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運転手でいこう


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:川村 紀子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「あなたの夢はなんですか?」
この質問がキライだった。
 
夢は何かと質問する人は、
若者が目をキラキラ輝かせながら、
あるいは、少しはにかみながら、
夢を語ることを期待して、待ってる。
 
夢を即答できる人はどれだけいるだろう?
困ってしまう人が多いんじゃないかな。
これを読んでいるあなたはどうだろう?
 
私も小さい時は、未来の自分を夢見てた。
「学校の先生になりたい!」
「結婚して一軒家に住んで子どもが二人ほしい!」
でも、いつからかわからなくなった。
 
 
やりたいなぁと思うことがぼんやりあっても、
夢、と口にする前に、心の中にうまれるいろんな声にかき消された。
「海外に行く仕事がしたいなぁ……」
と想っても、
「英語力がないと、仕事は無理でしょう」
「やっぱり無理よ。海外は危ないから。」
心の中に、夢に育ちそうな芽が出ても、
自分自身でマイナスの言葉をかけて、枯らしてしまう。
 
そもそも、その程度の想いが「夢」と呼ぶに
値するとも思えない、という気持ちもある。
 
「オリンピックに出たい!」
「宇宙飛行士になりたい!」
「難病を治すクスリを開発したい!」
 
夢、と言えるのは、
『長年の努力が必要なこと』だったり
『狭き門』だったり
『志』に近いような
情熱大陸にとりあげられるような
カッコイイこと、じゃないといけない気がしてた。
 
「そんなカッコイイ想いは……
私にはないよなぁ」
そう感じると、少し凹む。
夢を持ってない自分はダメな奴に感じる。
 
「これからも何をしたいかわからないままなのかな……」
寂しくて、夢の未来を想像しようともがいても、
未来はぼんやり薄いグレーがかって、見えてこない。
夢がなければ、何者にもなれない気がして、焦りに似た気持ちになる。
 
でも、学校があるうちは、流れにのっていればよかった。
時間割、授業、行事、宿題、試験、部活の練習、習い事、受験……
やることは次々に用意される。
大人たちに与えられた目の前のことをやっていれば先に進んだ。
一所懸命やっても、やらなくても
未来が見えなくても、何も考えなくても
電車に乗っているように私は前に進み、進級し、進学する。
 
大学受験が近づくと、その状態が苦しくなった。
わたしはまた、偏差値や世間の評判、親や先生のススメに従って、
東京駅のような駅で降り、適当な電車に乗り継ぐようにして
どこかの大学には入るのだろう。
 
なんとなくサークルに入り、バイトして、旅行して、
恋愛して、時々勉強しているうちに就職活動の時期になる。
就職するためにやるべきことをやり職場を見つけて、
働きだすのだろう。そして、その先、どうなる?
 
会社で仕事し、適齢期ごろに付き合っている人と結婚する。
やがて子どもができ、一人目か二人目の時に仕事を辞めて、
しばらくは育児に専念し、やがてパートで仕事をしはじめる。
それでその先は?
目の前のやらなければいけないことをしているうちに
淡々と年月が過ぎていくかもしれない……ぞっとした。
 
この電車から降りなければ!
このままだと、どんどん一般的な道を進んでいくだけだ。
怖い。とにかく、降りなければ!
飛び降りるようにして、大学進学に向かう電車から降りた。
 
親は激怒していた。
「茨の道だっていい、遠回りだっていい。自分で道を切り拓きたい」
手紙を書いたけど、わかってはもらえなかった。
勘当だと言われた。
 
止まったものの、自分の頭で考えたことがなかったから、
どうしたいか、とんと浮かばなかった。
 
長年習っていたピアノも親のススメで始めて、
せっかくだから続けたらと言われたから。
演劇部に入ったのも、部活に入っていない時、
親が放課後、寄り道せずに帰って来いとうるさく、
一番楽そう、という理由で入ってただけ。
自分が何が好きで、何が楽しいのかさえもわからなかった。
 
思いついたことは、100個やってみたいことを考えてみること。
銀座のITOYAに行き、
これ好き! と思った黄色い表紙の
スケッチブックのような小さなノートを買った。
心が踊るようなきれいな色のペンも数本買った。
そして、本屋で情報雑誌や旅行雑誌を数冊買い、
カフェに入り、雑誌も見ながら
やってみたいことをひねりだしていった。
 
・皇居のまわりを一周してみる
・英語で会話ができるようになる
・自然食品のお店に行ってこだわりのシリアルを買う
・ライブハウスに行く
・表参道に詳しくなる
・アメリカに住む
・ダイビングのライセンスをとる……
 
やりたいことを100個考えるのは難しかった。大変だった。
でも、やりたいことを100個書くということは
誰かに与えられた宿題ではなく、自分で決めたこと。
だから、楽しんで一所懸命がんばれた。
 
「自分と向き合って、やりたいことを自分で考え、
やると自分で決め、実際にやる」
その経験を積み重ねないと、自分で人生を歩む力はつかない。
自分で自分を作っている感覚を味わい、少し興奮状態だった。
 
次の日から100のリストにひとつずつ取り組んでいった。
やりたい、と思うこと、やったら楽しそう、と思うことをやっていくうちに
心が動くことが何かが少しずつわかってきた。
 
そして、夢ができた。
ああ、これは夢だ! そうはっきりと思える夢だった。
夢ができることは、目的地が定まるということ。
あとはそこに向かって運転していくだけ!
いつかはたどり着き、また次の目的地が見えてくる。
自分の車を手に入れ、運転手になると、進む道も停まる場所も決められる。
 
あの時、電車から降りなくても、
電車の中で考えることもできたのかもしれない。
乗継駅で吟味することもできたかもしれない。
 
でも、電車をとび降り、駅を出たからこそ
やりたい、行きたいを自由に考えられたのだと思う。
 
道を見失う時はいくらでもある。
前の見えない嵐の中にいたら、止まるしかない時もある。
進路を変えなければいけない時も、
同乗者ができ、同乗者と共に進む時もある。
 
それでも、運転手でいることは心地いい。
目的地を決め、道を決め、速度を決める。
車内のインテリアやスピーカーにこだわってもいい。
手入れをしながら、旅の過程をたっぷり楽しもう。
 
 
 
 
***

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2020-05-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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