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好きな人の好きな物が気になったら


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:菊川美咲(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
この数か月の夜の過ごし方は、私はダイニングテーブルにノートパソコンを広げて原稿を書いたり、本を読んだりしている。
その目の前で、主人はリビングのソファの真ん中に座りPS4のゲームに夢中になっている。
 
子供たちは9時に寝る。
そこから自分たちが寝る12時ごろまで、約3時間の自分の時間が持てるようになった。
とっても貴重な時間。
その貴重な時間をお互いに好きなことをして過ごす。
時々、会話をする。しばらく無言でも気まずさはない。
「ちょうどいいな」と思う。
この距離感というか、関わり方というか。とにかく、ちょうどいい。
 
子供たちは、こうはいかない。
かなりグイグイくる。そして、こう言う。
 
「ねえねえお母さん、見てー!」
 
「お母さん見て攻撃」は容赦ない。
自分ができたこと、気付いたもの、なんでもアピールする。
特に、自分が好きな物を激しくプッシュしてくるのだ。
二人の息子たちの好きな物は、小さいころのトミカやプラレールに始まって、今は仮面ライダー。
ここら辺りまでは私もなんとかついていけていた。
最近はそれにうっすらウルトラマンも入ってくる。
さらにマインクラフトやアプリゲームの話も入ってきて、もう正直ついていけない。
 
トミカの頃はよかった、としみじみ思う。
始まりは、長男が2歳の誕生日に3台のトミカをプレゼントしたこと。
パトカーとダンプカーとショベルカーに、目を丸くして喜んでいた。
そこから「好きなものへの情熱の凄さ」を見せつけられる。
ショベルカーを持ちながら
「こまつゆあつしょべるぴーしーにひゃく!」
とスラスラ言っているのだ。
確かに「コマツ油圧ショベルPC200」という名前だけど、こんな難しそうな名前をスラスラ言えるなんてうちの子天才かも! なんて思っていた。完全な親バカである。
珍しい車を見るたびに喜ぶから、こちらも気になってメーカーや車種を調べたりするうちに車にハマる。
バスでも重機でもスポーツカーでも、見かけるたびに子供と一緒に名前を叫んでいた。
 
プラレールでも同様に、子供と一緒に見ているうちに、すっかり私は「ママ鉄」になっていた。
 
この、子供が好きなものに母親もハマる現象はなぜ起こるのかと思う。
やはり「お母さん、見て―!」が大きく関わっているのではないか。
彼らからの押しの強さもさることながら、「大切な我が子がこんなに喜ぶものを、もっと見せてあげたい」とか「僕が好きなものをお母さんも好きと言っている。嬉しい!」とか、お互いの想いの交流があるからだろう。
「母子間の共感力の強さ」かもしれないが、親子や家族でなくても、
 
自分が好きなものを好きだと言ってくれる人 = いい人
 
というような思考パターンが、私の中にはある。
そして、私だけではないだろうという予測も立っている。
例えば職場の同僚との雑談でも、初めて会う人と話すときでも、お互いの趣味の話から盛り上がることはよくある。
自分の話をするのが苦手でも、相手の話を聞くことはそう難しくはない。
全く自分の知らない話題でも「初めて知りました」「面白そうですね」と興味を持つことはできる。
さらに、
 
自分が大切にしているものを、同じように大切にしてくれる人 = とってもいい人
 
というパターンになることもある。
「子供が急に熱を出して……」と仕事を休んだ次の日。昨日はすみませんでした、と出勤したときに「お子さん、もう大丈夫ですか?」と声をかけてもらうことがある。
当たり前と言えば当たり前で、よくあるやり取りかもしれないが、声をかけてもらった私の心の中では
「私の大事な子供のことを、同じように心配してくれている。この人はとってもいい人」
と認定されている。
 
逆に言えば、誰かの大切なものを同じように大切にしてあげると、好意を持ってもらいやすいともいえる。
テクニックとして、使おうと思えば使える。
ただ成功するかどうかは、どれだけ本気で共感できるかにもよるかもしれないが。
 
夫婦間では子供たちほど「強くお勧め」することはないが、好きな物を一緒に楽しめたらと思って誘うこともある。
結婚する前、観劇が好きだった私から誘って、劇団☆新感線の「ゲキ×シネ」を主人と一緒に観に行ったことがある。
「ゲキ×シネ」とは、演劇(エンゲキ)を映画館(シネマ)で見られるというものだ。
面白かったと言ってくれたのが嬉しかったし、その後もいくつかの作品を一緒に観に行った。
昨年9月、劇団☆新感線の舞台が初めて福岡の博多座で上演されることになったとき、私よりも先に主人の方から「博多座であるよ。行こうか」と言ってくれた。
デートからもう何年も経つのに「いつかゲキ×シネではなくて本物の舞台が見たい」と話していたのを覚えていてくれたのだろう。嬉しかった。
 
反対に、主人が好きなラグビーを、家族みんなで体験したこともある。
ラグビーワールドカップのニュージーランド対カナダ戦を観戦した。
ゲーム自体の迫力も、会場や街の熱気も、その場で感じられて感動した。
主人も自分の得意分野で家族が楽しんでいる様子に満足そうで、それを見ていて私も嬉しくなった。
 
「馬には乗ってみよ人には添うてみよ」という言葉もある。
好きな人の好きな物が気になったら、まずは一緒にやってみるといい。
相手の好きな物に自分もハマることもあるし、そうでないこともある。
一緒に楽しめれば新しい世界が広がるし、合わなければそっと放っておく。
間違っても否定はしないこと。放っておく。
主人は「私の放っておき方が上手い」のだと思う。
だから私は「ちょうどいい」と感じている。
おかげで我が家の夫婦間ディスタンスは、今日も適正値が保たれている。
 
≪終わり≫
 
 
 
 
***
 
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2020-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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