第Ⅱ部 18:00 開演

【チケット料金】
前売り券:S席 4,000円(前売り限定)
A席 3,000円
当日券:3,500円

【会場】
全電通労働会館・全電通ホール
住所:〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3丁目6

アクセス:
JR中央・総武線・御茶の水駅・聖橋口出口徒歩4分/東京メトロ千代田線・新御茶ノ水駅・B3出口徒歩2分/東京メトロ 丸の内線・淡路町駅・A5出口徒歩3分

 

【著書プロフィール】

三浦崇典(Takanori Miura)

1977年宮城県生まれ。小説家。株式会社東京プライズエージェンシー代表取締役。天狼院書店店主。雑誌「READING LIFE」編集長。劇団天狼院主宰。映画『世界で一番美しい死体~天狼院殺人事件~』監督。ライター・編集者。著者エージェント。2016年4月より大正大学表現学部非常勤講師。

NHK「おはよう日本」、日本テレビ「モーニングバード」、BS11「ウィークリーニュースONZE」、ラジオ文化放送「くにまるジャパン」、J-WAVE、NHKラジオ、日経新聞、日経MJ、朝日新聞、読売新聞、東京新聞、雑誌『BRUTUS』、雑誌『週刊文春』、雑誌『AERA』、雑誌『日経デザイン』、雑誌『致知』、雑誌『商業界』など掲載多数。2016年6月には雑誌『AERA』の「現代の肖像」に登場。

 

【脚本/演出家プロフィール】

中村雪絵(Yukie Nakamura)

1985年福岡生まれ。脚本家・演出家・俳優。2002年に劇団ぎゃ。を旗揚げ。2014年解散まですべての作品の脚本と演出を手がけ、2014年以降はフリーランスとなり、放送局主催イベントや文化施設主催公演の演出など幅広く活動している。
(主な脚本・演出作品)
NHK福岡放送局主催「古代エジプトファッションショー」ショー構成・演出
アクロス福岡主催「 アクロス円形工房vol.17 Le Carnaval des Animaux~動物の謝肉祭~」脚本・演出
(主な出演歴)
ギンギラ太陽’s 2011~2015年までほぼすべての作品に出演
他九州圏内の多数の劇団・プロデュース公演に出演
(受賞歴)
E-1グランプリ2006 九州決勝大会 優勝 CoRich舞台芸術アワード!2007 第9位、福岡演劇フェスティバル FFAC企画 創作コンペティション『一つの戯曲からの創作をとおして語ろう!』Vol.1 観客賞

 

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◆第Ⅰ部/A席 14:00 開演




◆第Ⅱ部/A席 18:00 開演




 

【天狼院書店とは?】

天狼院書店が提供するのは、「READING LIFE」という新しいライフスタイル。「本」だけでなく、その先にある「体験」までを提供する次世代型書店です。2013年9月26日、1号店となる天狼院書店「東京天狼院」をオープン。その後、2015年9月26日に天狼院書店「福岡天狼院」(福岡天神)、2017年1月27日に天狼院書店「京都天狼院」(京都祇園)、さらに2017年8月26日には天狼院書店「池袋駅前点」をオープンいたしました。
「天狼院のゼミ」をはじめ「部活」や「ファナティック読書会」など、様々な「体験」を提供しています。

 

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【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜選べる特別講座2講座(90分×2コマ)《11/26まで早期特典有り!》

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
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〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

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【天狼院書店へのお問い合わせ】

TEL:03-6914-3618(東京天狼院)

天狼院書店「池袋駅前店」 2017年8月26日(土)グランド・オープン
〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 2F
営業時間:11:00〜21:00
電話:03−6812−1984
*「WACCA池袋」の2Fです。WACCA池袋へのアクセス

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