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メディアグランプリ

とんでもない私の友人


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:金澤 鮎香(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
私の友人はとんでもない。
頭のねじが1本か2本飛んでいる。
そして本人にその自覚が無い。
「こいつには敵わないな」会う度に心の底から思わされる。
 
彼と知り合ったのはかれこれ7年前。大学を休学して「1年間ボランティアをしながら旅をする」というNPOのプログラムに参加したことがきっかけだった。
NPOのプログラムといえども、行く先が決められている訳ではなく、自分で参加したいボランティア、行きたい国を決める。基本自由だが、同期生がいてそれぞれゆるくネット上でつながりながら、世界中の色々な場所でボランティアをしたり旅をしたりするというもの。
 
彼は参加当時からちょっとおかしかった。
「100万一応貯めたけど、これに参加する前に遊び過ぎて残り40万しか残っちょらん」
こてこての博多弁でやる気なさそうに言っていた。
「取り合えず金無くなってから考えるわ」
心配する同期やNPO職員を余所に、さらりと出国した。
 
もちろん途中でお金が無くなった。
そんな彼の道中はすごかった。
 
タイでは屋台の残飯をもらい飢えをしのぎ、宿泊は寺か教会。
スマートフォンをスラれ、なけなしのお金をはたいて代わりのアイフォンを購入。
トルコ、イスタンブールから気球で有名なカッパドキアまでバスで約8時間の道のりをヒッチハイクで移動。
カッパドキアで野宿をしていたその晩、観光で来ていた日本人女子大生がレイプして殺されるという大事件発生。
旅の最後にフランス、パリで再びアイフォンをスラれたものの何とか帰国。
 
ほんの一例を挙げてみたが、そんなエピソードが掘れば掘るほど出てくる。
 
とにかくやることが無茶苦茶だった。「若気の至り」とまゆをひそめる人もいるかもしれない。だが彼はちょっとそういう「調子に乗って無茶をやる若造」とは違うのだ。「無茶なことやってる俺かっこいい」みたいなものが何もない。本当に素なのだ。
起こった事件も私なら「ヤバいヤバい、聞いて聞いて!」とSNSで発信しまくるに違いない。だが彼は人に聞かれるまで、自分から話す事もない。
 
「なんとなく旅をしてたらこうなっちょった」
淡々と「今日朝起きたらいい天気だったんよ」みたいなテンションで話すのだ。
やることなすこと訳が分からな過ぎて、これまで周りにこんな人間いなかったから「世の中色んな人がいるんだなァ」と月並みなことを思ったものだった。
 
旅を終えて、そんなに頻繁に会うこともなくなった彼だったが、当時のボランティア旅同期生で最近流行りのZOOM飲み会をすることになった。ZOOM飲み会とは、ZOOMというオンライン会議ツールを使ってオンライン上で飲み会をするというものだ。
 
「今、彼は何をしているんだろう」
ちょっとどきどきだった。
 
「うす」
彼が画面上に現れる。
相変わらずのローテンション。見た目上は何も変わっていなかった。
 
「最近どう?」
取り合えず聞いてみる。
 
「あー、空き巣に入られたわ」
「はァ???」
最近どう? って仕事とか近況とかそういうことを聞きたかったんだけど。まぁいいか。
 
「深夜にな、なんかごそごそ音がしてな。見たらソファーに全裸の男が横たわっちょったんよ」
「ええええええええ」
やばい、やばい怖すぎる、それはヤバい。私なら警察呼ぶわーと他の同期が騒ぐ。
 
「だからな、聞いたんよ」
「何を?」
「だから 何しちょるんですか? って聞いたんよ」
そこ??? 深夜にソファーに見知らぬ全裸の男が寝てて話しかけるか普通??
突っ込みどころが多すぎるが、ひとまず続きを聞く。
「そしたら、そいつ酔っぱらっとってな。怖いから手首つかんで、玄関まで引っ張って行ったん」
本当に怖い人は手首をつかまないと思うが……。
いやまず警察呼べよ! と同期が突っ込む。
「ほんなら、玄関の横に干しとった俺のTシャツ取って逃げてったわ」
 
「隣の犬が吠えて走って逃げた」みたいなテンションで終始話す彼。
相変わらずだった。何も変わっていなかった。
 
因みに鍵は閉めていたそうで、彼曰く「多分、鍵を持ってる前の住人が間違えて入った」いやいや何で前の住人が鍵を持ってんの!? 鍵は変えようよ大家さん! そんな突っ込みを彼にぶつけるものの「このアパートぼろいからなァ」で彼は特に問題に感じているようでもない。
本当に大丈夫なのか!? そのアパート出た方がいいよってもっと強く言ってあげるべき?
そう思った瞬間、彼がぼそりといった。
 
「多分、あいつ悪いやつじゃないんよ」
「いや、そういう問題じゃないやろ」
大丈夫か? と本気で心配になる。
 
「ちゃうんよ、数日後な、外出て家帰ったらな、取られたTシャツがきれいに畳んでソファの上に置いてあったんよ。横に財布もあったんやけど1円も盗られとらんかった」
「だから、あいつ悪いやつちゃうんよ」
 
力が抜ける。ああ、もうこいつには敵わないなぁと本当に心の底から思った。
訳が分からな過ぎて理解が出来ないけど、その理解できなさがとんでもなさが面白かった。
 
「彼でも立派に1人で生きてるんだもんな」「世の中なんでもありなんやな」
そう思えた。
 
正直彼の真似はできないし、彼の行動原理を理解できるとも思わない。でも人生で悩み事とかハプニングとか色々起きた時に「彼ならどうするかな」とちょっと妄想してみるだけで、何故かちょっと笑えてくるのだ。自分に起きたハプニングとかアクシデントはどうしても自分ごとだから、大きいものに捉えがちだ。でも彼みたいに淡々と「今日朝起きたらいい天気だった」くらいのテンションで全てのモノゴトを見れれば、ちょっとは人生楽になるのかもしれない。
 
彼は確かにとんでもない。本当にとんでもないけど、こんな風にちょっと人生に対してポジティブになれる、とんでもない友人がいてラッキーだなと思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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