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17年間の未解決問題


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記事:米村 彩加(ライティング・ゼミ夏期集中コース)
 
 
13歳、中学生の時だった。
思春期真っ只中、大抵の人が少しくらい思い当たるふしがあるであろう、超ど級に自意識が高く、周りの目が気になるお年頃。
わたしも、もれなくそのうちの1人だった。
 
特に私はとにかく目立つことが嫌いで、まわりにどう思われているか気になってしょうがなかった。
 
そんな時に言われた言葉。
 
「米村さんってさ〜、なんか目と顔が合ってないよね」
 
この言葉を聞いた時、衝撃を受けた。
「目と顔が合っていない? 目って顔の一部じゃないの? どうなったら目と顔が合うの? 基準は?」と、頭の中は疑問だらけになった。
 
ただ、実際にはその発言の主に直接言われたわけではなく、共通の友人から聞いたよくある「~って言ってたよ!」というやつだった。
 
発言の主は、全く関わりのない、違うクラスの男の子だった。
当時、私が通っていた中学は1学年7クラスもある、地元でも有名なマンモス学校だった。違うクラスのその男の子は、見かけたことはあり、認知はかろうじてしていたが、話したこともなく、文字通り全く関わりがなかった。
だから、なんで突然そんなことを言われたのか、いや、なんで私に対してのコメントを述べたのか全くと言っていいほど心当たりはなかった。
 
気になりすぎて、その発言を伝言してくれた友人に聞いてみると、そのクラスの男子が自習時間に、1組から7組までの女子を順に評価をしていたということだった。
おとなしく自習しろ! とも思うが、思春期のその話題はまぁありがちだ。
 
そしてもれなく私のいたクラスも、その評価の餌食になったというわけだった。
1クラス大体30人程度、おおよそ半分が女子だと見積もっても15人、それを7クラス分評価してまわるなんて、本当に暇の極みである。
 
たしかに、その話題は盛り上がるだろう。実際、私だって多少友人たちと気になる男子について「あーだ、こーだ」言って盛り上がった経験もある。
だからその評価していた人達に対してどうこう言える立場ではないのはわかっている。
よくあることだ。しかし、その評価をする側に回っていた人達は、恐らくそれが本人に伝わるなんて思ってもいなかっただろう。
 
当時私は、目立ちたくはないとは言いながら、少しでも可愛く見られたいと下心を持ち、ストレートパーマをかけたり、スカートを短くしてみたり、しょうもないがいろいろと努力をしていた。コンプレックスもたくさんあったし、外見に決して自信があるわけではなかったが、まぁまぁ頑張っていると思っていた。
だから満場一致で「可愛い」という評価ではないにしても、普通かあわよくばもう少しいい方だと思っていた。
 
その結果が、「目と顔が合っていない」だったのだ。
「ブス」と言われたわけではないのだが、私の顔というものを全否定されたような、何とも言えない気持ちだった。
伝言してきた友人的にはそんなに悪い評価じゃない的な感じで、ほかのもっとポジティブな意見も教えてくれた。しかし、その発言が印象的だったから、私にも最初に伝えたのだろう。おかげで印象に残りすぎて、その他の評価が全く入ってこなかった。
 
たくさんの疑問のあと、残ったのは悲しみだけだった。
その場ではへらへらと笑うことしかできなかったが、心の中ではその瞬間から話したこともないその男の子を嫌いになった。
さらに「目と顔があっていない」そんな福笑いに対する感想のようなものが自分の顔に対する評価だと思うと、自分の顔が嫌いになった。
そして、一人になると悲しくなった。
 
それからの中学校生活は「目が正解なのか、その他の顔が正解なのか、どの状態があっているのか」問題と、増大した自信のなさ、時々悲しい気持ちというもやもやしたものを抱えて過ごした。
そんな印象的な評価をしたあの男の子とはその後も話すことも同じクラスになることもないまま卒業した。きっと私にした評価や、もしかしたら私のことさえも覚えていないかもしれない。伝達してくれた友人も、その場で一緒になって評価していた人達も誰もその言葉を覚えてはいないだろう。
 
しかしその後、高校生になり、大学生になっても私の中ではその「目が正解なのか、その他の顔が正解なのか、どの状態があっているのか」問題は解決することはなかった。
30歳になった今でも解決していない。
 
仮に「目と顔のどちらが正解か」わかったとしても、間違っているとする方の正解の形もわからなければ、合わせ方もわからない。
だから考えても無駄だということはわかっている。
わかっているが、いまだに忘れることはできないし、言葉の意味を何度も考えてしまう。
 
コロナが流行し、マスクをした目から上だけの自分を鏡で見ることも増えた今、改めて疑問に思う。どちらが正解だったのか。
きっとわたしはこの問題を一生解決することはできないだろう。
 
私の顔は「この目」で「この顔」だからこそ、「わたし」なのだから。
 
だから、決して忘れることのできない言葉とともに、「わたし」の顔と付き合って生きていきたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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