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母から受け継いだもの


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:スエミツヒロエ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ママー、起きてよ、お願いだから」
 
高校生の娘の懇願する声で、ようやくベッドから這い出る。朝の私は完全なるゾンビ状態である。
 
毎朝、娘に持たせる、お弁当作りは、朝の苦手な私にとって、難行苦行。あと、10分で家を出ないと間に合わない。そんな厳しい時間制限がかかる中(ってか、もうちょっと早く起きれば余裕でしょ。しかし、それができないのである)、ジャッと肉を焼いて、ジュッと焼肉のタレを絡めて、ご飯の上に載せれば、焼肉弁当の出来上がり。
 
ちまちま、冷凍食品のオンパレードで、見かけが綺麗なだけのお弁当より、よっぽど美味しいじゃないか! Simple is best! 豪快に行こう! と、自信を持って、お弁当を持たせて送り出す。
 
しかし、娘が帰ってくると、ひどくおかんむりだ。
 
「ママ、今日のお弁当、あれ、なに?」「何って、焼肉弁当だけど、美味しかったでしょ?」
「恥ずかしくて食べれなかった」な、なんと! そんなばかな。自信を持って持たせたお弁当が、恥ずかしくて、食べれなかったと?
 
娘曰く、みんなのお弁当は、それはそれは、彩りもよく、美しいそうだ。
 
「他のお母さん、見習ってよ」
 
パッとお弁当の蓋を開けた瞬間、恥ずかしくて閉めた、というのだ。私はひどくショックを受けた。
 
「ママ、無理しなくていいから、明日から、全部、冷凍食品詰めて。その方がいいから」
 
私には変なこだわりがあった。朝も起きられず、ズボラなくせに、冷凍食品をチンして、お弁当に詰めるということに抵抗があったのだ。簡単でも、冷凍食品に頼らずに、お弁当作りをしたかった。
 
しかし、娘にそこまで言われ、しぶしぶスーパーに買い出しに出かけた。
 
冷凍食品コーナーには、主菜から副菜、様々な種類の商品が並んでいた。とりあえず、美味しそうに見えるものを、いくつか選んで、買って帰る。
 
翌朝は、主菜、副菜と3種類を選んで、3つのカップをチン。ご飯を詰めて、チンしたおかずを詰めて、ミニトマトで彩りすれば、たちまち綺麗なお弁当の出来上がり。
 
えらく、楽だった。10分間でも楽勝である。しかも、見た目もよろしい。
 
その日、帰ってきた娘の機嫌も、すこぶるよろしい。
 
「ママ、今日のお弁当よかったよ。あれでいいから」
 
ふーん、あれでいいのか。しかも、美味しいんだそうだ。それから1週間、冷凍食品をフル活用して、お弁当を作った。しかし、冷凍食品を買ってくるのも、一苦労である。すぐに、自分が飽きてしまい、それからは、なるべく手作りで、足りないところに、時々、冷凍食品を活用しながら、何とか、“女子高生の”お弁当作りをがんばった。
 
ちゃんと出来もしないのに、私のこだわりのもとを遡ってみると、冷凍食品を使うことへの抵抗感は、私の母から受け継いでいた。
 
私の母は、仕事で忙しいのに、食事作りは、手作りにこだわった。出来合いのおかずや冷凍食品を使うことを嫌って、簡単でも自分で作ったものを食卓に並べてくれた。
 
そして、どれもがとても美味しかった。
 
私は、給食のある高校に通っていたので、母が作ったお弁当を、毎日食べるという経験はしていないが、母の作るお弁当は、これまたとても美味しかった。行事の時、遠足の時、母のおにぎりは最高に美味しかった。おにぎりの具は、たらこと梅干し。おかずには、大抵、私の好きな手作りのミートボールを入れてくれた。
 
その頃、流行っていた、市販の○○○のミートボールやハンバーグなど、毛嫌いしているところがあって、間違っても食卓にのぼったり、お弁当に使われることはなかった。
 
そうか、気がついていなかったけれど、意外に深く、母から食へのこだわりを受け継いでいたようだ。母がしてくれたように、私も娘たちにしてあげたい、と無意識に行動している。
 
例えば、初夏の梅ジュース作り。私が大好きだったからだろう。青梅と氷砂糖を瓶に詰めて、毎年作ってくれて、なんて美味しいんだろうと思って飲んでいた。だから、その思い出で、青梅の季節になると、梅ジュースを作らなくては、と思う。
 
雛祭りのちらし寿司。どんなに忙しくても、具材を揃えて、ちらし寿司を作ってくれた。大好きだった。だから、私も必ず、どんなに時間がなくても、ちらし寿司は、張り切って作る。
 
私の母は、器用で、きちんとしていて、料理上手で、優しくて、理想の母親だ。そして、私は、自分のことをダメダメな母親だと思っている。それでも二人の娘の母になり、悪戦苦闘する中で、母から受け継いだものを娘たちに渡せているのかなと感じることがある。
 
それは、おにぎりである。
 
娘たちは、「ママのおにぎりが最高」と言ってくれるのである。いつも、「ママのおにぎりが食べたい」と言ってくれる。
 
私にとって、最高のおにぎりは、なんと言っても、母の作るおにぎりである。私の作るおにぎりなんて、母のおにぎりに比べたら、全然、美味しさが違うと思っている。
 
握り加減か、塩加減なのか。絶妙の最高のおにぎり。
 
でも娘たちにとって、最高のおにぎりは、私の作るおにぎりなんだそうだ。
 
はっとした。
 
おにぎりは、愛情なんだ。私が母から受けた愛情は、ちゃんと私を通して、娘たちに伝えることができている。愛情がつながっているんだ。
 
そう考えたら、私の子育ては、とてもうまくいっているのでは、と急に自信を取り戻してみる。一番大事なところはちゃんと伝えられている。
 
 
 
 
***

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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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