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私の#MeToo ムーブメント


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:浅丘由美子 (ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「私、満員電車の中で、かなりの頻度で痴漢にあっていたかも。」
「へ、何それ?自慢?」
「自分が綺麗だとか、セクシーだとか言いたい訳?」
「あなたの服装が悪かったんじゃない?」
 
こんな会話が怖くて、今まで殆ど人に語った事はない。所謂、セカンドレイプ(二次被害)を避けてしまうってやつだ。
決して自慢ではないが、私は綺麗でセクシーなダイナマイトバディーの持ち主、ではない。
当たり前だが、痴漢によく遭った事も自慢ではない。服装もどちらかというと、地味だったはずだ。それに、仮にある人の服装が派手で挑発的だったとしても、それでその人の身体に合意なく触ってよいという理由には、決してならない。
私にとって満員電車は、苦痛で危険でハラワタが煮えくり返るもの以外の何ものでもなかった。
 
当時、1週間に1度は、痴漢の被害に遭っていたと思う。
今のように、女性専用車両なんてなかった30年位前の話だ。
 
かなりひどい痴漢体験の一つは、ある週末に起こった。
当時大学生で、私は東横線に一人で乗っていた。どこかに出かけた後、アルバイト先に向かっていたのだ。予定到着時刻がギリギリだったので、渋谷駅での乗り換え時間をなるべく短縮したくて、ホームの端の改札口に一番近く到着する第1車両に立っていた。同じように考える人が多いのか、週末にも関わらず車内は混雑していた。駅に止まる度に人が増え、終点の渋谷駅に近づく頃には、朝の通勤電車なみの混雑になっていた。
そして、私は、知らぬ間に痴漢に「取り囲まれて」いた。
急行で、中目黒から渋谷までの区間、右から触ってくる痴漢をよけて、左にずれようとしたら、左からも触られ、以下は省略する……。
 
当時の私は、車内で痴漢被害にあっても、声を荒げて痴漢を追い払う事も、回りに助けを求める事も出来なかった。少しでも身体を離すようにしたり、向きを変えて、近くの女性に近づいたりして、なるべく被害を最小限にする事で精一杯だった。やっと渋谷に着いた。ホッとして降りようとした時に、今まで触っていなかった人の手までが、降車のどさくさに紛れて伸びてきた時には、さすがに、迷子になった幼児のように、大声を上げて泣き出したくなった。
 
そんなある日、転機が訪れた。社会人になった私は小田急線の下北沢という駅にいた。ギュウギュウ詰めの夕方のラッシュアワーの電車で、車両を乗り換えドアの前の場所に落ち着いた。もの凄く混んでいる時には、なるべくドアの側に立つようにしていたのだ。東横線での悪夢以来、車内の奥までいけない時に、中途半端な場所で全方向を人に囲まれるという事を避けたかったためだ。ドア前に立てば、ガードすべき身体の面が1面は減らす事が出来る。
 
しかし、その日は、その作戦が裏目に出た。
ドアがほぼ閉まりきるギリギリのところで無理矢理ドアをこじ開けて入ってきた男がいたのだ。それが「プロ」の「痴漢」なのではないかと思えるような男だった。
無理矢理入ってきて、私の身体にピッタリ自分の身体を押しつけると、今までの痴漢は、「アマチュアだった」と思える程の激しさで触ってくるのである。
私は声も出せずに、拳と右腕の肘から下を使って、グイーッと相手の上半身を押しやり、必死の形相で、この男の魔の手から逃れようともがいた。
 
それでも、明らかに目つきのおかしいこの男は、周りの目も、私の抵抗も物ともせず、手をのばして人の身体を触ろうとする。この頃には、周囲の人も何かがおかしいと気づき出したようだった。私が痴漢から逃げようと火事場の馬鹿力でグイグイ反対側の人を押しても、文句も言われずに、あの大混雑の車内で、その男と私の間に20センチ程の隙間まで出来ていたほどだ。
それでも、また、手をのばそうとするので、私はとうとう、息を大きく吸って、ありったけの声を張り上げて叫んだ。
 
「もう、いい加減にして下さい!」
 
そして、自分の中の怒りを総動員した怖い顔をして、その男を、まっすぐ睨みつけた。絶対に、えん罪や、周囲に誤解が生じないように、痴漢は、コイツだ。お前だ。とわかるように。
私の声はかなり大きかったので、その痴漢だけではなく、車両全体が一瞬にしてフリーズして静まり返り、緊張感が高まったのが自分でもわかった。
恥ずかしくて、悔しくて、情けなくて、腹立たしくて、どんなに怖い顔をして、どんなに男を睨みつけてやっても、全く足りない気持ちだった。
それでも、今までだって何度となく言ってやりたかったけれど、どうしても言えなかった一言を、大声で痴漢に言い放つ事が出来て、ある種の達成感のようなものを、感じていたのも事実だった。
 
あのおぞましい痴漢のお陰で、一つだけ良い事があった。
それは、あれ以来、全く痴漢に遭わなくなった事だ。
一度たりともない。ゼロ。
 
あの成功体験? の後、これからは、少しでも痴漢にあったら、絶対に周囲にわかるように、はっきりと、キッパリと、毅然と、やめるように言ってやろうと意気込んでいた。
しかし、その意気込みが周囲に漏れているのか、まるで、私の知らないうちに、背中に「痴漢は注意! 危険人物!」というラベルでも貼られているかのように、一切、痴漢に遭わなくなったのだ。
今度あったら、交通警察に突き出してやろうとまで、鼻息荒く思っていたので、ある意味残念である。
 
今なら、よくわかる。私が何度も痴漢にあってしまった原因は、いかにも気弱そうで、絶対に糾弾されたり、警察に告発されたりしないだろうと、痴漢になめられていたからだ。
現に、私の服装も、見た目も、年齢も全く変わらなくても、あの日を境に、全く痴漢に遭わなくなった。唯一変わったのは、今後、痴漢にあってしまったら、「絶対に泣き寝入りしない!」と心に強く決めて腹を括り、毅然とした態度でいるようにした事だけである。それだけで、痴漢の方が逃げ出したのだ。
 
実は、よかった事はもう一つあった。
私が、大声を張り上げて、痴漢を睨みつけていた時、私の隣の男性が、
「僕が間に入るから、場所を変わりましょう」と言ってくれた。
御礼を言って場所を代わり緊張の糸が切れたら、涙がボロボロ出てきてしまい声を殺して泣いた。すると近くにいた女性が「大丈夫ですか?」と優しく声をかけてくれた。
 
そこで、今痴漢に遭って悩んでいる女性たちがいたら伝えたい。
 
貴女が悪いことなんて何もないし、恥ずかしがることも何も無い。
されて嫌な事を我慢する理由も一つもない。
そんな理不尽とは堂々と戦おう! 大声を上げて糾弾しよう!
それが出来なかったら、自分の心の中でだけでも強く決心しよう。
自分の背中に「痴漢は注意! 危険人物!」のラベルを貼ろう。
 
でも、自分で声を上げる事が出来たときの気持ちは、格別だよ。
声を上げると、周りも助けの手を差し伸べてくれるよ。
 
と。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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