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正しい仕事のサボり方


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鈴木 里枝(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
突然だけど、あなたは仕事をサボったことがあるだろうか。
仮病を使ったり、急用を作ったりして。
私はといえば、実は半年に一回くらいサボっている。
ペースとしては早いように思う。
 
仕事をサボるだなんて! そんな風に思ったあなたにこそ読んでもらいたい。
きっとあなたも私と同じ、まじめな人間だと思うから。
 
私は大学を1年半休学している。
在学中、学業とアルバイトの両立がうまくいかず持病が悪化したのだ。
忙しさだけではなく、当時付き合っていた人との関係に悩んでいたことも大きかった。
いきなり悪くなる病気というのはほとんどない。心と体は何度も危険信号を示していたはずなのに、慌ただしい毎日の中で気がつくことができなかった。若さを過信していた。
気がついた時には、ベッドから起き上がれないほどひどくなっていた。
 
だけどこの経験は、私にたくさんのことを教えてくれた。
普通の生活を送れる幸せ。健康であることの尊さ。
大切にしてくれる人たちのあたたかさ。
体、心と向き合う日々のなかで、自分の適切なペースに気がつくことができた。
 
それでも社会に出てみると、自分のペースでできることなんてほとんどないし、多少体に無理をしなくちゃいけない場面もある。人とのかかわりで心が疲れることもある。
やっかいなのは、どんなことにも100パーセントで向き合ってしまう性格なこと。力の抜き方がうまくないのだ。
相当に気をつけているはずなのに、社会人二年目くらいまでは突然の高熱で寝込むことがよくあった。
 
これでは大学時代の私と同じじゃないか。
そう思って、決めた。体と心が示す危険信号を三つ察知したら、その時持っているすべてのタスクを削除しよう。
 
一つ目の危険信号は「眠った気がしない時」。
睡眠時間は確保できているはずなのに体が重くて起き上がるのがつらく、頭痛が続く時。
 
二つ目は「家でも仕事のことを考えている時」。
自宅での何気ない瞬間、気がつくと職場での出来事を思い返している時。
 
三つ目は「甘いものが食べたくて仕方がない時」。
コンビニで無意識的にチョコレートやクッキーを手に取っている時。おなかがいっぱいなのに、デザートが食べたい時。
 
現代人にとってはわりとどれも身近な症状かもしれないけれど、私にとっては大問題だ。経験上、これが続くとまずいのだ。
 
三大症状を自覚したら、私は「仕事をサボる」という選択肢を考える。
でもこんな時はたいてい忙しくて、それに楽しかったりする。サボることに罪悪感もある。
 
そういう時は、イメージするようにしている。
私は「仕事」というゲームを夢中でプレイしている。
どんどんクリアしていって面白いところだけど、手に持っているゲーム機はだんだん熱を帯びてきている。
そろそろ休憩にしようかな。そう思っても、ON/OFFボタンがうまく反応しない。きちんと押そうともしていない。
 
そう、私にとって「仕事をサボる」ことは、ゲーム機のコンセントを抜くことに似ている。
どんなに楽しくても、熱くなるほど、休むタイミングが分からなくなるほどに頑張るのはよくない。
コンセントを抜くように一度強制的にクールダウンするのが一番だ。
 
つまり「正しく仕事をサボる」とは、「適切なタイミングでブレイクの判断ができる」ということなのだ。
周りの状況や立場を考えて無理をしすぎることなく「休みたい」と主張できることだと思うのだ。
 
貴重な時間を手に入れたら、私は自宅でおだやかに過ごす。
目の前のことに力を注ぎすぎてしまうから、タスクを作らない。時計も見すぎない。
トイレの掃除をする。
野菜を使った食事をする。湯船に浸かる。
綺麗にととのえたベッドで眠る。
 
特別なことはしていないのに、これだけでずいぶん回復してしまうのだから不思議だ。
手巻き式の時計を巻き上げるみたいに自分のペースを取り戻していく作業が、私にとっては大切なんだろう。
 
同級生よりも少し長い大学生活だったけれど、たくさんのことを教えてくれたあの時間があってよかったと思っている。
 
でも、これを読むあなたには後悔してほしくないから。
そしてこの社会の中であなたを本当に守れるのはたった一人、あなただけだから。
 
何だか最近、体の様子が違うかも。心のもやもやが長く晴れていないかも。
これからもそんな時、私は仕事をサボるだろう。
無責任だと言う人もいるだろう。
それでも私は私のために、これからも仕事をサボるだろう。
 
 
 
 
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2019-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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